第6話 魔神対鳥神
2013年6月26日午前1時19分、東京都港区内。とある黒の高級外車が深夜の公道を走っていた。中に乗っているのはとある20代の衆議院議員の男性。まだ若手の衆議院議員でクリーンな政治、明るく正しい日本の未来を目指して日々躍進している。そんな彼は近々、アニメやゲーム、漫画などの二次元創作物を厳しく規制する法案を大物議員に持ちかけようとしていた。彼は正義感が強い熱血漢で学生時代はスポーツに明け暮れていた好青年でもあった。しかし、彼はアニメやゲーム、漫画などの二次元創作物に関して嫌悪感を抱いており、同時にそれらをこよなく愛するヲタクの事も嫌っていた。ヲタクは犯罪者予備軍で抹殺すべきであり、子ども達の健全な育成と日本の未来の為には二次元創作物を規制する他ないと思っていたのだ。
「先生、いよいよ明日ですね」
「あぁ、これで日本の未来も良くなるさ!」
しかし、そんな彼を嫌っていた人物が存在していた。当然、ヲタクからの評判もよろしくない。今や日本のアニメや漫画は世界に通じる日本の文化になりつつある。それを厳しく規制しようだとヲタクやネットの住人達が許すハズがないのだ。とはいえ、最近では昔と比べてアニメの表現が規制されてきており、それを望んでいる人々もいるのも確かである。そんな人々からの期待に応えるべく今まで頑張って来た彼にこれから悲劇が起ころうとしていた。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
「何だ、どうしたんだ⁉」
「う、後ろから化け物が‼」
「な、何だって⁉」
突然、車が急停止してしまう。車に乗っていたのは70代の運転手に若手の議員、まだ若い秘書の3人である。その運転手が言うには化け物が後ろから飛んで来たので危険を感じて急停止したのだという。議員がドアを開けて外を見ると月をバックにその化け物は浮遊していた。その白い化け物…いや、彼の名は殺翔鳥神・天零こと河上彦斎。この世に降臨せし最凶の殺人鬼である。
「なっ?お、お前は一体⁉」
「降臨!」
「は、早く警察に…!」
「させるかよ」
「ぎゃあっ‼」
天零が地面に着地すると運転手は携帯電話を手にして警察に通報しようとするが、天零はすかさず腰から翔蘭を引き抜き、そのまま運転手を斬殺してしまう。まさかの事態に恐れおののく2人。対する天零は翔蘭に付着した運転手の血を振り払い、その先端を議員に向ける。あくまでも運転手はついでに殺したようだ。
「きゃああああっ‼」
「あぁ!何で、何でこんな事を‼狙いは何だ⁉」
「狙いはアンタだよ。アンタがアニメや漫画を規制しようとするからこうなるんだ」
「何?それの何が悪い!」
「困るんだよ、アニメや漫画とか厳しく規制されたらさ。今や日本が世界に誇るヲタク文化をアンタは潰す気か?」
天零はゆっくりと議員に近づき、あっさりとその目的を語る。天零こと彦斎はそのアニメや漫画の聖地たる秋葉原に住んでいる。彦斎自身はそこまでヲタクではないが、規制の煽りを受けて秋葉原が寂しくなるのは住民としては度し難い話なのだ。勿論、今回の依頼はちゃんと依頼人が存在するが、彼の抹殺は個人的な感情も入っているようだ。しかし、議員の決意は固かった。
「何が世界に誇る日本の文化だ!過激な暴力描写やお下劣な性描写、これらが原因で犯罪が起きるし、子供達の健全な育成に悪影響が出るんだ‼アニメや漫画なんかあるから引きこもりになるんだ、ニートになるんだ‼」
「オイオイ、それは言い過ぎだろ」
「どうせお前もヲタクなんだろ?ヲタクは犯罪者予備軍…この法案が通ればヲタクを一掃出来る。日本の明るい未来や子供達の健全な育成の為にアニメや漫画はちゃんと厳しく規制しないといけないんだ!俺はやるぞ!皆がそれを望んでるんだ!」
「悪ィ、そんなの俺は望んでないんだよ!」
「先生!きゃああっ…!」
「あっ、ああっ‼」
本物の議員と激しく論争するも議員の気持ちは変わらなかった。むしろ強まってしまったかもしれない。彼の中でますますヲタク文化への嫌悪感が強まったのは間違いないだろう。これ以上の論争は無意味と感じた天零は議員を殺そうとするが、それを秘書が庇ってしまう。庇った秘書は背中を翔蘭でざっくり斬られて死亡する。しかし、斬った天零からすればただ単に死ぬ順番が変わっただけという感覚でしかなかった。
「庇われるなんて随分慕われてるんだな。まぁ、死ぬ順番が変わっただけだけどな」
「な、何でこんな…!誰に頼まれたんだ⁉」
「名前は言えない約束だけど、アンタと同じ政治家の先生だよ。前金として500万、報酬として1000万出してくれんだとさ」
