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この世界の美しいは間違っている  作者: ゆう
第二章 アルディス公爵領 ――真の美が集う場所へ

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第二章 第13話 揺れる男たち――至上の存在が見た変化

この世界で男は至上の存在だった。

何もしなくても選ばれ、崇拝され、守られる側。


その特権が揺らぎ始めたとき、

男たちの胸を満たしたのは“恐怖”だった。

第二章 第13話 揺れる男たち――至上の存在が見た変化


 公爵領の大通り。

 いつもなら、男が歩けば女たちが道を明け、視線を落とし、畏れ敬うのが当たり前だった。


 だが――今日は違った。


「……なぁ、気のせいか?」

「何がだよ」

「女たちが……前より道を譲らなくなってないか?」


 男二人の会話に、近くを歩いていた別の男が鼻で笑った。


「お前の気のせいだろ。

 俺たち男は上なんだ。そんなわけあるかっての」


 しかし“気のせい”ではなかった。


 通りの端では、文官服を着た細い輪郭の“醜女”たちが、書類を抱えて堂々と歩いていた。

 白い肌は朝日に透け、顔立ちは整いすぎていて、男たちは反射的に眉をひそめた。


「……おい、なんだありゃ」

「文官の制服だぞ。なんで醜女が……?」

「気味が悪い……白い顔で書類なんて触るなっての……」


 だが彼女たちは、怯えた様子もなく、自然な足取りで庁舎へと入っていく。


 男の一人が、その姿を見て喉を鳴らした。


「なぁ……公爵様が、あいつらを雇ったって噂……本当か?」

「らしいな。“才能で選ぶ”とか言ってたとか」

「意味がわからねぇ……。顔じゃなくて、才能……?」


 男たちは互いに顔を見合わせた。

 自分たちには理解できない言葉。


(……才能ってなんだ?

 俺たちは生まれた時点で選ばれている。

 努力なんて必要ない。

 それが男ってもんだろ?)


 ずっとそう教えられてきた。


 そんなとき、工房の前を通りかかった。

 そこで信じられない光景を見る。


「はいっ! 今日も頑張りましょう!!」


 元気な声で鍛冶場を明るくしているのは――ソフィア。

 この世界で“醜女”と罵られる幼い顔立ち。

 だが、その手には魔道具の設計図があり、周囲の女たちが敬意を込めて彼女を見つめている。


「ソフィア様、昨日の灯り……人々が喜んでいました」

「う、うん! 今度はもっと明るいのを作るから!」


「……様?」

「なんで醜女が、様付けで呼ばれてる……?」


 男たちの背中を冷たい汗がつたった。


 次に、訓練場を見やると――カトリーナが剣を振り、周囲の女たちを鍛えていた。


 その姿は凛として美しく、だがこの世界の男たちには“理解できない強さ”だった。


「ちょっと待てよ……剣を握るのは、強い女だけだろ?」

「いや、あの集団……全員醜女だぞ……?」


 男たちの思考が止まった。


「なぁ。最近……」

「……ああ、わかってる」

「俺たちが……見下されてないか?」


 恐る恐る出た言葉に、誰も否定ができなかった。


 今までなら、男が視界に入れば震えて跪くのが女の義務だった。


 だが今は――

 “視線を逸らすのは、男のほう”になっている。


「公爵様のせいだ……」

「男の在り方を、あの人は壊すつもりか?」

「なんでだ……? 男が一番なのは当たり前なのに……!」


 怒りとも焦りともつかない声が上がる。


「もし、公爵様の価値観が広まったら……」

 男の一人がつぶやく。


「……俺たち、何もしなくても選ばれる“特別な存在”じゃなくなるんじゃねぇか……?」


 その言葉は、雷のように男たちの胸を撃ち抜いた。


 そして、誰も口にしない現実――


“レオンだけは、男でありながら努力できる存在”


 その異常性が、男たちにとって最大の脅威だった。


「……あの公爵、男のくせに……女みたいに働いてる……」

「頭も良くて……強くて……人を見る目もあって……」

「あんなの……男として反則だろ……!」


 至上の存在だった男たちが、初めて味わう感覚。


 それは――

 嫉妬でもなく、怒りでもなく。


喪失への恐怖。


「公爵様が、この世界を変えるなら……

 俺たちの居場所は、なくなる……?」


 その問いに、誰も答えられなかった。


 醜女は希望を見、

 美女は価値の揺らぎに怯え、

 男は“自分の特権”が崩れる未来に震え始める。


 公爵領は、ゆっくりと、しかし確実に――

 今までの常識が壊れる音に包まれていた。


醜女の希望、美女の動揺、男の恐怖。


三つの価値観が交差し、

公爵領は新しい社会へと進み始める。


次回・第14話

『レオンへの報告――王家からの召喚状』

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