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私の夢は女村長

作者: 光森 璋江

私、マリー・ターヤンには婚約者がいた。

親たちが決めた相手で、形の上では一人娘だったので婿養子にはいると言うことが前々から決まっていた。

あれは、今から2年前。大魔神ガグーが再出現したという驚異がやってきた。

彼がその討伐兼封印隊リーダーつまり勇者に選出された。

なぜ、封印するのかといえば諸事情あって都合がいいからだとか。私にはよくわからない。

「マリー。大魔神ガグーを倒したら結婚しよう。」

その言葉を残して旅立っていった。

それから幾日の後、私の元へ手紙が届いた。

大魔神ガグーを倒し平和を取り戻したという喜ばしい一報だった。

後は故郷に錦を飾りに戻ってくるだけ。

のはずだった。

最初の手紙から二日と間を開けない日にだいぶ立派な封書が届いた。

「なんですって??」

私の久しく聞かない驚いた声に両親が反応して手紙を奪い取って読む。

私は心あらずで頭の中は真っ白だった。

「はぁ?」

「これを持って事実を確認しましょう。」

私たちにはその手紙の内容が嘘を書いているとしか思えなかった。

親子3人そろってで彼の両親に聞きに行くことにした。

彼の両親もその手紙と似たような内容のものを受け取っていた。

「それが・・・私たちにもこんなものが届いたのですよ。」

彼の母は怒りに燃えた目をしていた。

私が一方的に婚約破棄をされたという事実が私の住む村の他に周囲の村々や街にまで噂に尾ひれが付いた形で広まるのにそう時間はかからなかった。

国の英雄が、故郷で帰りを待つ娘を袖にし、代わりに国王の娘との結婚をしようとしている。と。

待っていた娘は毎日恨みながら暮らしているとか、美しかったのに今では・・・という誤った噂まで出回っていて終息していない。

実のところは恨んでもいないし元々美しいと言えるような容姿でも無いことは自覚している。

どうしてくれよう、この2年という歳月と彼と結婚すると決めた心。ただそれだけ。

彼が村を出た日から、無事に帰ってくることだけを神に祈り続けてきた私にこの事実は酷だ。

そんな噂を聞きつけた友人達が見舞ってくれても私の心は釈然とはせずもやもやとしたまま。

どうにか気持ちを立て直して日常を取り戻しつつあったのに。

最初の手紙から1ヶ月あまりが過ぎた頃、またもや思い出したくもないあのとき受け取ったものと同じような立派な封書がまた届いたのだ。

それは私が彼との婚約していたことすらを忘れかけたある日のことである。

「今度は何よ。どういうつもりなの?」

内容は・・・姫を連れて錦を飾りに来るというものだった。

よくも、まあぬけぬけと帰ってこれるものだとここまで来れば呆れるの一言につきる。

もちろんこの話も尾ひれが大きく付いた噂として世間に広まっていった。

私が用事で外へ出ようものなら友人達に絡まれる。

「これが本当なら友達辞めるぜ。あいつ、性根腐ってやがるな。」

「まぁ、ひどいわ。」

「侮辱するにも。マリー気を落とすな。男なんて他にいくらでもいる。あんな奴のことなんて忘れて奴よりも幸せになるんだ。」

「女の敵よ。マリーがどれだけ心配と不安な日々を過ごしてきたのか。あぁ、神はなぜこのような仕打ちをマリーにするのでしょうか。」

などという。

慰めと同情の言葉を耳にする度私よりも国王の娘つまり姫を選んだという事実は消えない。

もうその言葉は飽きた。

すぐに彼のご両親が怒りの声をあげにやってきた。

ついでにお兄さんまでもやってきた。

「我が家に入れないし会わないわ。」

「マリーちゃんのこともそうだ。」

「あいつを一発殴ってやりたい!」

とあの時以上にお怒りだった。

私としてはどうでも良かった。

ただ一つなぜ私を捨てたのかその理由さえ聞ければ私は納得するのだ。

そこは絶対聞き出す。

そう決めて私は彼らが来るのを待った。


約束の前の日、友人が私を訪ねてきた。街へ出た帰りだという。

本日は、近所さんが来てくれていた。

彼が来る前には帰って後日どうなったのか聞きたいらしい。

大した娯楽がない村なのでそういう話には目がない親しい村人だ。

「おかしいわ。」

「え?」

「姫ではなくて夫妻とをもなってやってくるという噂がちらほらあるの。姫は城においていると。」

「わぁ。最悪~」

「ん?姫を連れて行くんだろ?」

「手紙に相違ありってどういうこと?手紙は来ていないんでしょう?」

な、なに??

