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プロローグ<nursery-tale>

お初にお目にかかりまして駄文失礼いたします。

 昔々あるところに遠い遠い異世界から転生してきた人がたくさんいました。その転生者たちの何人かはいつしか人類の裏切り者として、残りの転生者たちは裏切り者を討った英雄として語り継がれていきました。


 これはそんな転生者たちのどこにでもあるが故にどこにもないありふれた昔話。


「ごめんね」


 そう言って彼女は子供の前から離れていき社の中へと入っていった。彼女の後ろには二人の女性がいる。彼女たちは皆、悲しげな表情で子供の方を見ながら佇んでいる。年齢は大体十歳ぐらいだろうか。その三人の前には村長が立っていて彼の後ろには四人の男がいる。現在の時間は地球で言うところの丑三つ時。つまり午前二時である。ここは村の外れにある森。その森の奥深くには大きな洞窟があり『チスイさま』という古くから村人たちの間で語り継がれている守護神がいるとされている。また洞窟の前には大きな社がありそこには村で唯一の祈祷師が住んでいて、いつ『チスイさま』からお告げが来てもいいように四六時中待機している。その社の前に彼女たちは立っていた。祈祷師によって『チスイさま』へ捧げる生贄と宣告され、今まさに捧げられようとしているところなのである。村長と彼女たちがなにか喋っているがどうもうまく聞き取ることができない。ただ、子供のことに関してなにか話しているのだとわかった。

だから彼女たちへ手を伸ばし


「待って!」


と、声を枯らし叫ぶ。彼女は困った顔をして村長に一言二言頼み事をしたのだろう。村長の後ろについていた男のうちの一人が子供を取り押さえようとこちらへ走ってくる。子供は近くに落ちていた木の枝を拾い、男に向かって槍の如く勢いよく突き出した。男はその稚拙な攻撃を苦もなく躱し、逆に男の脇を通り過ぎていったやせ細った小さい腕を捕まえた。そして、そのまま地面へと倒し背中に膝を乗せ動けないように抑えつける。しかし子供は、拘束から逃れ出ようと手足を激しく動かす。もちろん男は更に力を強め動けないように全身を使って抑えつけてくる。それでもと彼女たちを行かせるまいと尚も暴れ続ける。男はその様に耐えかねたのか子供を抑えつけるのに仲間の男を呼び協力させた。男たちは二人がかりで子供を力づくで抑えつけてくる。時間が刻一刻と経つにつれ子供はついに力が尽きてしまったのであろう。段々と動きが静かになっていく。だが、動きが収まるにつれ子供から放たれる眼光は強さを増し村長とその奥にある洞窟を睨めつける。男たちは


「諦めろ」

「これは村の掟なのだ」


と言う。その後も抵抗は続けたがついには気を失い、死んでしまったかのように目を閉じ、動きを止める。それを見て彼女は心配そうに子供のことを見るが、村長に急かされて洞窟の中へ消えていった。村長はそれを見て安心したかのように一息ついて、子供を彼の家に連れていき寝かせるように男に指示した。




それから数時間経ち子供は目を覚ました。子供は起きてすぐ周囲に視線を巡らせ生贄として連れて行かれた彼女たちを探し始めた。当たり前だが捧げられたものがいるわけがない。だが子供は村中を駆け回りそして村の外へと走り出していった。そして、そのまま彼もまた帰ってくることがなかった。彼の姿を最後に見たものは祈祷師であった。祈祷師は彼について次のような話を聞いたという。故に彼のことを止めなかった。否、止めることができなかった。

『あれは悪の子。数多の悪を従え、数多の善に反逆するもの。彼は龍と闇とともに有りてそれ故に神は彼を見放した』と。

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