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ブレイ。
私はあなたの母として、まず最初に伝えなければならないことがあります。
それは…私があなたのことを愛しているということです。
私は子供たち全員を愛しています。
なぜ愛していると伝えたかったかというと、私が1人しかいないからです。
…うまく言葉にできなくてすみません。
正確に言えば、私が子供たちを愛してはいても私は1人しかいない為に全員を同時に見護り、味方をしてあげることができないうことです。
家族内でのいざこざの話ではありません。
兄弟姉妹喧嘩をしたと言うことであれば、原因を聞いた上で、その内容いかんに関わらず両方が悪いということにします。
この話はもう少しブレイが大きくなってからまたしましょう。
では味方になれないとはどういうことかいいますと、あなたが成長して家を出た時、あなたがどんなに辛い状況であっても助けになってあげることができないということです。
もちろんあなたの無事を祈っていますし、そんな状況に陥ることのないように願っています。
しかしどんなに順風満帆な人生であっても必ず壁にぶつかるものです。
私の気持ちとしては、その場に居て壁を乗り越える手助けをしてあげたいのですが、常にそばにいて支えてあげることは叶いません。
私が1人しか居ないからです。
私は家族みんなが安心して帰ってこれる家を守る義務があります。
あなたたちの母親として。グレイの妻として。
だからもう一度…いえ、何度でも言います。
私はあなたのことを愛しています。
さて、生きていればいつか辛いことが訪れるだろうと暗い話をしてしまいましたが、そんな人生を楽しく過ごす為の秘訣を教えましょう。
難しいことではありません。
一緒にいることのできる人を見つけなさい。
友でも仲間でも想い人でも構いません。
一緒にいて助け合える人を見つけなさい。
決して孤独を愛してはいけません。
1人というのは確かに楽です。
誰に気を使う必要もなく、誰かとぶつかり傷つくこともありません。
しかし同時に弱った心を癒すこともできません。
孤独に溺れ、自分の弱さに負け、生きる気力を失う。そんな人生を歩んではなりません。
母としてあなたがそんな道を進むことを許しません。
だから一緒にいることのできる人を見つけなさい。
…それが想い人であるなら私に見せに来なさい。
あなたが選んだ女性に私が口を出すつもりはありません。
たとえどんなにグレイや娘たちが反対しようと、私はあなたの味方です。
…ただし、その相手があなたに相応しくないと判断した時は……。
………ほんの少しだけ悲しくなります。
泣いてしまうかもしれません。
でもあなたの選んだ女性を悪く言うことや結婚することに対して反対することはありません。
自信を持って自らの認めた女性とその家族を愛しなさい。
…でも私は悲しくなるということも少しだけ覚悟して、理解してください。
これはあなたに限らず、あなたの兄姉全員についても同じことを伝えてあります。
なので、あなたの兄姉がどんな人物を伴侶に選ぼうと、受け入れて祝福してあげてください。
あ、一つだけ忠告しておきますが、シルヴィとの結婚は私としては容認しますがグレイは認めないと思います。
最終的な判断は夫のグレイが下しますので、グレイを倒す覚悟で決断してくださいね。
もちろん私はシルヴィとあなたの味方をしますので安心してください。
ただこと生涯の伴侶となる相手の話となるとグレイも真剣になりますし、私があなた達の擁護をしようとも簡単には折れないと思います。
禁止されたものではありませんが世間ではあまり見られないものですので、周囲の人から受け入れられないことも覚悟してください。
それでもというのであれば……いえ、これ以上は野暮ですね。
シルヴィとの婚姻について容認すると言いましたが、相手がセリアでもレイヤ、レイナ、マリーの誰でも私の答えは同じです。
…さすがに全員と、というのは母としても1人の女性としても歓迎できたものではありませんが。
それでもあなた達が考えぬいた末でのことであれば、私はあなた達の味方ですよ。
他にも話したいことはたくさんありますが、それはブレイが大きくなってから、必要な時にお話しするとしましょう。
最後になりましたが…ブレイ。
あなたはあなたの行きたいと思った道を進みなさい。
家族や周囲の人間に助言を求めるのは構いません。
しかし、最後の決断は自分で下して、自分の決断に自信と責任を持って生きなさい。
疲れたら立ち止まらずに、私たち家族の元に帰ってきて好きなだけ甘えなさい。
そして英気を養ってから、また歩みなさい。
辛くてどうしようもなくなったら私の元へ帰って来なさい。私に頼りなさい。
辛い気持ちを私にぶつけなさい。
私が全部受け止めてあげます。
__だって私はあなたの母親なのですから。