「そ、そんな…!」
「アンタ、政治家には向いてないよ。クリーンな政治を目指してるって言ってたけど、もっと現実見ろよ。理想をほざくのは誰だって出来るんだからな。生意気にもアニメや漫画を規制しようとするからこうなるんだ」
どうやら彦斎に議員の殺害を依頼したのは彼と同じ衆議院議員のようだ。しかも、名前を出す事も許されない程の大物らしい。報酬も今までの殺害の報酬なんて目じゃない程の高額である。勿論、基本的に頼まれれば依頼は遂行するのだが、今回は自分にとっても規制の法案が成立したら困るので引き受けたようだ。一方の議員は天零にクリーンな政治など無理だと言われてショックを受ける。今までまっすぐ進んで来た道をこんな奴に否定されてしまったのだから。
「そんな…そんな!」
「もういいや、じゃあな」
「うわああああっ‼」
天零は翔蘭を上段に構えてすかさず振り下ろして議員を殺害、議員は袈裟斬りに斬られて派手に血飛沫を上げながらゆっくりと冷たいアスファルトに倒れ込んで死亡する。飛び散った血は天零の美しい白銀の鎧を真っ赤に染めるも天零はすぐに鎧を解除し、元の河上彦斎の姿に戻る。鎧を装着すれば返り血を浴びて着物を汚す心配はないし、顔を見られて第三者に正体が露見される可能性も極めて少なくなる。元々、自ら望んで手に入れた力ではないが、自分なりにその使い方を見出して来ているようである。
「ふぅ、いい仕事だったな~。これで1000万出してくれんだから安いもんだな」
「お見事でしたわ♫」
「…………誰だ?」
アニメや漫画を厳しく規制しようとした愚か者暗殺の依頼を達成し、後々1000万もの報酬が入るので、ちょっと上機嫌になっている彦斎に突然少女が声をかける。振り向くとそこにはいかにも上流階級のお嬢様といった身なりの少女がいた。今までの現場を見られていたのか?そういうのには割とよく気が付くタイプだが、彼女に関しては全く気づかなかった。彦斎としてはさっきの現場は見られては困るので、場合によっては彼女を殺す事も考える。
「ふふっ、そんな怖い顔をなさらないで下さいませんか?折角の綺麗なお顔が台無しですわ」
「見てたんだな…場合によってはアンタを殺す事になるぞ?」
「落ち着いて下さい。わたくしは貴方に依頼をしに参ったのです。お話を聞いて下さりませんか?」
「依頼ねぇ…いいだろう。話は聞いてやる」
彦斎の軽い脅しにも全く動じず、ニコニコしたままの彼女は彦斎に依頼をしようとする。表情を全く変える事なく、ついさっき人を殺した殺人鬼と会話するのは並大抵の事ではないだろう。肝っ玉が据わっているのか、それとも恐怖心が欠落しているのか、いずれにせよ只者ではないのは間違いない。
「この方を始末して欲しいのです」
「コイツね、理由は?」
「彼はこの世界に1番不要な邪な存在です。彼のせいで人生を狂わされた人も大勢います。彼がいなくなればいいのに…それは殆どの人々がそう願っていますわ。わたくしはその皆さんの願いを叶えてあげたいのです」
「そんなに恨まれるような事をしたのか」
少女からターゲットの写真を受け取った彦斎は理由を聞いてみると、少女はまるで世界中の人々の願いを代弁するかのように理由を述べる。パッと見、悪役っぽいなとは思ったが、言うほど悪い事をしているようにも見えなかった。第一、彼女から『世界で1番不要な邪な存在』なんていう大層な評判がつけられているのだ。そんな風に言われるからには何かしでかしたのかもしれない、彦斎は写真の男に興味を抱き始めた。
「お願いしていただけますか?世界の恒久なる平和の為に貴方の力が必要なのです」
「わかった、そんなに言うならやってやる。で、いくら出すんだ?いくらでもいいが…」
「では、前金としてこれだけ出しますわ」
「………は?」
そこで彦斎は報酬の話に移る。彦斎は基本的に報酬の額はそこまで重視しない、全て依頼人の出す額に委ねている。例えそれが無料だろうと文句は言わないが、出来れば金額は高い方が嬉しい。それが日々の生活費となっているのだから。議員暗殺の報酬は合計で1500万円と今までで最高クラスの報酬だった。少女は前金として何時の間にか持っていた銀色のケースを開けて中を見せる。その金額は恐ろしいものだった。
「………いくらだ?」
「前金で3億、成功した暁には10億お支払い致しますわ。本当はこれでも足りないぐらいなのですよ」
「いや、ダメだろ。いくら何でも…」
「では、お願いしますわ♫」
