初めて。
授業も終わり、人気のなくなった教室。
夕日が窓から差し込み、教室をオレンジ色に染め上げていく。
校舎の外からは、下校途中の生徒たちの声と、それに返事をする先生の声が聞こえてくる。
「あの、話って…。」
もじもじしながら、上目遣いをする彼女。
赤いランドセルに、黄色い帽子。
話の内容がどんななのか、幼いながらに感づいてはいるようだ。
「あの…その…」
あんなにも考えてきたセリフが、口から出てこない。
思わず、握りしめた手に力が入る。
口が乾いて、うまくしゃべれない。
「ぼ、僕と大人になったら、結婚してくだはい!」
目をつぶって、右手を伸ばした。
どこかのテレビで見たプロポーズのマネだった。
「ふふふ、結婚はまだ早いよー。だから、ごめんなさい。」
渾身のプロポーズは、玉砕してしまった。
「でも、大人になったらどうかな?」
顔をあげると、そこには満面の笑顔の彼女がいた。
頬をつたう何か。
それはとどまることなく、どんどんと溢れてくる。
僕は思わず泣いていた。
初めての恋。
初めての告白。
そして、初めての失恋。
あれから数年…
僕は今、結婚式場にいた。
たくさんの参列者が見守る中、神父の前で佇む僕。
大きな扉が開き、そこから父親に引かれてくるキミ。
純白のベールに包まれて、キミは僕の隣に立つ。
読んでいただき、ありがとうございます。
正直なところ、単なる妄想です。短い文章に、「ハッピーエンド」というテーマで執筆してみました。
ぜひ、他の作品も読んでみてください。