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1ページ目

 今、私の6人目の弟が生まれようとしています。

 すでに何度も経験したことではありますが、やはり弟妹が生まれるというのは嬉しいものです。

 お母さんの辛そうな表情を見ると出産の大変さがわかりますし、ただ喜んでいるのが申し訳なく思えてしまいます。

 とはいえ出産を終え赤ちゃんを見た時のお母さんの表情はとても幸せそうで、「生まれてきてくれてありがとう」と話しかけている姿を思い出すと、そんな些細な悩みは吹き飛んでしまいます。

 そしていつも思うのです。


 ーーお母さん、幸せそうだなぁ。

 ーーあんなに辛そうな感じだったのに…。

 ーーそんなに自分の子供が生まれるって嬉しいことなのかな?

 ーー確かに私も弟や妹が増えるのは嬉しいけど…。

 ーー私も子供を産めばわかるのかなぁ……。


 う、うそうそ! 最後のは冗談です!

 べべべ、別にアレク兄さんの赤ちゃんだったらなんてか、考えてなんか…考えてなんか……うへへへ。

 ……ハッ!

 ち、違います私はそんなはしたない女の子じゃないんです! お淑やかでおとなしくて清廉潔白で…うぅ…。


 と、とにかく私は赤ちゃんを産んだときのお母さんの幸せそうな顔が印象的なんです。

 う〜んと、う〜んと……あ!

 私、6人目の弟と言いましたが、お母さんの出産を見るのは実はまだ3回目なんです。


 1回目はこっそり覗いたらお母さんの辛そうな声が聞こえて怖くなって逃げ出して、お漏らししてしまったところをアレク兄さんに見られてしまって恥ずかしくなってそのまま2週間家出をしたり……。

 うううウソーーーー!!! 今のもウソです、ウソ!

 ほ、本気にしちゃいました? 残念、ウソですよ!

 私がそんな粗相をするわけないじゃないですか。

 2週間の家出は実は途中で迷子になって帰れなくて泣いているところを、探しに来たアレク兄さんとセリア姉さんに発見されて保護されて家に連れて帰ってもらって、安心した私はアレク兄さんにおんぶされたまま眠ってしまって、しかもアレク兄さんにしがみついて離れなかったなんてことはなかったんです。

 汚れたままだとかわいそうだからと言ってアレク兄さんにしがみついたままお母さんとセリア姉さんに体を拭かれれ着替えさせられて、当然のようにアレク兄さんにも裸を見られたなんて黒歴史はないんです!

 それを知った私が部屋に引きこもったなんてこともなかったんです!

 ……なかったということにしておいてください…。


 …2回目は現在3歳のシロを出産した時です。

 シロという名前は当時の私にとって違和感がありました。正直に言えば今もちょっと慣れない感じがします。

 この話をするといつもシロが不機嫌になるのですが、このシロという名前はもともと"シロナ"という名前だったんです。

 実はシロは生まれてくるまで女の子だと思われていたんです。

 私にはどうして生まれてくる前の赤ちゃんの性別がわかるのか不思議なところですが……。

 それはさておき女の子だと思われていたシロは"シロナ"という名前に決まっていたんです。

 名前を決めたのはお母さんです。我が家では子供の名前はお母さんがつけることになっています。

 もちろん私のシルヴィという名前もお母さんがつけてくれたものです。

 そしてアレク兄さんのアレクという名前も…アレク…アレク…。


 あ、アレク、そんなとこ触っちゃ…あぁ…いや……もぅ、アレクったら…。

 ……ハッ!


 お、オホン。とにかく我が家ではそういう決まりで、女の子が生まれてくると思っていたお母さんはシロナと決めていたんです。

 しかし生まれて産湯につけてみるとびっくり、男の子だったのです。

 それを知ったお母さんは慌てた様子もなく「あら、男の子だったの…じゃあシロナちゃんじゃなくてシロくんね」と嬉しそうに言いました。

 こうしてシロは名付けられたのです。


 私は女の子だと聞かされていたのに男の子が生まれたのに驚きもせず我が子が生まれたことを喜んだ、お母さんの深い愛情を感じる素敵なお話だと思いますし好きなのですが、シロとしては女の子と間違えられたと思ってあまり好きではないようです。

 でもそんな不機嫌そうな顔が女の子が拗ねてるみたいに可愛らしくて逆にシロを女の子っぽく見せちゃってるんですよね…。

 それで「女の子みたいで可愛いな」とソルに言われて余計に不機嫌になって…という負のサイクルが…。

 こうなるとシロをなだめるの大変なんです。

 可愛いから可愛いと正直に言えば不機嫌になるし、シロは男の子だもんねと話しかけてもそっぽを向いてしまうんです。

 それが照れ隠しとかなら良かったんですが、当たり前のことを確認されているようで不機嫌になるみたいなんです。


 こんな時に活躍するのはセリア姉さんです。

 セリア姉さんがシロを抱っこしながら「シロは将来、立派な男の子になるのよね〜。父様よりもカッコよくて強い男の子になるのよね〜」とあやすと、シロは徐々に機嫌を戻していきます。

 私がやっていることとあまり変わらない気がするのですが、何がいけないのでしょうか?

