表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界の美しいは間違っている  作者: ゆう
第二章 アルディス公爵領 ――真の美が集う場所へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/112

第2話才女の行列と四人の心

男が至上とされる国。

その中で最も虐げられるのは、“醜女”と呼ばれる細身で白い顔立ちの女性たちだった。


レオンは、そんな彼女たちを救う唯一の存在となり始める。


第二章 第2話才女の行列と四人の心


 丘を越えると、地平の向こうに人波が揺れていた。

 アルディス公爵領の入口――

 そこには、信じられないほどの数の女性たちが集まっていた。


 細い体。

 白い肌。

 薄い化粧。

 透きとおる瞳。


 この国では“醜女”と呼ばれる容姿。

 しかしレオンの目には、

 どの顔も美しく、希望を求める光に満ちていた。


 彼女たちは、

 王都でも村でも追い払われ、

 「美しくない」という理由だけで

 居場所を奪われてきた者たちだった。



「……あれ全部、女の人?」

 思わずソフィアがつぶやく。


「違うよ」

 カトリーナが静かに首を振った。

「“醜女”だ。

 ……わたしたちと同じ。」


 リリアナは胸の前で両手を重ね、

 震えるように視線を落とした。


「こんなにも……

 行き場を失った人が……」


 マリアは表情ひとつ変えずに見つめていたが、

 その指が僅かに震えていた。


「王都の文書では……

 “異常に細い顔立ちの者は労働不適格”とだけ書かれていました。

 こんな実態、誰も……」


 誰も、知ろうとしなかった。



 馬車を降りたレオンの姿を見つけた瞬間、

 行列の女性たちが一斉に息を呑んだ。


「お……男の方……!」

「公爵様……!」

「どうか、捨てないで……! ここにいさせてください……!」


 切羽詰まった声があちこちから飛んでくる。


 この世界では男は至上。

 女はすべての男に従い、敬い、守らねばならない存在。

 だからこそ、男から拒絶されることは

 “生きる場所そのものを失う”ことに等しい。


「公爵様、お力を……!」

「どうか……どうか働かせてください……!」


 涙を流し、地面に額をつける者までいた。


 リリアナの胸が締めつけられる。

 (わたくしも……同じだった。

  美しくないというだけで……

  存在すら許されなかった。)



 そのうちひとりが、震える手で魔導書を差し出してきた。

 焦げ跡の残る紙束。


「数字の研究を……していました。

 でも――

 “その骨みたいな顔で数字を語るな”と笑われて……

 全部、燃やされました……」


 レオンはそっと本を受け取る。


「君の研究は、ここで続ければいい」


 魔導学者の少女の目が見開かれ、

 溢れた涙が頬を伝った。



 別の少女が進み出る。

 土で汚れた手で、布袋を大事に抱えていた。


「土の研究をしていました。

 でも“白い顔の女は不吉だ”って……

 畑にも入れてもらえなくて……」


 レオンは迷わず言った。


「その知識が、この領地を救うかもしれない。

 どうか力を貸してほしい」


 少女は声を上げて泣いた。



 三人目の少女は、金属片を抱えていた。

 必死に修理した跡が痛々しい。


「新しい魔導炉を作っていました……。

 でも、“美しくない者が機械に触ると呪われる”って……

 全部、叩き壊されて……でも……直します……!」


 その言葉に、ソフィアが思わず前に出た。


「わたし、手伝える……!

 一緒に……作ろう……!」


 レオンは頷いた。


「工房を開放しよう。

 材料も、職人も、必要なだけ使っていい」


 少女は両手で顔を覆いながら泣き崩れた。



 その光景を見ながら、リリアナは小さく呟いた。


「……なんて、残酷なのでしょう……

 この人たちのどこが“醜い”というの……。」


 マリアも、眼鏡の奥の瞳を揺らしていた。

「美しくないという理由だけで、学問すら許されない……

 こんな世界……間違っています」


 カトリーナは拳を握りしめる。

「守らなきゃいけない。

 彼女たちは、誰よりも努力してきた人たちだ」


 ソフィアは唇を噛んでいた。

「こんな……ひどい……。

 こんな人たちを、どうして笑えるの……?」



 レオンは四人の婚約者に目を向ける。

 その視線は暖かく穏やかだった。


「君たちが感じたことは、全部正しい。

 アルディス領は――

 “ただ生まれた顔”で価値を決めない世界にする」


 四人は自然とレオンの隣に並び、

 静かな決意の表情を浮かべた。


「わたくし……」

「私も……」

「守る。絶対に」

「わたし、工房いっぱい作る!」


 行列に並ぶ女性たちの瞳に、

 希望の光が宿っていく。



 アルディス公爵領は、この日を境に変わった。

 醜女と呼ばれた者たちが、

 自分の名前で、自分の才能で生きる国へ。


 そして四人の少女は、

 その中心に立つ覚悟を得た。



才能と努力を踏みにじられてきた女性たちは、

いま、公爵領に集まり始めた。


次回、第3話。

公爵領の中心に“能力で選ぶ役所”が誕生する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