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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

裄瀬家シリーズ。

かくして、終わりを告げる +意味の無い雫+

作者: 十叶 夕海

企画モノに、既存作品の番外はどうかと思いましたが、思いついちゃったので。


その日、その世界は終焉を迎えた。

 《神々の黄昏ラグナログ》にして、《世界の終焉カタストロフ》だった。


 彼の世界の青い月の光を浴びながら、《泉ノ乙女》は幻視する。

 天に届くほどに大樹とその根元にある泉のほとりで、《守護龍》に寄り添いながら。

 かつて、そして、未だに最強の双璧にして破れざる双璧と謳われた《片眼王》と《歌乙女》の譲らざる想いが故に崩壊する世界を。

 幾たびも転生して、そして巡り会って、めぐり逢って、そして殺しあって。

 彼らが彼らとして生まれ変わるたびに、そんなことを繰り返して。

 最初に《龍殺ノ英雄》が死ぬのが始まり。

 それから、《片眼王》が《戦乙女》を求める。

 《戦乙女》の意思など関係ないように。

 だから、妹分の為に、《歌乙女》は止める為に奔走する。

 勿論、自身が《片眼王》が欲しいからでもあるけれど。

 そして、それを《道化師》改め、《語り部》と《賢しき愚者》が傍観する。

 直接関わらず、しかし、彼らと同等だった面々・・・同類に分類される《御伽噺の幽霊》と呼ばれる面々もいた。

 それは、一万年近く経ったこの時代では、彼らを含めて《御伽噺の幽霊》は神様のような扱いを受けていた。

 魔導戦士の神・《片眼王》、魔術の女神、或いは歌女神・《歌乙女》などと言うように。

 始まりから生き残っているのは、此処に居る三人と別に一人だけ、《泉の乙女》に《守護する龍》、《世界樹の翁》で三人、それにどこにいるのかさえわからない《絶望を呼ぶ占術師》。

 つい先ごろに、《運命演算三姉妹》も全員、身罷った。

 視ていようと視ていまいと、変わらないならと視点を自身に戻す《泉ノ乙女》。

 葡萄酒色の髪に、泉を写したかのようなオーキッドグレイ色の瞳の小柄な無表情な女性だ。

 これでも、《世界樹ノ翁》に次いでの長齢であるのは、指摘しないほうが良いだろう。

 同じく、身長が低いことも指摘しないほうが命の為だ。

 何せ、長い裾に隠れているがハイヒールをはいているのだから。

 「《翁》、起きているか。」

 「起きているよ。」

 「終わるぞ、あの二人の諍いから始まって、世界が終わる。」

 『中々に、長引いたな」

 世界樹から、木肌の茶髪に、若葉の緑の瞳をした白いフード付きマントを羽織った青年が顕現する。

 そして、《泉ノ乙女》の傍らに在った長命龍エルダードラゴンが、あくまでもつまらなさそうにつぶやき人化した。

 黒い髪のエキゾチックな人間に見えるそれは、けだるげに幻視する。

 この世界の時間にしても、一万年近く前―神話の時代は二人の至高の魔法使い、《片眼王》と《歌乙女》の死によって決定的までに終わった。

 そして、二人を含むその後に死んだ《御伽噺の幽霊》も引きずられて、《御伽噺》に巻き込まれる。

 《片眼王》と《歌乙女》、そして、《戦乙女》が生まれるのに合わせて転生し、《片眼王》と《戦乙女》の諍いに巻き込まれるのだ。

 それが、《御伽噺の幽霊》だけならば世界は終わらなかっただろう。

 しかし、一種の真実ではあるが全くの事実ではない事柄によって、人族の欲望も巻き込まれ混沌の様相を見せる。


 ―――曰く、「《戦乙女》と《片眼王》が結ばれた場合、どんな願いでも叶う。」と。


 財宝の山だろうと、絶世の美女だろうと、それこそ、人の命を蘇らせることも永らえさせることもできるのだ。

 事実、二度だけではあるが、この世界では叶ってしまい、その大陸を《世界樹の翁》は沈めたこともある。

 そのせいで、今この世界では大きなお盆のような大陸が一つだけになっているのだ。

 今ここにある世界樹は地上には無い。

 切り離したまま、一つの箱庭として維持されていくのだろう。

 ・・・そして、今、この世界が滅んだ理由も其処にある。

 今生の《片眼王》側が、どちらかと言えば魔機技術に優れた大国に与し裏側から意図の糸を引き、戦争を仕掛けた。

 逆に、今生の《戦乙女》と《歌乙女》達がいた国は、魔導技術大国にして、回りの国々から慕われていたし、恨まれていた。

 あり大抵に言えば、別の世界で三国同盟だけで他の国を相手取った世界大戦の原点がここにあったと言う状況。

 それでもすさまじかった。

 《片眼王》としても、今生の前三回を無駄にして、燃料である魔晶石や砲身の材料などを備蓄するように動いていた。

 緑白赤旗の国ではなく、星条旗の国が三国同盟に入っていたとしてもすさまじかった。

 二十数国あった国との戦を自国と他にそれなりに大きな国が二つ、合わせて五つの国の連合であったとはいえ、拮抗まで持っていったのは、《片眼王》の執着のなせるわざだろう。

