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この世界の美しいは間違っている  作者: ゆう
第二章 アルディス公爵領 ――真の美が集う場所へ

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第二章 第16話 王都到着――歪んだ“美”の都

王都――それは、美醜逆転社会の“中心”にして“最も歪んだ世界”。

レオンはその渦の中へ、ひとり足を踏み入れる。

第二章 第16話 王都到着――歪んだ“美”の都


 王都イーラントは、遠目からでもよくわかった。

 高い外壁は白く塗りこめられ、朝日を反射している。

 だが近づくにつれ、レオンはある違和感を強く覚え始めた。


(……やはり、歪んでいるな)


 街に入った瞬間、その“異様な価値観”が一気に押し寄せた。


 通りには数えきれないほどの人々が行き交っていたが、

 誰もが視線の方向を統一されているかのように、ある一点へ意識を向けていた。


 男へ。


 男が歩けば、周囲の女性が膝を折り、お辞儀をし、媚びるように笑う。


「まぁ、そちらの男性様……お美しい……」

「こちらを向いてくださいませ……!」

「どうか、お名前だけでも……!」


 男たちは当然のように顎を上げ、肩を張り、ゆったりと歩いている。

 その姿は王族の貴族のようであり、しかし同時に幼い子供のような無邪気な尊大さもあった。


(……この世界の“男至上主義”は、やはり異常だ)


 レオンが前世の感覚で見れば一目瞭然だった。


 街路の果物屋の前では、白い顔の娘が罵倒されていた。


「おい、その顔で商品に触るなよ!」

「汚れるだろ! 醜女は後ろに下がれって!」


 彼女は震えながら謝罪していた。


「ご、ごめんなさい……。手を洗ってきますから……」


 謝る理由がなかった。

 しかし、この街ではそれが“当然”だった。


(……胸が痛い。

 公爵領では、あの子たちが輝いていたというのに)


 馬車の中で、レオンは拳をわずかに握った。


「レオン様、こちらが王宮通りです」


 オルドが窓の外を指す。


 そこには、より歪んだ光景があった。


 美女――丸顔で脂の光沢を放つ女たちが、

 ずらりと縦に並んでいた。


 艶やかな粉を塗り、唇を濃く彩り、

 頬には宝石粉のような飾り。

 まさにこの国でいう“絶世の美女”たち。


 だがレオンの目には、過剰な加工と装飾が逆に不自然に映った。


「ようこそおいでませ、公爵様……」

「お待ちしておりましたわ……」


 通りに並ぶ“美女たち”の視線は、一斉にレオンへと向けられる。


 欲望でもなく、敬意でもない。

 “所有欲”だ。


(……気味が悪い)


 レオンはわずかに眉をひそめた。

 だが同時に、この歪んだ世界が“普通”だと思い込んでいる彼女たちを責める気にもなれなかった。


(この環境で、他の価値観を持つことの方が難しいだろう)


 馬車がゆっくりと王宮前へ進む。


 門前には、すでに兵士が列を作っていた。

 いや、正確には――兵士は全員女性だった。


 だが彼女たちは、カトリーナの部隊とは根本的に違った。


 美しさを保つため、鎧は薄い化粧で飾られ、

 剣は装飾で重く、実戦向きではない。

 威厳より、華美だけを求めた軍。


「公爵レオン・アルディス殿。

 第一王女セレスティア様より、お呼びであります」


 兵士の声は形式的だが、わずかな興味と警戒心が混じっていた。


「……わかった」


 馬車を降りた瞬間、王宮の大扉がゆっくりと開く。


 奥から現れたのは――

 濃厚な香料、艶やかな衣装、きらびやかな装飾を身にまとった女たち。


 その中心に、一人の影。


 第一王女――セレスティア。


 丸い顔に脂の光沢、濃い紅、ぶつぶつとした吹き出物。

 この世界基準では“国一番の美女”。


 だがレオンの目には、ただただ濃い化粧を塗り固めた不自然な人間にしか見えなかった。


「ようこそ、公爵レオン。

 ――わたくしの王都へ」


 セレスティアが不気味な笑みを浮かべる。


(……始まったな)


 レオンの戦いは、武力でも魔法でもない。

 “価値観の戦争”。


 美醜、性別、地位――

 この歪んだ王都の全てが、レオンひとりに牙をむく。


 だがレオンは歩みを止めなかった。


 背にあるのは、公爵領と――

 彼を待つ四人の婚約者。


「用件を聞こう、第一王女セレスティア」


 王宮の広間に、その声が静かに響いた。


第一王女セレスティアとの対面。

その場で何が語られ、どのような罠が待つのか。


次回・第17話

『第一王女セレスティア――その傲慢なる微笑』

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