第25話 揺れる王都
掟を守りながら、掟を越える選択。
彼は王家の思惑を打ち砕き、
一人の女を――心で選んだ。
第一章 学院にて ――歪んだ楽園の門出
第25話 揺れる王都
王都アルセリア。
その朝、白亜の王城に報せが走った。
「アルディス公爵、婚約者を指名――!」
玉座の間に響くその声に、
王と王女たちは一瞬、言葉を失った。
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「……誰を、だ?」
国王の低い声が静寂を裂いた。
宰相が震える手で報告書を開く。
「第三王女、リリアナ・セレスティア殿下――とのことにございます。」
「――なに?」
第一王女セレスティアが立ち上がった。
「“骸骨王女”を? あの……化粧もできぬ冴えない娘を?」
「間違いございません。本人の署名もあります。」
空気が凍りつく。
王妃は目を見開き、王は深く息を吐いた。
「あの男……本気か?」
セレスティアが声を荒げる。
「父上、これは侮辱です!
王家に泥を塗る行為ですわ!」
王は静かに首を振った。
「いや、掟に背いてはいない。
男が女を選ぶ――その原則を、最も正しく行使したのだ。」
「ですが!」
「問題は、彼が“何を見て選んだか”だ。」
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一方そのころ、学院。
昼下がりの講堂に、人々の視線が集まっていた。
レオン・アルディス公爵が壇上に立ち、
王家への正式な回答を読み上げようとしていた。
「アルディス公爵、婚約者の指名について――」
司会役の教師が震える声で告げる。
レオンは書状を掲げ、ゆっくりと口を開いた。
「……この国の掟に従い、私は“心で選ぶ”。」
その声は澄んで、どこまでも届く。
「私が選んだのは――
第三王女、リリアナ・セレスティア殿下だ。」
ざわめき。
悲鳴にも似た声が走る。
「まさか……」「なぜ……?」
貴族の少女たちが顔を見合わせる。
「男が女を選ぶ」掟は誰もが知っている。
だが“なぜ彼女を選ぶのか”が、誰にも理解できなかった。
レオンは一歩、壇上の前へ進む。
「理由はひとつだ。
彼女の中には――誰よりも清らかな誇りがある。」
その言葉が響いた瞬間、
リリアナは席で静かに息を呑んだ。
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リリアナの隣で、マリアがそっと囁く。
「……本気なのね。」
カトリーナは拳を握る。
「誰もが笑う“骸骨王女”を、堂々と選ぶなんて……」
ソフィアが涙ぐむ。
「レオン様らしい……。見た目じゃなく、心を見てる。」
リリアナは震える指先を唇にあてた。
視線が自然と壇上の彼に向かう。
彼の瞳はまっすぐだった。
迷いも驕りもない。
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「リリアナ殿下は、誰をも見下さず、誰の陰口も言わない。
この国が忘れた“誇り”を、その身に宿している。
私はそれを、美しいと思う。」
会場が静まる。
息をする音すら聞こえない。
レオンは最後に一礼し、言葉を締めた。
「――以上が、私の選択だ。
掟に従い、心の美をもって選んだことをここに宣言する。」
拍手は起きなかった。
だが、その沈黙こそが、この瞬間の重さを物語っていた。
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その夜、王都は揺れた。
「公爵が第三王女を選んだ」――その噂が貴族街を駆け抜け、
王家の威信が崩れ始める。
“骸骨王女”の名が、初めて真剣に語られた夜。
それは、誰も想像しなかった革命の始まりだった。
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それは恋ではなく、信念の証。
けれど、この選択が“恋”を呼び起こす。
次回 第26話『王女の涙』
――嘲笑と羨望の中で、リリアナの心が初めて揺らぐ。
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