 セリア姉さんに尋ねても「ん〜シルヴィちゃんには難しいかもしれないわね〜」と困ったような顔で言うだけです。

 ……もしかして胸なのでしょうか? セリア姉さんの柔らかそうな胸と私の絶壁…いえ、こぶし大…すみません見栄を張りました、せいぜい掌を絶壁に当てた程度です……わ、私の胸の話はいいんです! とにかくセリア姉さんと私の差は胸ということでしょうか!?

 アレク兄さん、どうなんですか? アレク兄さんはセリア姉さんと私とどっちの胸が好きなのですか!? そこのところどうなんですか!?


 …すみません、取り乱しました。

 でも私とセリア姉さんの違いなんてそれくらいしかないと思うんです。

 つまりシロは…お、弟を貶めるのはいけませんよね、うん。きっと何か別の問題"も"あるんでしょうね…。


 話が逸れましたね。そして3回目が今回のブレイというわけです。

 そうですね…シロに続いて名前の由来について教えましょう。

 ブレイという名前、誰かに似ていませんか?

 ほら、ブレイですよブレイ。

 ブレイ、ブレイ、ブレイ、ブレイ、ブレイ、グレイ……そう! ブレイの名前の由来はグレイ父さんの名前なんです。

 私の兄弟姉妹ですと珍しいことです。

 ブレイを含めて現在七男五女の十二人いる兄弟姉妹にお母さんとお父さんの名前にちなんだ名前をつけるとややこしくなりそうですからね。

 ……気づかれないように勢いに任せて流そうとしましたが、無理ですよね。ブレイの名前をお父さんのグレイにちなんでつけたことなんてわかるはずなかったですよね、だってお父さんの名前を紹介したのは今が初めてなんですから…。

 た、たまにはこういう可愛いミスをしてこそ素敵な女性といいますか…すみません。


 それにしても…ブレイの顔を見ているとどことなくアレク兄さんの面影が…。これは私が"優しく素晴らしいシルヴィ姉さん"という姿を見せて私に恋するアレク兄さんとして育てるべきなのでしょうか? そういうことなんでしょうか!

 い、いえダメですね。ブレイはブレイで、アレク兄さんではないのですから。…でも、もしアレク兄さんみたいに素晴らしい男性に育ったブレイに結婚を申し込まれちゃったりしたら断れる気がしません……そう考えると、やはり私の手で育て上げるしかないですかね?

 うぅ…生まれたばかりで姉を惑わし悩ませるなんてブレイは罪な男の子です。恐ろしい子です。

 きっとこれから私のみならず、セリア姉さんやレイナ、レイヤ、そしてマリーも惹き付けて姉妹全員の心を弄ぶんです。アレク兄さんみたいに!

 …あれ? アレク兄さんはセリア姉さんには頭が上がらないみたいですし、レイナとレイヤはアレク兄さんとたまに遊ぶ程度ですし、マリーはアレク兄さんとあまりお話もしませんし…これはブレイが私以外の4人の姉妹を惹き付けている間にアレク兄さんを手に入れるチャンスということでしょうか?

 となると、残るの障害はお母さんとお父さん、そして近親婚を禁止する法くらいですか…。残り二つはともかく、お母さんは強敵ですね。


 私たちが何か悪さをした時、お母さんは怒りはせずにただ悲しそうな顔をするんです。普段は優しげな笑みを浮かべるお母さんが悲しそうな顔をするととても心が痛むんです。

 そんな顔をさせた子は他の兄弟姉妹から優しく、しかししっかりと注意されます。キツく叱るとお母さんがさらに悲しそうな顔をするので我が家では禁止されています。

 そして反省したことをお母さんに告げ謝ると、お母さんが優しく抱きしめて事態が収束します。

 アレク兄さんは時々それを目当てでワザと失敗したりしている気がします。胸ですか? アレク兄さん、お母さんの胸がそんなに気持ちいいですか? お父さんに言いつけますよ? お父さんに叱られて泣いているところを私が優しく抱きしめてあげますよ!?

 …まぁアレク兄さんは抜けているところがありますし、ワザとというわけではないのでしょうが。


 すみません、また話がそれてましたね。

 私が法も関係ないとアレク兄さんと結婚したいと告げれば、お母さんはきっと叱りはせずにただ悲しむでしょう。

 言い出した私は耐えられたとしても、アレク兄さんはきっと耐えられずに私との結婚を諦めてしまいます。

 そしてアレク兄さんの説得に私もあまり強く出られず、最終的には私とアレク兄さんの結婚は叶わないんです…。

 やはりどんなに想っていても実らない恋というものは悲しいですね。ああ、なんという悲恋!


 …オホン。

 そろそろ次のセリア姉さんにバトンを渡すとしましょう。

 最後に一言だけ言わせてください。

 私は、私たちはブレイが生まれてきてくれてとても嬉しいです。

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