少女はなんと前金として3億円、暗殺に成功すれば10億も出すと言ってきた。あまりにも破格すぎる報酬額だが、彼女が言うにはそれでも足らないらしい。ますますこのターゲットが一体何なのか気になるが、あまりにも破格すぎる報酬額に何か裏があると思い、彦斎はあえて断ろうとするが、少女は前金を彦斎に渡すと突然姿を消してしまう。前金を返せなくなった彦斎はやむなく依頼を受けざるを得なくなってしまった。
「オイ!っていねぇ…これ、どうすんだよ」
「どうかした?」
「おぉ、恵美か」
そこに依頼の後始末をする為に天川恵美が駆けつける。かつては第一線で活躍してした伝説の切り裂き姫も今では彦斎の依頼のサポートにまわるのが常である。今回は相手が衆議院議員という事もあり、恵美だけでは事後処理は出来ない。実は暗殺業界にはこうした事後処理を専門とするチームが存在するらしく、恵美は彼らを呼んでこの依頼の事後処理を任せようとしていた。
「奴らはいつ来るんだ?」
「もう少しで来る」
「そうか」
「そのケースは何?」
「次の依頼の前金で3億だとさ」
そう言って彦斎は先ほど少女から強引に受け取らざるを得なかった前金の3億円が入ったケースを恵美に見せる。基本的に冷淡な恵美だが、さすがに食い入るように3億円を見つめる。普段3億円を目にする機会なんてそうはないのだから当然だろう。これだけあれば当分依頼を受けずに遊んで暮らせるのは間違いないが、意外とすぐなくなりそうではある。主に彦斎のワインや着物に消えてしまうのだ。
「誰を殺るの?」
「どうやらコイツらしい」
「誰?」
彦斎は恵美に先ほど少女から渡されたターゲットが写っている写真を渡す。何とその写真に写っているターゲットとは魔神ヴォルケニックス・グランドバアルこと柳生但馬守宗矩だった。つまり彦斎は無謀にもこの魔神の暗殺を依頼されてしまったのだ。勿論、彦斎は宗矩が誰かなんてこの時は全く知らないわけだが。
「そういや、名前言わなかったな」
「悪そうな奴」
「だろ?まぁ、サクッと片付けてやるか」
6月28日午後1時56分、東京都新宿区・レストラン“フライングデビル”。この日は柳生但馬守宗矩にとっては何としても忌避したい出来事があった。そう、愛娘である柳生花梨が通う新宿区立新宿第七中学校の三者面談である。宗矩はこういう面談が非常に苦手なのだ。最強の魔神と謳われた彼らしくないが、どうもこういった堅苦しい話は苦手だったりする。花梨の事で何か言われるのが嫌というわけではないが、我が家の事情に踏み込まれるのが嫌な節もある。宗矩はどうせ暇だろうと警視庁超常犯罪捜査課の神楽坂葵を呼んで愚痴を零していた。
「どうすればいい?」
「私に質問するな。いつも言ってるだろ?お前なんて担任にぐちぐち何か言われればいいんだ」
「それが嫌なのだと何度言った事か…」
実は三者面談の前に宗矩は必ず葵を呼んで毎回毎回同じような事を言っていた。葵は超常犯罪捜査課課長という閑職に追いやられてしまって毎日が暇なので、こうして宗矩の頼みに応えてやっているのだが、言う事はいつも同じである。葵としてここぞとばかり宗矩を責められるので、密かに楽しみにしているイベントでもあった。
「行かなくていいのか~?花梨から『パパなんて大ッ嫌い‼』とか言われるぞ~?」
「それは困るし、今朝花梨に…」
『パパ、今日は三者面談だからちゃんと来てね♫花梨、パパが来てくれるのを楽しみにしてるから♫』
「…とニッコリ笑顔で言われてしまったのだ。普段はあんなニッコリ笑わないのに…行かないわけにはいかない」
「何かあざとくなったな、花梨」
勿論、花梨は宗矩が三者面談嫌いなのを熟知しているので、今朝は既に対策をして来ていた。それが宗矩にニッコリ笑顔で来てくれるのを期待する旨の発言だった。宗矩が娘の笑顔のお願いを断るわけがないと踏んで仕掛けた花梨の作戦なのだ。そんな花梨を葵はあざとくなったと思い始めていた。思えば、花梨はとびっきりの美少女で声も可愛い。ちょっと男を虜にする術を覚えたら、さぞかし魔性の女になりかねない。しかし、それはそれで可愛いのでアリだと葵は思っていた。
「あざといか?」
「お前は気付いてないだけかもしれないが、花梨は結構可愛いんだぞ?あざとくもなるさ。将来はきっと小悪魔になるぞ♫」
「上手い事言ったつもりか?」
「てへっ♫」
ちょっと上手い事が言えた葵はウインクしながら舌をペロッと出す。グラマラスな美女がこんな可愛い事をしたら間違いなく萌えるだろうが、残念ながら普段の素行不良な葵を知っている宗矩は萌えなかった。アホな事をしてるだけにしか見えないようだ。ただ何も知らない人が見たらギャップ萌えで萌えてくれるだろう。ギャップが激しすぎるのが難点だが。
「止むを得ない…行くか」
「おぉ、行け行け~」
「卿も来るんだ」
