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6 発見、最愛なる妹



 明後日からアカデミーでの授業が開始となる。

 それに伴い、無名は通学の準備をはじめた。学校の近くの宿屋で部屋をとり、授業で必要になるであろういくつかのアイテムも買え揃えた。


 そして――

 いよいよ本題。


マリナ()を探さないとな」


 ここにはその為に来た。彼女にいつ危険が降りかかっても良いように、一刻も早く探し出す必要がある。

 手がかりは当時五歳の彼女の記憶。


 アカデミーの見学も兼ねつつ、キャンパス内を練り歩く。

 ――と、”模擬戦館(デモホール)”という巨大な建物を発見した。


(デモホール……ってたしか)


 中に入ると、広大な立方体の部屋がいくつも並んでおり、併せてその中を観覧できる魔法モニターが複数並んでいる。

 部屋は全て白い結界のようなものに覆われていた。


(やっぱりそうだ。ここがマスターが昔言っていた、超革新的設備ってやつか)


 其の昔、レギンレイブから聞いたことがある。

 偉大なる彼女は多くの偉業を残してきた。その偉業の中に”革新的アイテムの発明”というものがあり、この施設――”デモホール”はその代表作といえる。

 この部屋の中で戦う者は、絶対に死なない。戦闘が終われば傷は癒え、壊れた物は元通りに再生する。

 より実践的な戦闘訓練を可能にした世紀の大発明だ。


(なるほどね)


 絶対に死なないと聞いていたからどんな仕掛けがしてあるのかと思えば……。


(なんてことはない、ただの【旧約魔法】の重ね掛けだ)


 魔法はその効果ごとに、主に攻撃ならば【黒魔法】、回復ならば【白魔法】、バフならば【星魔法】、デバフならば【呪魔法】という風な分類がなされている。


 しかし実はそれ以外に、【旧約魔法】と呼ばれるものも存在する。

 旧約は前述の一般魔法を遙かにしのぐ魔法であり、使い手はこの世でレギンレイブただ一人(、、、、)とされている。


 ちなみに実は今では、もう一人(、、、、)使い手が存在している。

 無名である。

 師であるレギンレイブほどではないが、彼女のもとで修行した結果、ある程度の【旧約】を彼は魔法錬成によって合成することが可能になっていた。




 ”デモホール”には主に五つの【旧約魔法】が仕込まれている。それぞれの詳細と効果は以下の通りだ。


①【物理効果滅却(パワーヴァニッシュ)

  ……空間内に発生する物理ダメージを任意のタイミングで完全消却する。


②【魔法効果滅却(マジックヴァニッシュ)

  …… 〃 魔法ダメージを 〃


③【完全演算解析(ラプラスズデーモン)

  …… 〃 全現象を瞬時に完全解析し、それに伴う近未来を確定予知する。


④【精神肉体干渉(メタモルディープ)

  ……生命の精神に干渉し、肉体を支配する。


⑤【物質存在干渉(マテリアルディープ)

  ……物質の存在理由に干渉し、破壊と再生を強制する。




 要約すると、この部屋では、①②で全ての攻撃を被弾の寸前に無効化し、③で無効化しなかった未来を予測、その未来を④⑤で精神(、、)と物質にフィードバックして再現している。




(つまり③から④⑤への連絡を遮断すれば、発生ダメージをゼロに――なんていうこと(ズル)も出来そうだ)


 システムを理解すれば、抜け道なんてものはすぐに見つかる。


「あらキミ、どうしたの? もしかして新入生?」


 ぼんやり入り口のところで立っていた為、受付のお姉さんに話しかけられた。


「……はい、編入試験を通って、明日からこの学校に通います」

「明日から? ……あー……、そうなのね、ふうん」


 何かを思い出したように意味深な間を作る彼女。

 しかしすぐに笑みを作る。


「あらそう、それで見学をしていたってわけネっ。スゴい設備がいっぱいあってビックリしたでしょう? この学校には世界中の最新技術の粋が集められているから。この”デモルーム”も史上最強といわれるスゴい魔法士が設計したものでね、使用されている魔法もレベルが高すぎて、未だに他の誰にも仕組みが理解できてないんですってよ」


 熱弁をふるう受付嬢。

 ていうか誰も仕組みを理解できていないってマジかよ。いいのかそんなんで。


「せっかくだし、試しに一戦やってく? あーでも誰かいるかなあ? この時間、利用者が少ないの」


 どうやら無名はその受付嬢に気に入られてしまったようだ。

 彼女はすすんで世話をやき、代わりに対戦者を探し始めてくれる。


 館内は彼女の言う通り、まるで人気が無かった。

 でも――

 一人、

 スラリとした長い黒髪の美しい少女がいる。彼女はこちらに気づき、笑顔を向けた。


「あ――!」


 無名は言葉を失う。

 少女は笑顔のまま、こちらに近づき、もう一度あらためて笑いかけた。

 澄み切った水面の上に咲く睡蓮のような、凜々しさとはかなさと麗しさを兼ね揃えている、正真正銘の美少女だった。


「どうしました? 対戦相手を探しているのでしょうか? いいですよ、私、やりますよ」


 快諾する少女に、受付嬢はどこか心苦しそうに忠告する。


「あ、いや、でも……その子は……あの、あなたには……」

「大丈夫です。さあ、やりましょう」


 しかし黒髪の少女は無名の手を引いて対戦ルームの方に連れていく。


 無名はその後ろ姿に問いかけた。


「きみ、名前は……?」

「マリナ――と、いいます」


 間違いなかった。

 その少女は、無名の探していた妹その人である。

次回『兄、妹が好きすぎる』

今晩は筆がのったので3話ほど更新しようと思います

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