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ガイア冒険記  作者: 自由人
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初めての外出

こうして母さんと姉さんに連れられて初めて外に出たわけだが、まず目に入ってきたの中世ヨーロッパの田舎を連想させるような村の外観だった。なんとなく予想していた通りで、あまり文明のレベルは高くなさそうだ。


「行くよ! カイル!」

「うん!」


 母さんと姉さんに連れられて歩いていく。母さんの話だと井戸は村の中心部にあり、村の外れにある我が家からは俺の足に合わせると15分ほどかかるそうだ。


 ちなみに家族の会話を聞く限りでは、言葉は異なっているものの、時間などの単位についてはほとんど前世と変わらないようだ。考えてみればおかしな話だが、前世と同じ女神が管理する世界だからかもしれない。まあ俺にとっては分かりやすくていい。


 そうして歩いていると、色んな光景が目に入ってくる。まず見えたのは畑とその畑で農作業をする男たちの姿であった。


「あ、お父さん!」


姉さんが、働く父さんを発見したようだ。


「おお! ってカイルを連れ出しているのか? まだ早いんじゃないか?」

「この子がどうしても外に出たいって言うもんだから」


 そうして母さんと話している父さんを観察していると、


「お父さんはね、エルドさんの畑で働いてるのよ」


 と姉さんが教えてくれた。


 なるほど、つまりそのエルドさんという人がこの畑を所有する地主であり、父さんは小作農といったところなのだろう。


「お、トールのところの坊主か、でかくなったなあ、もう歩けるようになったのか」

「あら、エルドさんこんにちは。この子は成長が早くてねえ」


ちょうどそのエルドさんが近寄ってきて母さんと挨拶を交わす。


「エルドさんは今日は狩猟にはいかないんですか?」

「ああ、今日は休養日だ」


 狩猟? 言葉通りの意味ならこのエルドさんは狩人ってとこか?


 確かにエルドさんは禿頭にいかつい顔、そして筋骨隆々な体をしておりイメージ的にはぴったりだが。


「しゅりょうってなあに?」

「おう坊主、狩猟ってのはな、村の屈強な男たちが集団で村の外に獣を狩りにいくことよ! お前らが猪や鹿の肉を食えんのも俺たち狩人のおかげなんだぜ!」

「そうなんだ」


 やはり言葉通りの意味らしい。そして父さんは横でちょっと情けなさそうな顔をしている。初めて狩猟のことを聞いたし、エルドさんは狩猟に行くのは屈強な男たちと言った。つまり父さんはそこには含まれていないのだろう。


 地主と小作農という2人の関係や身なりの違いからしても、狩人はその他の男たちよりも立場が上ということだろうか。


 エルドさんと父さんと別れた後、母さんに確認してみる。母さんいわく、地主は土地を所有し耕夫(小作農をこの世界ではそう呼ぶらしい)を使役する代わりに、狩人として狩猟に行くことが義務付けられているそうだ。そうして続く母さんの話には聞き逃せない内容が含まれていた。


「狩人の方たちは立派よ。村の外には魔物も出るからね。魔物と戦う危険を冒して村のために肉や薬草を取ってきてくださるのよ。それに村に魔物が入ってこないように警備も交代でしてくださっているの」

「まもの!?」

「ええ。獣とは違い人間を敵視し見境なく襲ってくるから魔物はとても危険なの。だから狩人の方たちの多くは魔物と戦うために、日々身体を鍛えているし、中には魔法を使える方もいるわ。まあ魔法を使えるのは村長や他数人と聞くけれど。ってこういう話はカイルにはまだ難しいわね」


 母さんの話を整理するとこの世界は魔物がいて魔法が存在する世界ってことだ


 そうして話しているうちに井戸に着いた。母さんが持っていたバケツに井戸から目いっぱい水を汲む。ちなみに母さんを手伝って水の入ったバケツを持ってみようとしたけど今の俺の力ではびくともしなかった。


 水が10リットルは入ってる金属製のバケツを軽々持って歩く母さんはその体系に見合った力持ちだ。やはり魔物が存在するような世界ではそれだけ女性でもたくましくなるんだろうな・・・


 さて、家に帰り着いた。初めて外に出て得た情報は予想以上に多かった。特に衝撃だったのはやはり魔法の存在だ。


「魔法か・・・」


 そういえば俺は前世の子供の頃はファンタジー小説や漫画が大好きで、魔法を使って強大な存在を打ち倒す物語の中の英雄に憧れていたんだっけ。


 そう考えると俺の胸の内には何とも言えない高揚感が渦巻く。未知の世界でこれから生きていくことに対しての不安は当然ある。だがそれ以上にこれからの人生に対する期待が否応にも高まっていた。こんな気分になるのは何年ぶりだろう。2度目の人生を与えてくれた女神様には本当に感謝しなければならないな。


「決めた」


 俺はもともとこの2度目の人生こそは全力で生きようと決めていたが、今までこの世界がどういう世界なのかを知らず、明確な目標というものを定めることは出来ていなかった。


 だが、今決めた。せっかくもらった2度目の人生。転生しても貧乏なのは相変らずだし、そんな俺にとっては途方もない目標かもしれない。それでも・・・


「この世界で魔法使いを目指そう!」


読んでいただきありがとうございます。

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