「何っ?私も行くのか⁉」
「当然だ」
午後3時27分、新宿区・区立新宿第七中学校校門前。河上彦斎と天川恵美は柳生但馬守宗矩暗殺の為に愛娘の花梨が通うこの中学校の前に来ていた。謎の少女から依頼を受けてから丸2日、彦斎は宗矩の素性を調べていたが、実の所は殆どわからなかった。最大の原因は宗矩が正真正銘本物の悪魔故に人間よりもはるかに寿命が長いので、人間としての経歴なんて書きようがなく、また周囲にその事を隠している為である。勿論、彦斎はその事を知らない。因みに彦斎と花梨は先日、秋葉原で起きた事件で知り合っており、宗矩を殺す事は花梨のたった1人の父親を殺す事でもあった。
「結局、ターゲットの事はわかった?」
「ダメだ、経歴も生年月日も出身も全然わからなかった。コイツ、本当に何なんだろうな?」
「でも今日は娘の三者面談」
「結婚はしてないようだ。娘は10年前にフランスで両親を亡くし、アイツが引き取ったらしい。しかも、まさかアイツの娘がこの前の娘だったとはな…世間って狭いねぇ」
「10年前のフランスって…アレ?」
「あぁ、あの事件で両親を亡くしたらしい」
今から10年前の2003年フランス・パリ、人類はいまだかつてない脅威にさらされてしまった。それは各メディアで大きく取り上げられ、人々の記憶に刻まれた正に悪夢のような出来事であった。犠牲者も多く、日本人も犠牲者となってしまった。その中には花梨の実の両親も含まれていた。この事件以降、宗矩は花梨を引き取って自分の娘として育てる事になるのだが、その事件に関しては何も語ろうとしなかった。宗矩にとって相当苦々しい出来事だったらしく、周囲の人間もこの事件に関して触れる事はタブーにしていた。
「来たみたい」
「やっとか…って、アイツは」
「どうしたの?」
「何で警察の姉ちゃんまでいるんだよ…」
ふと、校門に2台のバイクが進入した。1台は漆黒のDN-01、宗矩の愛馬ならぬ愛車だ。もう1台の真紅の派手なカラーリングのバイクは葵の愛車である。葵のバイクは地球のバイクではなく宇宙警察時代から使い続けている水陸両用の専用カスタムバイク“ガーベラマリナー”という。因みに彦斎と葵は花梨と同じく先日、秋葉原で起こった事件で顔馴染みとなっていた。
「どうするの?」
「あの姉ちゃんからアイツを引き離してさっさと殺した方がいいな。いってくる」
「いってらっしゃい」
そう言って、彦斎は早急に依頼を果たす為に第七中学校に潜入していく。一方、バイクを駐車場に停めた宗矩と葵を花梨が出迎えていた。花梨は満面の笑みで2人が来てくれた事に感謝する。今朝、ニッコリと来るように念を押してお願いしたので来るのは当然だが、もしそれでも来なかったら花梨はしばらく宗矩と口を利かないつもりだったようである。一方、そんな花梨の満面の笑みを見た宗矩は苦笑する。さっき葵が言ってた事は間違いないのかもしれない、そう思った。
「来てくれたんだね、パパ!花梨、嬉しい♫」
「あ、あぁ…」
「あっ、葵たんも来たんだ」
「まぁ、私様はいつも暇だしな」
「じゃあ、行こっ!」
満面の笑みの花梨、対照的に浮かない表情の宗矩、キョロキョロと校内を見渡す葵。この3人は目的地である花梨の教室に向かっていた。そして、その後を彦斎がつけていた。人混みの中でも一際目立つ着物姿で普通に校内を歩いているが、今日は三者面談である。当然、他のクラスの親も多数来ており、極端に目立つわけではなかった。彦斎は隙を見ては宗矩を彼女達から引き離し、屋上にでも連れ出して暗殺するつもりだ。
「…そろそろ殺るか」
「ん?手紙か……済まぬ、葵。後は任せる!」
「オ、オイ!どこ行くんだ‼」
ふと宗矩は自分の右手にいつの間にか手紙が握られている事に気付き、その手紙を読む。手紙には『屋上にて待つ』と書かれていた。勿論、これを書いて宗矩に渡したのは彦斎である。誰が何の為に渡したのか全くわからないが、宗矩は気になって後を葵に任せて花梨に気付かれないようにこっそり走り去る。一方、花梨は自分のクラスである2年A組の教室に辿り着くが、いつの間にか宗矩の姿がなく葵しかいない事に気付く。
「ここだよ、って…パパは?」
「あっ、いやっ、や、野暮用が出来たって…」
「ふぅ~ん、つまりバックれたんだね」
「そ、そういう事だから…じゃあ…」
花梨は怒っていた。露骨に激怒したりしないが、声色や何より冷たい眼で葵を見ていた。せっかく来たのに急にいなくなったので怒るのも無理もない。花梨が怒っているのを察した葵はこっそり逃げようとするが、そんな事を許す花梨ではなかった。花梨は逃げようとする葵の腕をニッコリ笑みを浮かべながら掴む。ニッコリ笑みを浮かべてはいるが、眼が笑っていない。
