表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界の美しいは間違っている  作者: ゆう
第二章 アルディス公爵領 ――真の美が集う場所へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/112

第二章 第34話 静かな宣言

第二章 第34話

静かな宣言


 夜の空気は澄みきっていた。

 公爵邸の中庭に灯る篝火の光が、静かに石畳を照らしている。


 喧騒はない。

 怒号もない。

 ただ、働き終えた女たちの足音と、遠くで響く虫の声だけが、この地の現在を物語っていた。


 ミリアはその光景を少し離れた場所から眺めていた。


 女たちは語らい、笑い、明日の仕事の話をしている。

 疲れているはずなのに、その顔に浮かぶのは不満ではなく、確かな充足だった。


(ここは……もう“仮の居場所”ではない)


(生きていく場所だ)


 そう実感できるほど、公爵領の空気は変わっていた。


 ***


 その夜、レオンはごく限られた側近と支援局の幹部だけを集め、小さな会合を開いていた。


 大げさな儀式でも、演説でもない。

 ただ、静かに言葉を交わすための場だった。


「王家からの干渉は、これからも続くだろう」


 レオンの声は低く、落ち着いている。


「だが、私は方針を変えるつもりはない」


 誰も口を挟まなかった。


 この場にいる者たちは知っている。

 この男は感情ではなく、決意で動いていることを。


「公爵領は、独自の運営を進める」


「それは……王家の承認を得ずに、ですか」


 ミリアが慎重に問う。


「承認を求めないわけではない。だが、従属も求めない」


 淡々とした言葉だったが、その意味は重い。


「ここで生まれているものは、王都の価値観では測れない。

 だからこそ、ここはここで在り続ける」


 “在り続ける”


 それは宣戦布告ではなく、存在の宣言だった。


 静かだが、確固たる意志。


 ***


「私たちは……どうすれば?」


 誰かが問う。


「これまで通りでいい」


 レオンは答える。


「働き、学び、支え合い、己の力で生きる。

 それだけで、十分だ」


 誰かに認められるためではない。

 反発のためでもない。


 ただ、自分たちの形を守るために。


「この地は“守られる檻”ではなく、“選び続ける場所”であるべきだ」


 言葉は静かだったが、そこに揺らぎはなかった。


 ミリアは胸の奥で何かが定まっていくのを感じた。


(ここで生きると決めたのは、私だ)


(だから、この場所を支える)


 そう思えた瞬間だった。


 ***


 翌朝、公爵領の至るところで小さな変化が生まれていた。


 支援局の掲示板には新たな指針が張り出される。


 誰かの顔ではなく、技能と意欲で職を選ぶこと。

 五日ごとの休養日を定めること。

 訓練と学習の場を整備すること。


 どれも急進的ではないが、確実に「生き方」を形作るものだった。


 女たちはそれを見つめながら、静かに頷いていた。


「……本当に、自分で選んでいいんだ」


「誰に決められなくても……」


 言葉は小さいが、その表情には迷いがなかった。


 ***


 その様子を、遠くから眺める者もいた。


 王都から送り込まれた視察官だ。


「……これが、公爵領……」


 彼女は息を呑んだ。


 予想していた混乱はない。

 見下していたはずの“醜女”たちが、誇りをもって働いている。


「なぜ……こんなに整っている?」


 答えなど出るはずもない。


 だが確かに理解した。


 ここは、すでに“別の国の空気”を持ち始めている。


 ***


 夕刻、ミリアはレオンのもとを訪れた。


「今日、新しい女たちが七人、登録しました」


「受け入れは?」


「問題ありません。皆、働く意思も強いです」


「そうか」


 ほんの短いやりとりだったが、そこには信頼があった。


「ミリア」


「はい」


「この地は、誰かに勝つために作ったわけではない」


 静かに続ける。


「だが“正しく在ろう”とすれば、必ず敵は生まれる」


 ミリアは小さくうなずいた。


「それでも、在り続けます」


 迷いのない声だった。


 ***


 夜、公爵領に静寂が降りる。


 だがその静けさは、諦めではない。

 確かに根を張ろうとしている“秩序”の呼吸だった。


 王家が脅威と呼ぶ理想。

 秩序を乱すと恐れる新しい価値。


 それは今、この地で静かに形となっている。


 声高な革命ではなく、

 誰かの叫びでもなく。


 ただ、生き方を選ぶという、当たり前の行為として。


 レオンは夜空を見上げ、静かに息を吐いた。


「ここは、引かない」


 それは誰に向けた言葉でもなかった。


 ただ、この地に向けた“静かな宣言”だった。

ごきげんよう。

この物語の“真なる主役”――

エリザベート・フォン・ローゼンクロイツでございますわ。


断っておきますけれど、

わたくしは“善良な主人公”などではありませんの。


誇り高き

気高き

完璧なる

悪役令嬢ですわ。


けれど不思議なことに……


皮肉 → 名言

嫌味 → 励まし

策略 → 神対応


なぜか周囲は勝手に感動し、崇め、涙し、恋をする。


――ふざけないでくださる?

これは断罪される側のムーブですのよ?


それでも、わたくしは貫きますわ。

このローゼンクロイツの名にかけて

最後まで“美しく悪役であり続ける”と誓います。


笑いたければ笑えばよろしい。

惚れたなら、それは貴方の責任ですわ。




『悪役令嬢になりたいのに、全部善行扱いされてしまうんですが!?』


痛快・暴走・カリスマ・愛されすぎ注意。

さぁ、わたくしの華麗なる悪役人生を

その目で見届けなさいませ。


ごきげんよう。

そして――覚悟なさい?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