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ガイア冒険記  作者: 自由人
6/22

出会い

「ふう、今日の修行のノルマは終了だな」


 俺は5歳になっていた。エルドさんに指導してもらえるようになってからは、ひたすら槍の修行と体力強化に日々を費やしていた。エルドさん曰く、やはりというべきか俺には戦士としての才能はなかったらしい。だが数年間をほとんど修行に費やせば、それなりに様になるものでこの頃にはエルドさんに作ってもらった子供用の槍をそれなりに思い通りに扱えるようになっていた。


「さて、今日のノルマは終わったし久しぶりにあそこに行くか」


 俺には最近お気に入りの場所があった。


 家がある村の外れをさらに外側に行くと魔物の侵入を防ぐための防御柵に行き当たる。そこには大きな木が生えており、その木の上から見る景色が俺は好きだった。


 村の景色と周囲に広がる森や山々が一望出来るその場所は他には誰も知らない俺だけの場所・・・のはずだった。


「誰だ・・・お前?」


 そこには先客がいた。年頃は俺と同じくらいだろうか。金の髪と涼し気なライトグリーンの瞳をしたソイツは、将来は確実に絶世の美男子に成長するだろうと確信出来るほどの美少年だった。


「う・・・」


 ただそれ以上にソイツには人を圧倒するようなオーラがあった。


 子供でありながら一目見ただけで人として叶わないと思わせられるような、生まれながらの強者。こんな感覚を覚えたのは前世を含めても初めてだった。この村にこんな奴がいたのか・・・。


「質問に答えろよ」

「・・・エルドさんのところで働いているトールの息子でカイルという」

「ああ、そんな奴もいたか」

「君は誰なんだ。俺は君を今まで見たことがない」

「俺はこの村の村長ゲイルの息子レオンだ。ここら辺はエルドが管理していて、俺は普段来ねえからお前が知らねえのも無理はねえ」


 村長の息子か・・・俺は村長と直接話したこともないし、見たことも数回程度だ。村長宅は村の西側にあり、村の東側であるこちら側には確かにあまり来ない。


 ただこの村を開拓した立役者であり、この村最強の男だということは聞いている。そんな男の息子であれば、これだけ風格があるのも納得できなくはない。


 これはある意味でチャンスかもしれない。村長の息子と顔見知りになっておけば、今後この村では何かと役に立つ可能性があるだろう。


「なぜ村長の息子である君がこんな場所にいるんだ?」

「お前には関係ねえだろ」

「まあそう言われればそうだけど、俺はそこから見る景色が好きでさ。考え事があるときはここに来て景色を眺めるんだ。もしかしたら君もそうなんじゃないかと思って」


その言葉にレオンは少し驚いたような顔をして、俺のほうを見た。


「・・・お前5歳くらいだろ。やけに大人びてやがんな」

「それはこっちのセリフだよ」

「ハッ・・・おもしれえ。俺の周りのガキは幼稚すぎて話が合わなかったが、やっと同年代でまともに話が出来るやつを見つけたぜ」


幼稚すぎてって・・・実際俺たちの年齢なんてまだ幼児だからしょうがないだろ。


「俺がここにいる理由だったな。俺はこの村を出たい思ってる。だから村の外を一番遠くまで見渡せるこの場所で、村の外に想いを馳せてるってわけだ」

「なんで村を出たいんだ?」

「この世界は広いんだ。この村なんて世界のほんの一部分にすぎねえ。俺はもっと広い世界を見てみてえんだ。」

「広い世界を見てみたい・・・か。それは同感だな」


俺もまた、この世界に転生してから5年経つがこの村のことしか知らない。この世界がどうなっているのか見て回りたい思いは強い。


「ハハハ! まさか同年代で俺と同じこと考えてるやつがいるとはな。お前とは気が合いそうだ!」

「そうだね。なあ俺も木に上ってもいいか?もっと色々なことを話してみたい」

「ああ、来いよ」


 それから俺とレオンは色々な話をした。この村についてどう思うか、この村の外の世界はどういう世界なのか想像を語り合った。


 それだけでなく自分の家族、知人についても話した。レオンにも俺とリサのような関係の幼馴染がいるらしい。レオンはどこにでもついてくるステラという幼馴染の少女のことを煙たがっていたが、そういう存在は得難いものだ。それは大人になってから分かることだが。


 話していて考え方が似ていて驚いたが、彼は俺と同じ転生者ではないだろう。何故ならこの村以外の知識にはとことん無知だったからだ。転生者であり前世の記憶があるのならそれはあり得ない。


 しかしそうであれば、彼は5歳児でありながら、これだけ思慮深さを持っていることになる。まぎれもない天才という他なかった。


 俺がすでにエルドに狩人見習いとして修業をつけてもらっていることを話すとレオンは感心していた。そして俺も親父に修業をつけてもらうといって帰っていった。「またここでな」という言葉を残して。


読んでいただきありがとうございます。

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