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② 私の正体は……。

 

「ち、茶番だと!?」

「エリーゼ様……」


 軽蔑するような視線が向けられるが、今の私には気にする気も起きない。


「私の役目をお忘れですか?」

「……は? 役目?」


 質問に対して質問で答えるなと言いたいが、心底不思議な顔をする王太子に呆れる。あちら側が用意周到なのか、こちら側が無防備過ぎたのか分からない。


「全く……そんなこともお忘れですか……。まあ、都合が悪いからその事実を消し去ったのでしょうね」

「何を言っている!? お前は『悪役令嬢』だろう!!」


 私の独り言に苛立ちを隠さずに王子が声を荒げた。彼の言葉に賛同するように、周囲も騒ぎ立てる。このまま何も告げずに立ち去ることも出来るが、腹立たしいのも事実である。


「いいえ、私は聖女です。この一年間、国境付近に発生した異常事態を収拾するべく王都を離れておりました」

「は……? 聖女?」


 真実を告げれば、その場が水を打ったかのように静まり返る。聖女の存在も分からないとは、事態は深刻な状態なのだろう。


 私には前世の記憶を持つ、異世界転生者である。この世界には孤児院で記憶を取り戻し、聖女としての力を認められ公爵に引き取られた。

 この国では前回の聖女が浪費家で贅沢三昧を繰り返し、国を傾けかけた過去がある。その前例の所為で聖女としての扱いは厳しく、魔物から国を守る為の生贄である。

 そんな生活を続けていると丁度、一年前に発生した魔物の大量発生を討伐する為に派遣されたのだ。隣国からは多くの騎士と魔導師が集っていたが、この国からは私一人だけの参加であった。


「ですから、リリア・ロイツ男爵令嬢に対して何かすることは出来ません」

「だ、だが! 学園に居ただろう!?」


 命をかけて戦う最前線に居るというのに、平和な王都の学園で子どもじみた行為に勤しむ時間はなかったのだ。


「あれは魔法で作り出した、ただの幻ですわ。私の姿がないと、油断をしてくれないでしょうから」

「だれが……」


 初めてまともな王子の指摘に、私は視線を彼の腕の中に居る人物へと向ける。


「リリア・ロイツ男爵令嬢……いえ、魔物さん?」


 彼女の正体を口にした。


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