彼と一緒に国王夫妻がこの村までやってくる??

姫はどうした?どうなっているのか??

ちょぉぉっと待ってよ!

何があったというのよ!

何がどうなったらそうなるのか私には理解が出来ないまま国王夫妻と彼が彼の実家を尋ねてくる日が来てしまった。

「ごめん!!」

村に着いた彼が一番最初にやってきたのは私の家。

そして開口一番腰から頭を下げている。

「はぁ?」

頭を下げたままじっと動かない。

頭に血が上ると後々面倒なので頭を上げさせる。

どうしても私に一言、言いたいことがあるのだという。

 一番最初にもらった手紙は確かに彼が出したものだという。

でも残りの手紙には触れたことさえないのだと。

真偽のほどを確かめるために手紙を持ってくると差出人の名前にスペルミスを見つけた。

しかも、同じ箇所を。

内容にばかり気を取られていたからだろう。

この程度のミスに気がつかなかったとは。

「そうか。よくわかった。周りが誤解している意味も。」

「誤解?」

「あたかも俺が出したように小細工した手紙を出させたんだ。許せん!」

本物か偽物かなんて今まで手紙さえもらったことのない私には区別が付くわけがない。

「あ、貴方の自宅にも手紙が。ご家族は全員怒っていたわ。」

「やばいぞ。マリー、この手紙を貸して。詳しくはまた別な日に。」

恐ろしいほど足早に彼は帰った。

おそらく実家に。

先に彼の実家へ国王夫妻が行っていたのではと推測した。

嘘の手紙に振り回された私はどっと疲れが出ていつもより早めに就寝した。


翌々日になって彼と国王夫妻がやってきた。

彼も一緒に。

「ね、婚約はなかったことにならないよね?」

あれだけ言われてまだ言うか!

「約束は村長になること。私との共同村長よ。それが出来ないなら無理ね。貴方は村長になりたいの?この国の王になりたいの?どっちなの?」

彼は黙っていた。

「他に言いたいことはあるかしら?」

彼の弁解者が意外な方からの仰天の告白だった。

「どうか我が国の王妃となってくれまいか。頼む!我が息子の嫁として来てはくれぬか?」

国王はらしくもなく跪いて懇願する。

お世辞にもかっこよさのない中年のおじさま。おごってはいない物腰の柔らかそうな人柄が顔にも良く表れている。普段は威厳ある姿で玉座に座っているのだろう。

そんな国王が命令ではなくお願いを小さな村の村長の小娘に頭を下げている。

手紙の一件は彼から叱られたらしい。

彼は予想外のことを話し出した。

「村長にはまだ娘がいるだろう?」

「それならばマリーさんでなくてもよろしいでしょう?」

それは確かに。

妹が4人いるが諸事情があり親戚に養女としていっていた。

いざとなれば妹たちの内1人を新しく女村長としてしまえばいいだろう。

だが、それは私の夢がかなわないと言うことを意味している。

「ちょっと待って。私が国王の妻に?いや、いやいやいや。一村の村長の娘にそんな・・・大魔神ガグーを倒したら願いを一つ叶えてもらえるって言っていたわよね。」

その話を聞いてまさか、玉座を?

身分云々から姫様をもらって??

私の妄想が現実になったのだ。

そうか、やっと筋が見えた。姫と結婚してハッピーエンド。そうだ。それが結末なのだ。私は新しく婿に来てくれる人物を捜せばよい。

そう、私は考えていたが予想を遙かに超えた答えが返ってきた。

「他のメンバーは金銭的なものがほとんどですぐに返された。だが、俺が国王に頼んだことは自分の本当の父親が誰なのかを調べてほしいと言うこと。なのに、国王が勝手に婚約破棄の手紙を送りつけ、自分の娘との結婚をするという手紙までも送りつけた。」

国王の大暴走は今に始まったことではない。

気まぐれな指示を出し、飽きれば撤回するという国民としては迷惑な国王である。

「本当は姫も連れて国中に誤報と言うことを国民に報告をしなくてはいけなかった。

ところが、姫の嫁ぎ先予定だった国から至急嫁に出すようにと。きっとあの噂が流れたからだ。」

「姫との結婚話が進んでいるって言う噂ね。それで願いを叶えてもらったのね。」

「違うって。最後まで聞けよ!その当時の店の関係者から一人の男が浮かび上がってきた。

妻は娘にかかりきりで寂しさから飲み歩いていた。それが今の国王だ。国王もその報告から思い出し、昔そういうことがあったとは記憶していると。それにこれも。そのときの女に渡したものだと。」