「どこ行くのかな?」
「ひいっ⁉」
「パパがバックれちゃったもんね。葵たん、責任とってくれるよね?」
「いや、私は…ほら忙しいし…」
「さっき暇だからって言ってたよね」
葵は何としても逃げようとしたが、花梨に痛い所を突かれてしまった。そう、葵には全く用事がなく暇なのだ。窓際部署の超常犯罪捜査課には仕事はまわってこないので、毎日が暇で暇でしょうがない。今回だって暇だから興味本位で来たのだ。そんな葵に仕事がまわってきた。バックれた宗矩に代わって三者面談に出る事だ。親でも何でもないが、葵も花梨とはそれなりに長い付き合いである。担任には花梨が上手く言ってくれるようだ。こうして葵はまさかの三者面談へ出席する事になってしまった。
「あ、アレはだな…」
「大丈夫、先生には上手い事言っとくから。だから、お願い♫三者面談に出よ?」
「は、はい…」
午後4時1分、区立新宿第七中学校・屋上。手紙に書かれた場所に花梨との約束をすっぽかして柳生但馬守宗矩はのこのことやって来た。そこにただならぬ雰囲気を漂わせて河上彦斎が待ち構えていた。宗矩からすれば彦斎はただならぬ雰囲気の着物姿の美女にしか見えなかった。そう見えても止むを得ない外見なのだから仕方がない。
「卿か?我を呼んだのは」
「あぁ、俺だよ」
「……男か」
「そういうわけでじゃあな‼」
彦斎は宗矩を見ると早速鞘から刀を引き抜き、そのまま素早く接近して宗矩を袈裟斬りにする。普段はちょっとした会話をするぐらいの余裕をかませるのだが、今回は相手が全く得体のしれない奴という事もあって、会話をしてやる余裕もなく速攻で決着をつけようとする。しかし、彦斎の刀は宗矩の身体を切り裂かなかった。何と宗矩が片手で真剣白刃どりで刀を止めていたのだ。
「な、何ッ⁉」
「いきなり斬りかかるとは無礼な奴だ、何者だ?」
「誰が言うかよ!ふんっ!くうっ…!」
「愚かな奴、ふん!」
「ぐああっ!」
まさか自慢の斬撃が片手で止められてしまった事に動揺しつつも彦斎は刀を動かそうとするが、宗矩の片手は刀を離さなかった。宗矩は彦斎に空いている左手を向けて軽く魔力で彦斎を吹き飛ばしてしまう。吹き飛ばされた彦斎は下の階に通じる扉に激突する。これで彦斎は確信した、コイツは普通の人間じゃないと。確かにいきなりわけのわからない力で吹き飛ばされれば誰だってそう思うだろう。
「ゲホッ、アンタ…一体何なんだ?」
「それはこちらの台詞だ。卿は何者だ?」
「俺は依頼人に頼まれてアンタを殺しに来たんだ。例えばこんな風にな!」
「ほう」
立ち上がった彦斎は刀を青白く発光させて構える。この力は彦斎は変身能力を得てから発現した力の1つらしい。対する宗矩は右手で空間に穴を開けて禍太刀命を引き抜き、当然のように刀身を赤く発光させる。さながらビームサーベルやレーザーブレード、1番近いのはライトセーバーだろうか。因みに青はジェダイ、赤はシスの暗黒卿が使用する色だが、ある意味ピッタリな組み合わせであった。お互いが間合いを見計らい、激しく切り結び始めた。
「でやあっ!」
「ふんっ!」
「たあっ!」
「むんっ!」
「はああっ‼」
宗矩にかわされた彦斎の斬撃は屋上の金網のフェンスをバッサリ斬ってしまう。ほぼライトセーバーと同じなので簡単に斬れてしまうのだ。その後も一進一退の攻防が続いた。彦斎の斬撃を宗矩が大きくジャンプして避けたり、宗矩の一撃を彦斎がマトリックスみたいに仰け反らせて回避したりと激しい戦いとなっていた。因みに彦斎は刀を両手で握っているが、宗矩は禍太刀命を右手だけで振るっている。このままでは埒があかない、そう思った2人は一旦距離を取る。
「なぁ、そろそろ決着着けようか?」
「我は卿に聞きたい事があるのだがな」
「俺に勝ったら教えてやるよ、ふんっ!」
「わかった、むんっ!」
そう言って彦斎の瞳は水色に変化して刀で前を一閃、その勢いでその場で一回転して刀を鞘にしまい、一閃された空間から鎧を纏って彦斎は殺翔鳥神・天零に変身する。対する宗矩も瞳を赤くして前方に魔方陣を発生させると左手首を軽く一回転させて振り下ろし、魔方陣から漆黒の鎧を出現させて鎧を纏い、魔神ヴォルケニックス・グランドバアルへと変身を遂げる。まさかお互い変身出来るとは思いもしなかった2人は動揺した。
「降臨!」
「魔神、再臨せり!」
「なっ、その姿は…⁉なるほどな、これじゃあ億単位も出したくなるわな」
「何なのだ、その姿は?卿は一体…⁉」
「さぁな!」
