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ツヴァイがなかまになった。

 はぁ、貰った服がドレスじゃなくてよかった。

 メイド服なら、街の中を歩いていても変じゃない。

 屋敷のメイドさんが、よく表通りに買い出しに来るからね。


 ちらちら見られるが、変な視線で見られる事は無い。


 「まぁ……服は買うけどな」


 何着か貰ったとは言え、メイド服だけで過ごすつもりは無い。

 一旦荷物を家に置いてから服を買いに行こう。


 家に帰ると、扉の前に二人の人が立っていた。


 なんだか揉めているようだ。


 一人は、昨日の夕方にあったエリナさんだ。

 しかし、もう一人は…………


 「……え?」


 ライオット。

 つまり、俺だった。


 死んだハズの、俺がそこにいた。

 間違いなく俺だ。

 自分の身体を見間違えるはずがない。


 ……どういう事だ?

 どうして生きている?

 いや、あれは本当に俺なのか?

 俺の意識はここにある。

 じゃあ、あの身体を動かしているのはなんだ?


 それに、俺がいつも着ている服装と違うのも気になる。

 いつもは、身を守るために必要なガスや煙幕のポーションと、錬金術に使う道具なんかを持ち歩くために、ポケットが沢山ついた大き目のローブを着ている。

 中は薄めの動きやすい物を選んで着ていた。


 あそこにいる俺は、一般的な普通の服を着ている。

 しかもあり得ないことに、腰に剣を下げているのだ。


 …………確かめないと。


 俺は二人の元に近づいていく。


 すると、俺の身体が俺の存在に気付いた。

 そして、俺に向かってこう言ったのだ。


 「!?……あなたが、私の主様ですね?」

 「…………は?」


 こいつ、今何て言った?


 「お待ちしておりました。ここに居ればあなたに会える、そう思い、待っていたのです」

 「ま、待ってくれ。お前は誰だ?」


 エリナさんが居るのに素が出てしまったが、今はそれを気にしている場合じゃない。


 「あなたに造られた者。名はありません」


 あなたに造られた者……この言葉が意味するものは、一つしかないだろう。


 「まさか「ちょっと待ちなさいよ!」!?」


 エリナさんが俺の発言を遮った。


 「あんた……ライオットが、『この男』が言っていることは本当なの?」


 こいつは一体、エリナさんに何を言ったんだ?


 「あなたと……中身が入れ替わってるって……」


 うわぁ……めんどくさい事に……。

 間違いなく今日は厄日だ。

 絶対そうだ。


 「一先、家に入りましょうか。詳しい話は中で……」


 俺は二人にそう言って、家に入る。

 二人も後からついてきた。


 「えっと……お茶でも飲みながらゆっくり話そう。適当に座っててくれ」

 「さっさと説明しなさいよ」


 エリナさんがイライラしたように俺を急かす。


 「えぇ……じゃあまず、確認したいんだけど……君、どこにいたの?」


 俺は……ホムンクルスらしき奴に質問する。


 「気づいた時には草原に居ました。何も身に着けていない状態で倒れていました。体は、草や泥にまみれていたので、川で洗い流してから街を探しました」

 「街を探した?」

 「はい。私が目覚めたとき、一つだけ分かった事があったんです。『自分は造られた存在であり、創造主を守らなければならない』と。しかし、僕の周りには誰もいませんでした。故に、人が多いところで、主様を探そうと思ったのです。最初は、小さな村にたどり着き、そこで親切な方に服をいただきました」

 「ちょっと待て」

 「何でしょう?」


 明らかにおかしい。

 無視してはならないセリフがあった。


 「まさかとは思うが、全裸で外を徘徊していたのか?」

 「はい。衣類の類の物が、何もありませんでしたので」

 「そ、そうか。そうだよな……」


 うわぁぁぁぁ………。

 一体何人に全裸俳諧を目撃されたんだろう。

 ……いや、考えちゃダメだ。


 「そこで、何人かの人に会って気付いたのです。私は造られた存在でありながら、人の身体を有していることに」


 まぁ俺は紛れもない人間だからな。


 「それから、その村で近くで一番大きな街の場所を聞き、この街にたどり着いた所で、この方に声をかけられて今に至ります」

 「ライオットだと思って声をかけたのに、違うとか、訳の分からない事を言われて……記憶喪失か何かだと思ってこの家に連れてきたのよ」


 なるほどなぁ。


 「えっと……これも聞きたいんだけど、俺の認識だと、その体は跡形もなく爆散したハズなんだ」

 「は!?」

 「何か、分からない?」

 「……私が目覚めたとき、この体には強い魔力を感じました。それが、何か関係があるのでは?」


 強い魔力か……あっ!


 「身代わりの護符か……!」


 身代わりの護符、それを身に着けた状態で死ぬと、身体が十秒前の状態に戻るというものだ。

 一度効果を使ってしまうと、それはただの飾りになってしまう。


 グランの病を治したときに報酬として貰ったのだ。

 すっかり忘れていた。


 「間違いないな……」


 あの体は俺で、その意識はホムンクルスの物。

 なぜ、精神が入れ替わったのかは分からないが、それで間違いないだろう。


 「つまり……どういう事よ。あたしはサッパリ分からないわよ!」

 「エリナさん……自分たちは、精神が入れ替わってしまってるんです。私が……俺がライオットなんですよ」

 「なんで……」

 「エリナさん?」

 「なんで言ってくれなかったのよッ!!」

 「エリナさん……」

 「どうして秘密にしていたの!なんで昨日の時点で言ってくれなかったのよ!!」

 「……すみません」


 心配してくれているのは、昨日の時点で気付いていた。

 それでも、自分から言い出すことは出来なかった。

 出来るはずもない。


 何といえばいいのか分からずにうつむいていると、エリナさんが抱きしめてきた。


 「……え?」

 「心配……したのよ。突然、大きな衝撃がくるし……それから、ライオットは帰ってこないし……」

 「ご心配おかけしました……」

 「全くよッ!……無事…‥じゃないかもだけど、生きててよかったわ」

 「ハハハ……まぁ無事、とは言えないですね」


 性別変わったしな。

 そういやなんで体が入れ替わっちゃったんだろ?

