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この世界の美しいは間違っている  作者: ゆう
第三章: 風が集う地 ―目覚めの公爵領―

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第三章 第14話 未来を築く者たち

第三章 第14話 未来を築く者たち


 公爵領に広がる朝の光は、いつもより眩しく見えた。

 レオンの“静かな宣言”から数日。

 領内には、確かに新しい空気が流れている。


 働く女性たちの足取りは軽く、

 工房からは笑い声が漏れ、

 市場はどこか誇らしげで――

 まるで世界全体が一歩前に進んだかのようだった。


(レオン様の言葉は……本当に、ここを変えてしまったんだわ)


 ミリアは胸の奥に熱いものを抱きながら、支援局へ向かった。

 今日は大切な会議の日。

 公爵領の“未来計画”が本格的に動き出す。


 扉を開くと、既にリリアナ、マリア、ソフィア、カトリーナが揃っていた。


 リリアナが整然と資料を並べ、

 マリアは計算を終えた帳簿を閉じ、

 ソフィアは巻物いっぱいの図面を抱えて座り、

 カトリーナは腕を組んで周囲の安全に目を配っている。


 四人が揃うだけで、この空間が引き締まるのをミリアは感じた。


「遅れてしまってすみません!」


「大丈夫よ、ミリア。ちょうど始めるところだったわ」

 リリアナが微笑む。


 会議の中心にはレオンが立っていた。

 その表情には迷いがない。


「皆、今日は“次の段階”の話をする。

 公爵領は、もう単なる領地ではいられない。

 人が増え、産業が増え、教育の必要性も生まれた」


 静かな言葉だが、誰も息を呑むことすら忘れた。


(ここから、本当に未来を作るんだ)


 レオンはゆっくりと指を動かし、会議卓に広げられた図面を示した。



■ 新教育施設《アルディス学舎》計画


 ソフィアが立ち上がり、胸を張る。


「まずはこれが、学舎の計画図だよ!

 読み書きと計算だけじゃなく、工房技術、農作業、医療基礎まで学べる学校!」


 彼女の目は、未来そのものだ。


「“働きたい女性”が学べる場所を作りたいの。

 知識があれば、もっと多くの人が自分の力を発揮できるはずだから」


「すばらしいわ、ソフィア」

 リリアナが目を細めた。


「教育は、未来を生む土台だからな」

 カトリーナの声にも感心が混ざる。


「予算は私が確保します。

 むしろ……こういう投資こそ価値があるわ」

 マリアが即座に補足する。


 ソフィアの構想は、確かに公爵領の中心になるだろう。



■ 新産業区画の拡張


「これは私からだ」


 リリアナが数枚の地図を広げた。


「人口増加に伴い、現在の産業区画は限界に近い。

 だから新たに“第二産業区”を設け、工房や倉庫を移転するべきよ」


「農地区画との距離も十分だな。輸送もしやすい」

 レオンが確認し、


「治安にも問題はない。私が責任を持って守る」

 カトリーナが短く答える。


(すごい……本当に、この四人が領を支えている)


 ミリアはその光景に胸を打たれた。



■ 治安・隊員育成計画


「そして次は私だ」


 カトリーナが立ち上がった。


「移住者が増える以上、治安維持は今以上に重要になる。

 そこで“女性隊員育成所”を設置したい」


「育成所……ですか?」

 ミリアが驚きの声を上げる。


「ああ。

 腕力に頼るのではなく、護身術・行動判断・集団指揮――

 女性が実践的に学べる訓練機関だ」


「素晴らしいわ。

 これまでの治安維持が“個の力”なら、今後は“組織の力”になる」

 リリアナが頷く。


「費用は高くないわ。やりましょう」

 マリアが即断した。


 カトリーナの案は、領の安全を根本から変えるものになる。



■ 財政の中期計画


「では最後に、財政面から」


 マリアは帳簿を軽く叩いた。


「結論だけ言うわ。

 ――問題ない」


 場がどよめく。


「黒字は続く。投資も可能。

 “自立した財政”として成立しているわ」


(この人……本当に、すごい)


「ただし一つだけ条件がある」

 マリアはレオンを見た。


「あなたの示した“価値観”が崩れなければ。

 人が働く理由、人がここに集まる理由――

 それが揺らげば、この均衡は崩壊する」


 レオンは静かに頷く。


「揺らがない。

 俺はもう、決めている」


 その声には迷いがなかった。

 四人の婚約者は、レオンの言葉を受けて緩やかに微笑んだ。



会議が終わる頃には、外は赤い夕陽に染まっていた。


ミリアは資料を抱えながら、そっとつぶやいた。


(この領は……本当に“国”になるかもしれない)


 教育、産業、治安、財政。

 それらが一つにまとまり、未来へ向かって動き始めている。


 レオンの宣言は――決して言葉だけではなかった。


 彼の価値観を支える制度が整い、

 それを動かす人々が集まり、

 未来を形づくる仕組みが芽生えた。


(王都はきっと、まだ気づいてない……)


 公爵領はすでに――

独自の“国家の骨格”を手に入れ始めている。


 ミリアは胸の奥で、その震えるような事実を静かに受け止めた。


(この景色の中にいられるなんて……私は幸せ者だわ)


 夕陽の光が、未来へ続く道を照らしていた。

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