4.酷すぎです──
「…えーとぉ」
本格的なカフェよりは学生のわたくし達の財布に若干は優しい、セルフサービスな店。
汰世姉様は、カウンター上部に掲げられたメニュー表を見上げて悩みます。
「……何にしようかなぁ」
いつものお店なので、定番のメニューが決まっているわたくしと那世姉様。
だからふたりは直ぐに注文出来るのですが、汰世姉様の選択待ちです。
「………うーん」
普段から決められない人な汰世姉様。
それが「ナぁのおごりだから、いつもは頼まないのを♪」で、更に決められない姉様に。
気のせいか、お店の方や周りの目が気になります。
那世姉様はさっきの出来事の手前、長考を注意し辛い様です。
なので、わたくしが替わって意見するしかありません。
「汰世姉様── 流石に悩み過ぎです」
----------
「…香夜っちはすごいよね」
3人の飲み物の入ったカップを載せた白いトレイ。
それを那世姉様は、いつもの席のテーブルにおろしました。
「僕たち4人の見分け、完璧でしょ?」
汰世姉様が、自分の分に腕を伸ばします。
「コツとかあるなら教えて? カぁ」
わたくしも、自分の分を手に取りました。
「できちゃうからできちゃうだけなので…コツとかはないと思います」
「「、、、」」
----------
「ほ、ほら!」
ジト目を向ける、姉様がた。
わたくしは、必死で言い訳します。
「う、うちは双子ですから。自分以外の同じ顔は、必ず亜夜姉様ですし!」
那世姉様は自分の口から、カップから伸びるストローを遠ざけました。
「でも。よその三つ子な、うちの同じ顔の見分けも付けられてるじゃん」
正面席の汰世姉様が、体を乗り出しました。
「そう! それはどうやってるの?」
順番にゆっくり、姉様がたの顔を見る時間でわたくしは考えます。
しかし、出てくる答えはやはり同じでした。
「できちゃうから── できちゃう?」
再びわたくしを、ジト目で見る姉様がた
「「…さすが、天才は違うねぇ」」
----------
─ ズズ ─
わたくしは、ふたりと目が合わない様に視線を落としました。
そのうえで、ひたすらカップから出たストローを吸います。
─ ズズズ ─
不条理が過ぎる、姉様がたの追求。
いくらなんでも、酷すぎです。
流石に、不機嫌になるわたくし。
思わず、それを態度で示してしまいます。
----------
「うん。僕達が悪かった」
呟く、那世姉様。
「ほら。汰世っちも反省してるから」
泣き出す数歩手前な声が、わたくしの耳に届きます。
「カぁ、ごめんね?」
こんなところで汰世姉様に号泣されたら大騒ぎです。
急いでわたくし、顔をあげました。
「だ、大丈夫ですから。だから汰世姉様、泣かないでくださいね?」
----------
「お詫びに…」
すっかり泣く目でなくなった汰世姉様。
自分のカップのストローをわたくしの方に向けます。
「これ、一口あげる。美味しいよ?」
汰世姉様の美味しいは、わたくしにはそうでない。
蘇る、過去の幾つかの経験。
ありがたい申し出を、わたくしは辞退しました。
「わたくし、自分の分を飲むだけで精一杯です。それは汰世姉様がお飲みください☆」