天零が翔蘭は引き抜き、素早い斬撃でヴォルケニックスを攻撃する。対するヴォルケニックスも禍太刀命で反撃に出る。まさか天零は宗矩があの新宿に出現した悪魔だとは夢にも思わなかった。もしかしてあの少女は宗矩が悪魔である事を最初から知っていて、自分に依頼をしたのだろうか。天零は何だかあの少女に踊らされているような気がしてならなかった。一方のヴォルケニックスもまさか自分を殺しに来たという人間が自分と同じように鎧を纏って変身するとは夢にも思わなかった。自分と同じように鎧を纏って変身出来るのは同じ悪魔か、もしくはあの忌々しい天使どもしか知らない。しかし、彦斎は普通の人間である。何故、彼が鎧を纏って変身出来るのか?ヴォルケニックスはその答えが薄々わかったようだ。
「でやあっ!はあっ!」
「ふんっ!たあっ!」
「よっと!ここじゃあ、狭いな。下に行こうぜ!」
「何っ?待てっ‼」
何と天零は青白く発光させた翔蘭で屋上の床に丸く円を描くようにして穴を開け、そのまま下の階に飛び降りてしまう。まさか下にいる生徒や先生、保護者達も巻き込むつもりかと危惧したヴォルケニックスも後を追って下の階に降り立つ。ちょうど下の3階は3年生の教室で今まさに三者面談を行っている最中である。そんな中に天零とヴォルケニックスが降り立ってしまう。
「よっと」
「きゃああああっ‼」
「うわあああっ!」
「早く逃げろ!ふんっ‼」
「でやあっ!」
まだ中に教師や生徒、保護者がいるにもかかわらず、天零は机の上に登って翔蘭を振るってヴォルケニックスに斬りかかる。ヴォルケニックスは何とか生徒達を守りながら赤く発光させた禍太刀命を振るう。天零が机や椅子を蹴り飛ばす度にヴォルケニックスは禍太刀命でわざわざ切断し、天零の距離を詰めていく。
「そらっ!」
「ふんっ!」
「おっと、たあっ!」
「ここから出て貰うぞ、むうぅん!」
「うおっ、ぐああっ‼」
天零と鍔迫り合いに持ち込んだヴォルケニックスは圧倒的な力で天零を押し、教室の壁を突き破って廊下に押し出す。廊下にも勿論、生徒や親御さんがたくさんおり、ヴォルケニックスと天零が現れると悲鳴を上げて一目散に逃げ出していった。しかし、そんな事は天零にとってはどうでも良かった。今の天零はただヴォルケニックスと命のやり取りがしたいだけである。それを邪魔するギャラリーがいるなら即効斬り捨てるつもりだ。
「きゃああああっ‼」
「ば、化け物だぁ!」
「あ、あの時の悪魔だ‼」
「くっ…ぬわあっ!」
「アッハッハッハッ!でやあっ!」
天零は楽しくて楽しくて仕方がなかった。初めて戦い甲斐がある奴と出会えたのだ、もはや少女からの依頼なんてどうでも良くなっていた。それを証拠に戦ってる最中に笑いだし始めたのだ。一方、ヴォルケニックスはそんな余裕はなかった。実のところ、ヴォルケニックスは天零相手に本気で戦っているわけではない。と言うより、人間界に災臨してから
基本的に力を大幅にセーブして戦っているのだ。もし本気で戦ったら確実にこの第七中学校は廃墟になってしまうだろう。しかし、今は戦いに関係ない第三者の人間が大勢いる状況なので、より力を抑えて戦うしかなかった。とはいえ、既に机や椅子や教室の壁を壊してしまったが。
「ふんっ、たあっ!」
「はっ、でりゃあっ!」
「いい加減諦めて我が前から去れ」
「はっ、誰が帰るかよ。せっかくこんな強い奴と戦えるんだ、最後まで楽しませろよ‼」
その頃、宗矩がいなくなったせいで三者面談に参加するハメになった葵は花梨と共に教室の廊下に用意された椅子に座って俯いていた。その隣には花梨が座っている。葵は妙な緊張感に襲われて萎縮し、いつもの元気をなくしていた。豪放磊落で自由奔放な姉御肌の葵はどこへやら、今の葵は生まれたての子鹿みたいにビクビクしながらその時が来るのを待っていた。
「うぅ…帰りたい、私は早く帰りたい…」
「帰ったら葵たんの事も嫌いになるから」
「嫌だ!それは困る」
「た、助けてくれええっ!」
「ん、何だ?花梨、ちょっと見てくる」
「あっ、葵たん!」
そこで突然、悲鳴が聞こえて来たので、葵はすぐに仕事モードに切り替わり、花梨を置いて悲鳴が聞こえた方に向かって走り出す。花梨は何か起きたのかと思い、ちょっと不安になる。こんな時、宗矩がいてくれたらなと寂しくもなった。しかし、この時花梨はまだ知らなかった。悲鳴の原因の一つがその宗矩である事を。
「何だ!どうした?」
「上の階からば、化け物が!うわあああっ!」
「なっ、宗矩!」
「ぐっ!葵か⁉」
「げっ、警察の姉ちゃんかよ!」
