家に帰ったら姉が俺のタンスをあさってた(シリアス√)
今日は午前授業の上部活が無いと来た。これは早く家に帰るに限る。
折角だし、高校卒業してからフリーターと言い張っている引きこもりの姉を驚かすために、静かに帰るか。
さて、第一関門。
玄関まで続く砂利。
こういうのって雨の日とかだと良いんだけど、ここ連続猛暑日だからな。
音がでかくなりやすい。
まぁ、慎重に一歩に30秒程度かける程の抜き足差し足忍び足で突破。
通行人がいたら間違いなく通報されていたであろう。
次に第二関門。
レールタイプの引き戸。
これがまたうるさい。最近油引いて無いから「ガラガラガラガラ」ってすげぇうるせぇ。
一センチ動かすにも車輪が「ガリィ!」って鳴らすし、一気にやろうものなら「ガガガガガガ!!」って鳴るし。
どうしたもんかこれは。
唾液使って5分くらい掛けて車輪の滑りをよくさせながら開けた。
これを先生に見られたならば「その熱意を勉強に活かせ」と言われること必至だろう。
ここからは簡単である。
匍匐前進で音を完全に消した上で、マイルームに入り、荷物を置いたら姉の部屋に突撃する。
さて実行開始。
さて、ここからいかに早く、正確に、静かに行動できるかが試される。
匍匐前進で3メートル程進み、上体をわずかに上げ、マイルームへの扉を開ける。
「「……へ?」」
そこには、俺のタンスを漁っている姉がいた。
顔を青く染めながら。
「ごめん!本当にゴメン春斗!だから許して!」
姉がいきなりそう叫びながら土下座したもんだから、姉の手にある物を見た。
それは、俺の貯金箱だった。
毎年毎年、使い道が無くて貯まる一方だったお年玉とかを貯める貯金箱。
確か中に諭吉が20人は入っていた。
「…ゴメン。ゴメン!…このまま皆に迷惑かけるにはいかないって思って、株に賭けようって思って…。それで……。」
姉に、株に回せるほどの金があったとは思えない。
だからこそ、嫌な予感がする。
「ちょっと危ないところからお金借りちゃって、1000万…。なくなっちゃった……。」
泣きそうな目を無視して、無理矢理に笑った顔で姉はそう言った。
もう自分でも何が何だか分かって無いようだった。
なんて言えばいいんだろう。なんて思えばいいんだろう。
姉のいきなりのこの告白を、どう受け止めればいいんだろう。
「……それで、俺の貯金箱を?」
姉はゆっくりと頷いた。
「こんちわー!お邪魔してまーす!」
そんな馬鹿みたいにテンション高い男の声が聞こえたのは、それと同時だった。
「……どうしろってんだよ!!」
これのほのぼの√も投稿してるよ。