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見かけ  作者: 目262
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 アキオは学校帰りの電車の中でその人を見た時、運命を感じた。文字通りの一目ぼれだ。

 自動ドアの傍に一人佇み外の風景を眺めるその人の横顔に、長い栗色の髪に包まれた白く整った人形のような顔に、全身を雷に打たれたような感覚に包まれた。

 高鳴る心臓とは裏腹に身動き一つできずに、ただ食い入るように見つめていた。

 アキオは自分の降りる駅が来ると、渋々吊革から手を離して、その人の立つ自動ドアに向かった。すぐ隣を通り抜ける時に、甘い香水の香りがしたが、間近で顔を見る勇気はなかった。駅のホームに立ち尽くして、遠ざかる電車をいつまでも見送っていた。

 その後も度々電車の中でその人を見かけることになり、アキオは胸を熱くしていく。

 受験を控えた学年に、このような恋心を抱いてしまったことはアキオにとって厄介だった。四六時中その人のことが頭から離れず、学年でトップクラスだった成績は急速に落ちていった。

 中間テストの酷い出来に、友人のヒロシは見かねてアキオに声をかけた。憔悴しきったアキオは彼に事情を打ち明けた。

「堅物のお前がそんなざまになる程の相手って、一体どんな女なんだ。会わせてくれよ」

「帰りの電車で時々一緒になるんだ。今日もいるかもしれないから、付き合ってくれ」

 こうしてアキオとヒロシは同じ電車に乗り込むと、果たして問題の思い人は乗っていた。二人は相手からやや離れたシートに座って、観察することにした。

 確かに美人だ。ヒロシも一瞬息を呑む。しかし、なんて派手な格好だ。上が赤、下が黒のミニドレスに身を包み、短いスカートから伸びる長く適度な肉付きの白い脚が艶かしい。襟の部分は大きく開いて、宝石をちりばめたネックレスが大きな胸の上で星のように輝いていた。

 明らかに意図的に周囲に色気をばら撒いているような姿だ。純朴なアキオはひとたまりもないだろう。

 この様子では、相手は普通の仕事はしていないかもしれない。アキオはその事に気付いていないのか。

 それにしても……。

 ヒロシは一つの疑問を抱いていた。

 どこかで見たような気がする。初対面のはずだが、一体どこでだろう。気のせいか……。

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