悲鳴が聞こえた方向に向かった葵は階段の前でビクビクと恐怖に震える男子生徒を発見し、話を伺う事にした。男子生徒は事情を説明しようとするが、上からその元凶が降りて来たので一目散に逃げ出してしまう。その元凶たるヴォルケニックスと天零が階段の上から激しく斬り合いながら階段を下って来たのだ。階段の壁には無数の切り傷が生々しくあり、激しい戦いを物語っていた。
「何をやってるんだ、こんな学校で!」
「葵、今すぐ花梨達を避難させろ!」
「わ、わかった!」
「邪魔なギャラリーには退散してもらうってか?そうだよな、もっと楽しくやろうぜ!」
「黙れ!」
葵が走り去った後もヴォルケニックスと天零は激しい剣戟戦を繰り広げていた。避けた拍子に水道の蛇口を斬って水が溢れたり、ガラスが割れて壁が傷ついたり、恐怖で混乱した生徒や親、教師達が逃げ惑う光景が広がっていた。そんなのお構いなしで戦い続ける2人に対し、葵は市民の平和を守る警察官としての責務を果たす為に東奔西走し、人々に学校から出るように呼びかけ続けていた。
「警察だ!ここは危険だ、全員校舎から出て大至急避難するんだ!急げ‼」
「葵たん!どうなってるの?」
「今、宗矩が校舎の中で変な怪人と戦っていてな。花梨も危ないから早く逃げろ」
「うん!」
「さて、私もやるべき事をやらないとな」
花梨を避難させると葵は携行している愛用の拳銃を手に取り、騒動の中心へと向かって行く。葵の拳銃は一般の警察官に支給されるようなリボルバータイプではなく、自分で用意したオートマチックである。というか、こういう事件が起きる事を想定して携行していたとはいえ、こういう場に普通に拳銃を持ち込んでいたのだから、ある意味1番危険な警察官と言えよう。その頃、ヴォルケニックスは天零は廊下で激しい剣戟戦を繰り広げていた。もはや誰も入り込めない世界がそこにあった。
「てやっ!ふっ、たあっ!」
「むうぅん!とわあっ!」
「やっ、でやあっ!」
「ぐおおっ!」
激しく火花を散らす禍太刀命と天零。お互いに光を纏っているので、武器が破損する事こそないが、壁や机に椅子に窓ガラスなどを切断してしまっているので、周囲への被害は甚大だ。ふと、天零の攻撃に押されたヴォルケニックスは壁を突き破ってしまい、なんと職員室に入ってしまう。その後を追い、天零も雑然とした無人の職員室に入る。そこで天零は何処からか羽の装飾が施されたスナイパーライフル“八咫烏眼”を左手に持つと引き金を引き、八咫烏眼からビームを発射してヴォルケニックスを撃つ。
「ふふん」
「そんな物まであるとは…!」
「狙い撃つぜ、はあっ!」
「くっ、むう!」
狙い撃つとは言いつつ、本来のスナイパーライフルの使い方をせず、片手で引き金を引いて銃撃する天零。とは言え、その狙いは完璧でヴォルケニックスは禍太刀命を振るって防ぐのがやっとだった。天零は職員室内を自由に動き回りながら八咫烏眼で銃撃する中、ヴォルケニックスは左手で空間を叩き割って射抜神命を手に取り、逆に銃撃する。
「ふんっ!」
「おっと、てやっ!」
「ぐおっ、むうぅん!」
「くそっ、はあっ!」
ヴォルケニックスは左手の射抜神命で撃ち、右手の禍太刀命で防ぐ。対する天零は左手の八咫烏眼で撃ち、右手の翔蘭で防ぐ。職員室内で激しい銃撃戦が展開されていた。八咫烏眼のビームは教師が使っていたノートパソコンに穴を開け、射抜神命の銃撃はたった一撃で職員室のホワイトボードを大破させる。たった一撃で並の怪人を撃破出来る程の威力を誇る射抜神命に警戒し、天零は翔蘭で防ぐより避ける方針にシフトする。そのせいで職員室内は甚大な被害を被る事になるのだが。
「オイ!こんな所で派手にドンパチするな‼」
「ならば外に出ればよかろう、来い!」
「オイ、押すな馬鹿!ぐわああっ!」
「オイ!まだ外には子供達が!」
そこに拳銃を構えた葵が職員室に突入して来た。あまりの職員室内の被害を見て、職員室の外に出るように呼びかける。それを聞いたヴォルケニックスは一気に距離を詰めて天零に接近して押し出し、窓ガラスを突き破ってベランダから何と校庭に2人諸共落下して行く。しかし、校庭には校内から避難して来た生徒や親、教師達が集まっていたのだ。何とも最悪の状態で2人は校庭に降り立ってしまった。
「パパっ!」
「花梨⁉何という事だ!」
「ったく、せっかく外に出たのに邪魔者ばっかりじゃねぇか!」
「動くな‼」
外には花梨達の他に葵の連絡を受けて警視庁の機動隊が校庭に展開されていた。機動隊員はそれぞれ武装しており、いつでも攻撃出来る態勢になっていた。校庭に白い怪人と新宿に現れた悪魔、それを包囲する機動隊、そんな重々しい雰囲気に呑まれている花梨達一般人。さっきまで嬉々として戦っていた天零は邪魔者が多すぎたのか気分が萎えてしまったらしく、立ち上がると構えを解いて翔蘭を鞘にしまうとゆっくりと機動隊に向かって歩き始める。
