5.…実はですねぇ
「前から気になっていたんだけどぉ」
強く何回かストローを吸っても、中身が出てこない感じの那世姉様。
もう空なのか確認するように、カップを蓋の部分を凝視します。
「何で香夜っちは…」
当然ですが、容器全体が透明でないカップをいくら睨んでも、中身は見えません。
那世姉様は、手に持っているカップを大きく数回振りました。
「─ 僕ら全員を<姉様呼び>なの?」
汰世姉様がそれに気が付き、真似しようと決意したようです。
先に飲み終え、テーブルに放置していた自分のカップに手を伸ばしました。
「うん。それはタぁも思ってた」
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「まあ、佐世っちは三つ子の長女だから姉様かもだけど」
振っても、満足する手応えがなかったらしい那世姉様。
口惜しそうに、目前からカップを降ろします。
「汰世っちは次女だから、香夜っちと同格だし」
那世姉様は最初、カップを自分の前に置こうとしました。
「僕なんか、三女の末っ子だよ?」
が、既に中身が空な事を思い出したのかテーブルの脇に追いやります。
「そもそも、誕生日的には香夜っちの方が年上だし??」
ふたりの視線を受ける、わたくし。
カップから伸びるストローから、口を離します。
「戸籍上の年齢なんか、気にしたら駄目ですよ?」
持っていたカップを、わたくしはテーブルに降ろしました。
「だってぇ…」
空いた右手の人差し指を、自分の顔に向けます。
「ほら。わたくしの精神年齢って、姉様方よりも下じゃないですか☆」」
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「そんな事、ないと思うけど」
腕を組む那世姉様。
当然の様に、汰世姉様がその真似をします。
「うん。しっかりものなカぁは、タぁたち五つ子の長女か次女だよね」
「そう言う基準なら── 汰世っちが1番年下?」
軽く、表情を歪める汰世姉様。
わたくしの「また涙目になったらどうしよう!?」の心配を裏切って、あっさりと那世姉様の言葉を肯定します。
「…かも」
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「実はですねぇ…」
目の前のテーブルに置いた、カップから伸びるストローを指で弄ぶわたくし。
頭の奥にあるものを、言語化します。
「わたくしって、亜夜姉様を亜夜姉様って呼んでますよね?」
「「うん」」
頷いたふたりに、わたくしは言葉を続けました。
「だから条件反射と言うか── 同じ顔の皆さんも、同じ様に<姉様呼び>しないと落ち着かないんです」
汰世姉様と那世姉様が声を合わせます。
「「…パブロフってるんだね」」
すかさずわたくしは、左右の手を握った形で胸の高さまで上げました。
手の甲が見える様に角度を付けて、犬の前足を真似ます。
「ワン☆」
--- End of the Episode ---




