陰忍の術
「陰忍の術」
陰忍の術とは、姿を隠して敵の陣地・屋敷・城郭に忍び込む術である。一般的な忍者のイメージとしてはこちらの方であろう。
「忍家法」
忍家法とは敵方の陣屋・邸宅・城郭に潜入するさいの心得である。開器という忍具をもちいて、秘伝忍術を駆使して侵入するのだ。
「開器」
侵入する際に使う道具であるが、大工道具を流用したもの、独自に開発された忍具もある。
○苦無…「苦無」とは「苦内」とも表記する。持ち手のさきが両刃の切っ先になっている。柄尻には丸い輪がついている。忍具のなかでは、いちばん汎用性の広い使い道がある。現代の十得ナイフやサバイバルナイフのようなものか。
大きさは「大苦無」が13~15cmほど。「小苦無」が8~10cmほど。
戸の隙間に挿しこんで、こじ開ける。羽目板にさしこんでねじる。地面や土塀を掘る。壁を登るのに使う。後部の丸い輪は、縄や紐を通して投げ縄の錘に使用。釘抜きにつかえる。また、水をはって、レンズにしたともある。
小苦無は敵に投擲して、手裏剣として使用する。その際は、「飛苦無」、「苦無手裏剣」と呼ばれた。
しかし、苦無は日本刀のように純度の高い鉄を製錬してつくる効果な道具なので、手裏剣のように使い捨てには、なかなか出来なかったと思われる。
○錣…兜や頭巾の首を守る部分の「錣」とは別のもの。苦無に形状が似ているが、両刃がノコギリになっている。
木材や鉄材を切断するのが目的。木製の戸に手や人が通り抜けられる穴を穿つことができる。また、柵、矢来、垣根、忍び返しを無効化。
○坪錐…先端が半円形にわかれた錐。土塀や土壁に丸い穴をあける道具。穴から庭園内や家屋内部をさぐる。また、穴から吹き矢などの飛び道具、眠り薬や毒薬を流し込むなどにつかえる。
○さく…五寸(15cm)ほどの長さの棒状の道具。「鑿」の漢字をあてる。先端が丸くなっていて、錠前を開けることができる。
○かすがい…「コ」の字型をした釘。「S」の字を直角にした釘もある。「鎹」の漢字をあてる。本来は大工道具で、木材の両端をつなぎ合わせるために使用。ことわざにも「子はカスガイ」、「豆腐にカスガイ」というのがある。
忍者は戸や襖を開かぬようにして、その間に家探しに専念。また、追手を防ぐ時間稼ぎに使った。
また、城壁などをのぼる際の登器としても使用した。現代でいえば、登山道具のハーケンであろう。忍者屋敷に忍び込むさい、廊下や床に仕掛けがある場合を想定して、壁や天井に打ち込んで裏をかいた。
○戸閉め…「S」の字を直角にした釘で、カスガイよりも少し小さめ。カスガイと同じく戸や襖を閉じるのに使用。
他にも、門外し(かどはず)、刃曲、釘抜、鎖子、抜、折りたたみ鑿、鋏、打ち釘、鉤縄……などがある。
「忍び入りの好機」
○祝言当日の夜、もしくは翌夜。
○病後の夜。
○遊興の夜。
○隣家に事件があった日の翌夜。
○死者がでて近親者が悲しみにくれた日と、それから二、三日の夜。
○雨風の強い夜。
○騒動のあった日の夜。
他にも、「敵の虚に入る法二十ヶ条」、「忍び入り先考術十ヶ条」、「巧妙陽中陰の術」、「諜者の防潜法」などがある。




