5.…最後の手段
「『迷子の迷子の汰世っち ちゃん♪』は…」
ショッピングセンターの2階の通路。
三つ子の三女な那世さんが、周囲に目を配ります。
「─ 何処にいるのかな?」
隣では、三つ子の長女な佐世さんが、同じ様に周りを見回していました。
「流石に、この施設からは出てないとは思うのですが」
「まあ、バッグも佐世っちに預けたままだからね」
2つ持っているバッグの1つの表面を、佐世さんが軽く撫でます。
「家に帰るにしても他に行くにしても、交通費がないと動けませんし」
「ここ── 郊外で、結構な僻地だもんね」
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「汰世っちのスマホも、このバッグの中?」
那世さんが、2つのバッグのうちの1つを、軽く突付きます。
「はい。だから、電話でも呼び出せません」
「携帯電話を必要な時に携帯してないとは、流石 汰世っち」
「自分の姉に、そういう事を言うものではありませんよ?」
「はい、はい」
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「…今度から3人でお出かけな時には……首輪とリードでも付けましょうかね………汰世さんには」
ボソッと呟く佐世さん。
横から那世さんが、その顔を覗き込みます。
「駄目だよ? 可愛い妹をペット扱いしたら??」
「当然── 本気じゃありませんから」
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「いっそ、迷子センタで呼び出して貰う?」
立ち止まる那世さん。
少し進んだ先で、佐世さんが振り返ります。
「名前だけならともかく、苗字も呼ばれません??」
那世さんは、自分の右頬に手を当てました。
「もし知り合いとかに聞かれたら、恥ずかしいかも」
「明日、同じ高校に入学する生徒がいたら── 私達のあだ名は決定ですね」
「僕、3年間<迷子センターで呼び出された三つ子>とか呼ばれるのは嫌なんだけど?」
佐世さんが、大きく頷きます。
「…当然、私もです」
「……迷子センターは、最後の手段という事で」
「とりあえずふたりで、もう少し捜してみましょう」
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「あ!?」
ショッピングセンターの2階から3階にあがるエスカレータ。
そこから見上げた先に、那世さんが何かを見つけました。
「あれって、弥月学院の制服じゃない?」
佐世さんにも、同じ姿が目に入ります。
「ショッピングセンターで制服姿は、さすがに目立ちますね」
「ついに、発見だね!」
「─ 汰世さんに、違いありません」
「入学式前日だからって『なんか盛り上がちゃったから3人とも制服でお出かけ♪』」な汰世っちの思い付きが…こんなところで生きるとは……」




