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③ 我慢の限界

 

「……っ!? な、何を言って……リリアが魔物? そんな訳あるわけないだろう!? そうだろう、リリア?」

「勿論ですわ! エリーゼ様が言っていることは全部でたらめです! 信じてはいけません!」

「僕はリリアを信じるし、彼女を愛しているよ!」 

「私もケイン様を愛しておりますわ」

 王子は私の言葉に反発すると、腕の中の人物と仲睦まじそうに見つめ合う。酷い三文芝居だ。これでは埒が明かない。


「これを見てもその愛を囁けますか?」


 私は指を鳴らした。淡い金色の魔法陣が二人の足元を照らす。すると彼女の体は数倍に膨れ上がり、黒い巨大な蛇が姿を現した。聖女の力を展開し、魔物が掛けている魔法を解いたことにより周囲からは悲鳴が上がる。


「おのれぇ! 聖女が、あともう少しだったというのに!」

「それは残念でしたね。貴方達は国境付近で騒ぎを起こし、私が居ない隙にこの国を奪い。聖女である私を『悪役令嬢』に仕立て上げ、帰還した私を断罪し排除しようとした。人間相手ならば、私が抵抗出来ないと考えたからでしょうか?」


 先程までの可憐な姿から一変し、牙を剝き出す大蛇。化けの皮が剝がれるとは正にこの事だろう。そんなことを考えながら、私を睨む蛇へ答え合わせをする。


 魔物にとって聖女は天敵であり驚異だ。何としても排除しておきたい障害である。しかし聖女に正面から勝負を挑んだ所で勝てる確率は低い。だから魔物達は自身で私を討つのではなく、人間たちに私を排除させる為に『悪役令嬢』計画されたのだ。


「……っ!? な、なんだ!? 魔物っ!? エ、エリーゼ! さっさとこの化け物を倒せ!!」


 王子は魔物の姿を目にすると、転げるように私の後ろへと駆け寄り命令を口にした。大切に育てられた温室育ちの彼は、スライム以外の魔物を見たことがない。それ故に大蛇を前に狼狽するのは仕方がないのかもしれないが、保身に走る姿は惨めで哀れである。


「だから貴方は駄目なのですよ。学園への特別編入学など過去に例がありません。そして一年間で数多の人間から、好かれ貢がれる存在など異常ですわ。その判断も出来ないように、その魔物に魅了されるなど王太子としての自覚が足りないのでは?」


 先程、言われた言葉を返すように彼へ冷ややかな目線を送る。


 私は国境への派遣に対して散々反対をしていたのだ。聖女が王都を離れれば、魔物が王都を乗っ取る可能性があると訴えた。しかし、私が命惜しさに行くのを渋っていると判断をされた。その結果、樽に詰められ国境付近に放置されたのだ。隣国の騎士団に助けられなければ、今こうして此処には居ない。


「いいから早くしろ!! あの化け物をさっさと倒せ! お前はその為の聖女だろう!?」


 自分勝手な王子と貴族たち。


「ははは!! 我の魔法が解けてもこんな扱いか!!」


 私を馬鹿にする魔物。


「全く……うざいですわね」


 私は全てを終わらされる為に、右手に拳を作った。


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