どこの家の紋章なのかわからない金ボタンが一つ彼の手の中にあった。

彼の父親のものという唯一の手がかり。

その昔、女手一つで子供を育てていた彼の母は都で出稼ぎをしていた。

その時に意気投合した男と・・・という話を聞いたことがあった。

後に妊娠がわかり仕事を辞めて故郷に戻った。

そうして彼が生まれ、死別した夫の子、つまり彼の兄と共に実家のあるこの村で暮らしはじめた。

縁あって今の夫と結婚しさらに子供がいる。

ずっと彼は自分の父親が誰なのかを知りたがっていた。

継父との仲はまさに親子そのもの。だけれど、実の父親が誰なのかわかるのであれば知りたい。

と私は彼から昔その話を聞いていた。

だから、大魔神ガグーを倒したら実の父親を捜してほしいと願うことはごく普通のことだと思う。

「欲しくもない玉座を手に入れて嬉しいかしら?私は、村長の娘。婿を取らなくてはいけないことはわかっているでしょう?」

大事なことだから2回言う。

玉座を取るか村長となって私を取るかどちらも得ることは出来ない。

「親同士が決めたことだけど、おまえじゃなければ承諾をしていない。」

「玉座に目がくらんだんでしょう?」

「国王になるものか。」

そういっているのに服装は王子の服装そのものだ。

彼が成らざるを得ないのであろう。

国王には王妃との間に娘が一人だけである。

彼女は他国の王子との結婚が既に決まっている。

次の王位は国王の十数人いる弟君の誰かが継ぐことになっていたが状況が変わった。

それは国王の知らないうちに彼が生まれたと言うこと。

たとえ彼が王位を継がなくても十数人いる弟君の誰かが継げば問題はないようだ。

彼が父親を捜してほしいと言わなければ両者の関係なんてわからなかったことだ。

国王としても自分の息子が跡を継いで欲しいのであろう。

「だからって・・・」

私が夢をあきらめなくてはならないのか?女村長として村をもり立てていくという夢を。

でも私は夢をあきらめきれない。

「まぁ、お食べなさい。」

母は私たちに手作りのお茶菓子とこの地方特産の苦みの少ない紅茶を出してくれた。

「お口に合いますかどうか。」

そういいながらおつきの人たちもお茶菓子と紅茶を注ぎ分けていった。

楽しいおやつとは成らず空気は重いまま。そんな空気を買えようと思ったのか母はこう語った。

「われわれとしては娘が幸せになってくれればよいのです。国王陛下ご夫妻もそうでございましょう?」

私の両親にそういわれ国王夫妻と彼は城に帰っていった。

しばらくは友人達が事の子細を知りたがり騒がしかった。


それから、国王夫妻に呼ばれ彼が勇者として最後の大仕事、魔王ガグーの封印が不完全だったらしく仕方ないので滅する作戦のために何も知らされないまま王宮の外れに連れてこられ、人質させられたりしたので私の特殊スキル”怒りの暴走”を使って解決し次第、早々に女村長をしたことのある親戚の家に弟子入りして手続きの仕方やら直訴の仕方、村人の喧嘩を止める極意などを実際の喧嘩を止めたり手続きをしたりした。

さすがに実践では直訴はしなかったが。

直訴をする、つまり自分の命をなげうって要望を聞き入れてもらうという最後の手段なのである。

まだ私は死ぬつもりはなかったし、それ以前に特に聞き入れて欲しい要望等もなかったのである。


私が弟子入りして半年後、彼がやってきた。

よく、私がここにいるとわかったなと内心思った。

また立派な服を着て数人の部下らしき人物を引き連れていた。

「この土地の領主になった。」

「あぁ?」

「俺の上にも兄がいて弟が2人、そして姉がいることが新たに判明した。その兄が国王の跡を継ぐことになった。」

つまり、国王は身分を偽って他の女性にも手を付けていたと言うことである。

なんとも・・・人は見かけによらないものだと思う。

「私、夢をあきらめなきゃだめ、なの?」

そんなやりとりを見ていた親戚のおばあさんが口を挟んできた。

「お前の両親から”お前は村長に向いていない”といわれてな。一通りのことは教えては来たが、私としても向いてはいないと思うぞ。ま、これも領主の妻としては必要な経験じゃ。村長に向いた妹が一人いる。その子を女村長にすべきではないかな?」

きっとそれは私に夢をあきらめさせるための口実。

私が夢をあきらめれば万事うまくいく。

「マリー。新しい夢を持とう。」

「なによ。」

「幸せになる夢だよ。」

これが彼のプロポーズだった。

そうして元勇者であり、国王の隠し子だった彼と私は一緒になった。

とりあえずめでたしなのだろうか、私の新しい夢はどうなるのかそれはまだわからない。

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