 もちろん、魔術大国達も戦争を終わらせようとしたが、とたん、技術大国は特攻などの命を顧みない兵器を技術大国は導入した。

 一言で言うなら、『狂乱』。 皆が皆、狂気に飲まれていった。

 そして、今。

 大きな『それ』が技術大国を飲み込み、有縛するように世界に広がった。

 目的よりも、手段に固執してしまったが故の結末だった。

 完全に物理的ではなく、魔導的・・・精神界アストラルサイドをも破壊する目的の大爆弾。

 それの縮小版を誘爆目的に配置した。

 占い札の『塔』のように全てを破壊する為に。

 「まさしく、林檎を丸ごと食べたわけだねぇ、この世界の人間は。

  うふふ、幾ら、戦乱の狂騒と《片眼王》の執着のせいとはいえ、ほんとぉ、愚かだよねぇ。」

 突然、虚空から暗い紫の髪の青年が足を組み座った体勢で現れた。

体の線を露わにしない見えない衣装といい、胡散臭い青年に見える。

皮肉げに笑っているその顔は、《世界樹の翁》に血縁を感じる程度にはよく似ていた。

 「そう思わないかなぁ、《翁》?」

 「・・・否定はしないよ、《占い師》。

  人間には、精神界アストラルサイドは早かったようだね。」

 「世界は終わるよぅ?

  どうしようもないぐらいに完膚完璧なまでにぃねぇ?」

「そうだな、直に此処も崩れる。」 お互いに視線を交わそうともしない。

 あくまでも、《翁》はどこまでも苦々しく。

 あくまでも、《占い師》は機嫌良さそうに。

 予定調和のような茶番会話を重ねる。

「ねぇ、《翁》。

  万物は流転する、厭が応も無く、水のように流転するんだよぅ、《歌乙女いもうと》達もね。

  消えて良いのぅ、《翁》。」

 「・・・・・・」

 「ならば、どうしろと言うのだ、《占い師》。」

 「ワタシが、引き受ける、そう言ったらどうするぅ?

  維持するだけなら、ワタシが存在するだけの空間を造っても、向こう数万年は保つよぅ?」

 「・・・・・・・・・・・・正気か?」

 「モチロン。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・・・・・」

 またしても、《翁》はどこまでも苦々しく。

 またしても、《占い師》は機嫌良さそうに。

 視線すら交わさず、回答を待つ沈黙が満ちる。

 《泉ノ乙女》達は二人に気圧される様に言葉を紡げない。

 「・・・頼んだ。」

 「うん、頼まれたよぅ、兄上。」

 そうして、《世界樹の翁》も他の二人もその場から消える。

 ただ、一人《占い師》は、その世界の最期を最後まで傍観するのであった。

 終わるのその瞬間まで。

 ただただ、伝う意味の無い雫を拭いもせず、《占い師》は傍観者に徹した。

 



 かくして、世界は終わりを告げる。

 

 新しい世界でも終わらずに、幾年、四季が巡り。


 たった一つのしゅうちゃくの為に、生を廻らせ。


 数千年も後に、一段落が付いた・・・のは、未だこの時からは遠い話だ。






















 《御伽噺》が、一段落して数年後。

 東京近郊、関東某所。

 ショッピングモールと商店街が不思議と共存しているそんな街。

 その商店街の一角にある『たこ焼き・ななみちゃん』に二人、歳の離れた兄弟に見えるのがいた。

 ちなみに、このたこ焼き屋、個数を三つから、料金は掛かるが具をたこにモチ・チーズ、明太ペーストを足せたり、ソースを選べるチェーン店ではない個人の店だ。

 それなりに大きく、アーケードに幾つかの長いすを並べ、幾つかの飲料を扱っていて食べれるようになっている。

 ついでに言うなら、その飲料は瓶入りだったりするからノスタルジックだ。

 話を戻そう。

 珍しく、人が居ないその店舗前のスペースに居るのは二人。

 金髪に若干色素の薄いせいかオレンジに見える瞳の小学三年かそこらの男の子。

 暗い紫色の二回折り返ししても腰を超えるのロングヘアな蛇のように笑う青年。

 顔のパーツは似て居ないが、不思議と兄弟に見える二人。

 「ねぇ、後悔してないのぅ?」

 「何を?」

 「こうなったこと。」

 「《占い師》が、重荷を背負ったのに?」

 「ふふ、ありがとう。」

 その後、店員に持ち帰りの4パックが出来てくるまで、男の子はたこ焼きを食べつつ、青年との益体も無い会話を交わす。

 なんでもない、雑談だ。

 「ディスに明後日の夜、お邪魔するからお土産リクエストあったら今日明日中によろしくって。」

 「・・・ロイヤル・スウィートの【赤毛のアン・アップルパイ】がいい。」

 「うん、それも買って行くよぅ?

  じゃあねぇ、《翁》。」

 「うん、またね、白黒はっこくおにいちゃん!!」

 「(わぉ、《翁》からお兄ちゃんって結構、キモ。)」

 かくして、彼らの物語じんせいは続いていく。







一応、前の『御伽噺』が、ギリシャ神話で言うゼウスが浮気したりな中期だとするならば、今回の話は、トロイアなんかの人界メインの後期なイメージ。



一応、《占い師》は生まれ変わらずに、戦白黒そよぎ・はっこくという戸籍を得て、現代社会に居ます。

《翁》は、生まれ変わって、裄瀬家に引き取られてます。


ではでは、次の物語にて。


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[良い点] キーワードをそのまま使わず、作者様の想像力によってそのキーワードから連想された違った角度からの考察に惹きこまれました。 [一言] 感想がとても遅くなってしまい。本当に申し訳ございません。 …
[一言] 拝読いたしました。 三ワード小説の企画に参加させていただいておりますコーチャーと申します。大変、面白く拝読することができました。大変、凝った設定で驚かされました。僕はここまで整理された設定で…
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