7.同志!
「このショッピングセンターって、屋上に庭園があるんですね」
通路横の案内板の前で、香夜さんが立ち止まります。
その背後で、佐世さんが呟きます。
「そこって、ベンチとかありますかね?」
「…どうでしょう」
少し離れた場所に、しゃがみ込む那世さん。
「さすがの僕も── 少し疲れたぁ」
真似して、亜夜さんがその横にしゃがみます。
「アーさんも、それに同意」
汰世さんは、後ろから佐世さんに抱き付きました。
「…タぁも座りたい」
惨状な背後に、香夜さんが振り返ります。
「じゃあ皆さん、屋上に行きましょう」
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「三つ子さんって…」
屋上庭園のベンチ。
香夜さんの口が、隣に座る佐世さんの右耳に近づきます。
「─ 本当は目、お悪くないですよね?」
「この眼鏡の事です??」
「はい」
佐世さんは右の人差し指を、自分の眼鏡のフレームに当てました。
「それを言ったら、双子さんだって伊達眼鏡ですよね???」
少し離れた場所を見る香夜さん。
そこでは、疲れてる割には元気良く、亜夜さんが汰世さんにじゃれていました。
「弥月学院の制服は── 姉様が眼鏡を掛けると、より破壊力が高くなるんです」
佐世さんの顔が、香夜さんに近づきます。
「解ります」
「…!」
「私もそう思って、汰世さんと那世さんに眼鏡を掛けさせてますから♪」
立ち上がって向き合ったふたりは、お互いをハグしあいました。
「お会いできて嬉しいです!」
「 同志!!」
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「あのふたり…何をしてるんだか……」
那世さんが、亜夜さんをくすぐる手を止めます。
それに気が付いて、同じ方向を見る亜夜さん。
「どうも感極まって、抱き合ってる感じだけど」
「何を── 意気投合したんだろうねぇ」
自分の右頬を亜夜さんが掻きます。
「佐世ちゃん、大丈夫かなぁ。うちの香夜ちゃん、ちょっと変だから」
すかさずその真似をして、那世さんも自分の頬を掻きました。
「うちの佐世っちも、少しおかしいよ?」
「─ そうなの??」
亜夜さんと那世さんが、顔を見合わせます。
「そのふたりが意気投合って──」
「…僕、怖いんだけど」
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「ホントは僕── 目なんか悪くないんだよ?」
那世さんは、眼鏡を外して亜夜さんの前に差し出しました。
「でも佐世っちが『制服の破壊力が上がるんです!』とか言う理由で、掛けろってうるさいの」
亜夜さんも、那世さんと同じ様に眼鏡を外して見せます。
「アーさんも同じ様な事を香夜ちゃんに言われて、この伊達眼鏡を掛けてる」
すこし離れたベンチに座って、ふたりのじゃれ合いから逃げていた汰世さん。
それが終わった感じなので、自分も眼鏡を外しながら会話に加わります。
「はい! タぁも、サぁに言われたから仕方なく眼鏡を掛けてる人!!」
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「大体…」
亜夜さんは、顔を寄せる様にふたりに手招きしました。
「─ 制服の破壊力って、何?」
手招きに応じて、亜夜さんに顔を近づける那世さん。
「あのふたりにしか解らない、何か」
汰世さんも、ふたりに顔を近づけました
「タぁ、眼鏡ってあんまり好きじゃない」
「そんなの、アーさんだって。だって面倒くさいし?」
「うん。僕も、出来れば掛けたくないかも」