 後で心当たりがないか聞いてみようかな。


 「これからどうするの?」

 「一先ずは……こいつと一緒に暮らして様子見ですかね?」

 「え”?同居するの?」

 「?そりゃあまぁ……別々に暮らすわけにもいきませんからねぇ」


 仮に別の所に住むとしても、近くじゃないと不便だしなぁ。

 この辺りは結構いい場所だから、手放す人なんてめったにいない。


 それに、財産はそこそこあるが、無限という訳ではない。

 家を買うのもお金がかかるからなぁ。


 「……ま、いいわ。そろそろ時間だから、家に戻るわ。仕事にもいかなきゃいけないし」

 「そうですか……」

 「……今度からは」

 「?」

 「今度からは、あたしの事も頼りなさいよ。それじゃ、お邪魔しました」


 そう言ってエリナさんは家を出た。


 俺は……自分が思っているよりも、人を信用していないんだろうか。

 それとも、事が事だけに、おいそれと相談できなかっただけだろうか?


 ……多分後者だな。


 「さて……どうしようか」

 「どうする、とは?」

 「お前の名前だよ……あっ!!」


 しまった……これは非常にまずい!!


 「今から出かけるぞ!それから、名前を聞かれたら『ライオット』と名乗れ!いいな!」

 「かしこまりました」

 「とりあえずついてこい!出来るだけ急ぐぞ!」


 これは非常にまずい。


 何がまずいって、こいつの……『ライオット』の身分証についてだ。

 先ほど、俺はグラン様にライオットの身分の後処理を頼んでしまった。


 ……あっ。


 「しまった。やっぱり急がなくていいや」

 「?どうしたんですか?」


 俺は出かけるのを一旦やめる。


 「いやぁ……実は、ライオットは死んだ事になっているんだけど、まぁこうして生きてたじゃん?」

 「そうですね。精神は入れ替わってますが」

 「で、実は領主様にライオットの身分のあと処理を頼んじゃったんだよ」

 「それは……」

 「で、それを阻止しないとって急いでたんだけど……そもそも、もうライオットの身分証を紛失してるじゃん?」

 「私は、何も身に着けていませんでしたから……衝撃で破損した、と言う事ですね」

 「そういう事。つまり、身分証が無い以上、もう急いでも意味ないんだよね。新しく作った方が早い」

 「なるほど」


 まぁそういう事だ。

 しかし、これはこれで困ったぞ……。


 「この街でお前の身分証を作れない……」

 「身分証がないと、どうなるのでしょう?」

 「あぁそっか。お前は知らないんだよな。生まれたばっかだし。まず、これを見てくれ」


 俺は二代目ライオットに俺の身分証を見せる。


 「これが、俺の身分証だ。で、これは住民身分証といってな。この街で家に住むには、これを持っていなきゃいけない。で、ライオット、つまり、お前の身体が死むことになる前は、この身分証を使っていた。これがまずい」

 「……どういう事です?」

 「死人がまた身分証を作ろうとしてるんだぞ?この街に住むために」

 「まずいですね」

 「だろ?」


 同じ人物が、それも死んだことになっている人間が、二度目の身分証を発行しようとしたら面倒なことになるのは間違いない。


 「つまり、お前は……ライオットは身分証を作れない」

 「……困りましたね。身分証が無いと、どうなるのです?」

 「投獄される」

 「……困りましたね」

 「困ったな」


 本当に困った。

 どうしたものか。


 「何か、方法はないんでしょうか?」

 「う~ん……」


 身分証はいくつか種類があるが、どれも……ん?

 いや、あったわ。

 あっさり解決するわ。


 「解決しそう」

 「身分証について、ですよね?」

 「うん。冒険者になればいい」

 「冒険者?」


 冒険者になるのは簡単だ。

 ギルドに行って、カードを発行してもらえばいい。

 身分証として使うのには十分な物だ。

 欠点として、冒険者の身分証だけだと街で不動産を所有することが出来ないが、俺が既にここに持っているので関係ない。

 冒険者のギルドカードさえあれば、街で滞在することが出来るのだ。


 「という訳だ」

 「なるほど。では、早速いまから?」

 「うん、早めに作ってしまおう。それから、お前は…………『ツヴァイ』でいいか。これからはツヴァイとなのれ。カードもそれで発行しよう」

 「かしこまりました」


 いつまでもライオットで居てほしくない。

 元々俺が使っていた名前を俺が呼ぶってのがつらい。

 本当はホムンクルス二号を作った時に付けようかなぁ、とか思ってたんだけどな。


 「じゃあ行こう。ついでに、帰りにいろいろ買い物に行くから手伝ってくれ」

 「了解しました」


 俺たち二人は家を出た。


 はぁ……これから忙しくなりそうだなぁ。

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