1.アタシを忘れちゃった?
「ひさしぶり♪」
いつもの待ち合わせ場所の駅前のからくり時計の前。
そこに立っていた佐世さんは、見知らぬ女性に声を掛けられました。
「─ 何で、無反応?」
相手は、如何にもな<おねぃさん>。
残念ながら、佐世さんの知り合いではありません。
「で、あなたは亜夜ちゃん? それとも香夜ちゃん??」
<おねぃさん>が口にした名前。
それは、容姿が佐世さんにそっくりな双子の名前です。
(この人、私を あのふたりのどちらかと勘違いしてる?)
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「ぬ?」
<おねぃさん>は、両手を腰に当てました。
「何で無言?? まさか、アタシを忘れちゃったとか???」
不機嫌そうに唇を歪めます。
「そんな、事ありえないよね!?」
早く、自分が双子のどちらかではない事を説明したい佐世さん
しかし、その隙が見つかりません。
視線を上げた<おねぃさん>が、天に呟きます。
「そりゃ最近のアタシは…確かに仕事が多忙だった……」
次第に弱くなる<おねぃさん>の声。
今こそ声を発するタイミングと思い、佐世さんは口を開きかけました。
その機会は、<おねぃさん>の言葉に潰されます。
「だから双子ちゃんとのお茶会はご無沙汰かもだけど、今年の正月には、お年玉だってあげたじゃん!」
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「あ、あのぉ」
<おねぃさん>は、明らかに言い訳を待つモード。
その機会を捉えた佐世さんが、やっと第一声を発します。
「ご、ごめんなさい。私…亜夜さんでも香夜さんでもありません」
何回かパクパクと口を動かした<おねぃさん>は、右手の人差し指で自分の鼻の頭を掻きました。
「ぬ。何かアタシ── いつの間にか、双子ちゃんに他人のフリをされる程に嫌われちゃってるじゃん」




