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この世界の美しいは間違っている  作者: ゆう
第二章 アルディス公爵領 ――真の美が集う場所へ

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第3話 新政庁 ――能力で選ぶ領地へ

才女たちの行列を見たレオンは、

公爵領を“能力で選ぶ世界”へ変える決意を固める。


そして四人の婚約者は、

自分に与えられた役割をはじめて意識し始める。

第二章 第3話 新政庁 ――能力で選ぶ領地へ


 アルディス公爵邸の大広間には、暖かな灯りが揺れていた。

 窓の外はすでに夜の帳が下り、庭のランプが石畳に淡い光を落としている。


 今日一日で迎え入れた“醜女”と呼ばれる女性たちの数は、四百を超えた。

 それでも公爵領の空気は重くない。

 むしろ、長い抑圧から解放された人々の息遣いが、城全体に満ちていた。


 レオンは円卓の中央に立ち、ゆっくりと視線を巡らせた。

 彼の隣には、リリアナ、マリア、カトリーナ、ソフィアの四人。

 侍従や文官たちは、男であるレオンと“醜女四人”が同席していることに最初は驚いていたが、

 その表情のほとんどは、いまや尊崇の色に変わっていた。


「今日から、アルディス領の仕組みを変える」

 レオンの声は、静かだが揺るぎなかった。


「この領地では、美醜は価値にならない。

 役職も仕事も権利も、すべて“能力”で選ぶ。

 この地を、才能が生きる場所にする」


 その一言に、大広間の空気が一瞬止まったように感じた。


 最初に立ち上がったのはリリアナだった。

 細い指が震えているのが、レオンにはわかった。


「わたくしは……王城では、何ひとつ任されませんでした。

 この顔が不吉で、醜いと……それだけで、わたくしの価値は決められていました」


 彼女は胸に手を当て、小さく息を吸う。


「でも今日、道で出会った人たちは、わたくしよりずっと深い傷を抱えていました。

 ただ美しくないというだけで……家も仕事も奪われて……

 わたくしは、ここで彼女たちと共に生きたいのです」


 その声は弱々しくも、はっきりと響いた。

 レオンはそっと彼女の肩に手を置き、頷いた。


 続いてマリアが、卓上に紙束を広げた。


「行政は私が構築します」

 眼鏡の奥の瞳は揺るがない。


「まず、美醜による職務制限を廃止。

 識字、計算、法律――これらを試験として導入し、評価基準を作ります。

 王都の制度では手もつけられていない部分です。

 公爵領は、まずそこから改善できます」


 その落ち着いた声に、文官たちは思わず姿勢を正した。


 カトリーナは一歩前へ出る。

 背筋は真っすぐで、影さえ強く見える。


「……私には剣しかない。

 でも、その剣で守れるものがあるなら使いたい。

 今日来た人たちは、誰もが脅えていた。

 誰かが守らなきゃいけないんだ」


 無彩色の瞳に宿る真剣さに、女兵士たちが静かに息を呑んだ。

 美しさを誇るだけの軍ではなく、“人を守る軍”。

 その言葉の重さを、全員が理解した。


 最後にソフィアが、おそるおそる手を上げる。


「あ、あの……工房……使っていいですか……?

 魔導炉とか……灯りが良くなるやつとか……いっぱい作りたくて……

 ほかにも、湯を沸かす装置とか……」


 言葉はたどたどしいが、その瞳はきらきらと輝いていた。


「もちろんだ」

 レオンは迷いなく答えた。

「必要な素材も職人も全部揃えよう。

 ソフィアの技術は、この領地の未来になる」


「……がんばります!」

 彼女は両手で胸を押さえ、顔を真っ赤にした。


 四人が思い思いの言葉を口にしている間、

 円卓にいた侍従や文官たちは、ただ圧倒されていた。


 “醜女”と呼ばれた少女たちが、

 まるで王城の中核のように堂々と語り、

 公爵がそれを真剣に受け止めている。


 この国の常識ではありえない光景だった。


 レオンは再び四人を見渡す。

 その瞳には優しさと期待が宿っていた。


「君たちがいるなら、この領地は必ず変わる。

 今日から――本当の国づくりが始まる」


 四人は、誰からの指示もなく自然とレオンの両隣に並ぶ。

 それぞれの胸に芽生えた覚悟が、静かにひとつの灯りになっていった。


 この夜――

 アルディス公爵領に、王国のどこにも存在しなかった“新しい仕組み”が生まれた。


 顔ではなく、才能で未来を決める仕組みが。


 そしてその中心に立つのは、

 男であり、至上の存在であり、

 それでいて異常な価値観を持つ青年――レオン。


 そして、彼に選ばれた四人の少女たちだった。



この夜、アルディス公爵領には、

王国に存在しなかった“新しい仕組み”が生まれた。


美醜も出自も関係なく、才能で評価される世界。


その中心に立つのは、レオンと四人の少女たちだった。


次回:第4話

『工房の朝――動き出す技術と嫉妬』


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