「止まれ!止まらなければ撃つ‼」
「はぁ…何か萎えちゃったな、また会おう」
「撃て!」
「はっ!」
機動隊員の制止を無視した天零に機動隊員が一斉射撃を開始するが、天零は背中の翼を広げて飛翔し、機動隊員や生徒達を大きく飛び越えてそのまま姿を消してしまう。突然の退場に呆気にとられるヴォルケニックスだったが、次の標的は自分である事をすっかり忘れていた。そんなヴォルケニックスに石ころが飛んで来た。投げたのは男子生徒だった。
「ん?」
「で、出てけ!」
「そうだそうだ!ここから出て行け!」
「アンタがいたら迷惑なのよ‼」
「皆さん、下がって!」
勇気ある男子生徒に続き、ヴォルケニックスに次々と罵声を浴びせる一般人達。かつて新宿で巨大化して戦った時と全く同じ状況だった。そんな様子を花梨は今にも泣きそうになってただ見つめる事しか出来なかった。目の前で父親が人々に罵声を浴びせられて何とも思わない娘はいない。いくら悪魔であっても花梨にとってはたった一人の父親なのだから。やがて花梨はその罵声に我慢出来なくなっていた。
「………やめてよ………」
「出てけ!出てけ‼」
「…やめてよ…やめてよぉ…」
「撃てぇ!」
「ぐっ!」
とうとうヴォルケニックスに機動隊員が一斉射撃を始め、機動隊員の攻撃に人々は歓声を上げて喜んだ。勿論、ヴォルケニックス自身に全くダメージはない。人間が作った兵器如きでは決して死ぬ事はないからだ。しかし、身体にダメージはなくとも心に傷が刻み込まれていく。そこに一斉射撃に焦った葵が駆けつけて一斉射撃を中止させる。
「よせ!攻撃は中止だ、馬鹿者‼」
「しかし…」
「奴はあの白い化け物から人々を守って戦ったんだぞ⁉それなのに一方的に攻撃するなど許されるわけないだろ!」
「神楽坂警視、我々は人々の安全を守るのが第一です。あの化け物は結果的に人々の平和を乱す存在、ならば人々を守る為に攻撃するのは当然の事。あなたも警察官ならわかるでしょう」
「ぐっ…!」
機動隊員に論破されて葵は何も反論出来なくなってしまった。そんな中、人々からの罵声に耐えかねたヴォルケニックスは漆黒の翼を広げて飛翔し、第七中学校から去って行ってしまう。人々がヴォルケニックスを追い払った事で歓声を上げて喜ぶ中、葵は宗矩に対してフォローも何もしてやれなかった無力感に、花梨はただ悪魔だからとヴォルケニックスを侮蔑する人々に深い憤りと憎しみを抱えて立ちすくむしかなかった。
「やったぁ!」
「宗矩…すまない…」
「また悪魔を追い払ったぞぉ!」
「パパ……」
その頃、人々の歓声で賑わう第七中学校の校門前に彦斎に宗矩抹殺を依頼した謎の少女の姿があった。彼女はニッコリ微笑み、歓声で賑わうこの状況に満足している様子だった。しかし、彼女の依頼は彦斎による宗矩抹殺だが、これは結果的に失敗している。何故、彼女はこんなにも満足そうなのか。
「ふふっ、思ったとおりでしたわ。所詮私達になり損なった誤った進化を果たした愚かな人間がヴォルケニックス・グランドバアルを倒す事など出来なかったわけですね」
すると彼女は全身を淡い光で包み込み、何処からか現れた鎧を身に纏うと何とも美しい姿へと変身する。背中からは天零と同じように純白の美しい翼、風になびく桃色の髪、彼女の名はマリアフォキナ・エンジェルミナス。魔神“ヴォルケニックス・グランドバアル”に相対するように彼女は本物の天使であり、そしてこの騒動の黒幕である。
「これで皆さんの中に改めてヴォルケニックスを憎む強い正義の心が生まれました。やはり最後に勝つのはわたくし達正義の心を持った天使なのですよ、醜い魔神様」
何と彼女は最初から彦斎が宗矩に勝つ事は出来ないとわかってて依頼したのだ。彼女の思惑通りに彦斎と宗矩は戦い、人々の前でそれを行わせる事で人々にヴォルケニックスを憎む心を持たせて罵倒させ、精神的にヴォルケニックスを追い込んだのだ。結果、彼女の掌の中で宗矩も彦斎も人々も踊らされたわけである。こうして人々は更にヴォルケニックスを憎んでいくだろう。ヴォルケニックスを葬る為、彼女達天使の暗躍はこれからも続いて行く…
こんばんわ、エンジェビルですo(^▽^)o
ようやく第6話を更新出来ました(^-^)/今回は少しずつ話が進んだ感じがしますね。色々詰め込んだ感もしなくはないですが…
冒頭は何と国会議員を天零で暗殺する彦斎でした。相変わらず容赦ないですf^_^;)今のご時世、国会議員を暗殺しようという奴は彦斎ぐらいなものでしょう。
メインはやはり宗矩vs彦斎ですね、そこはもう力入れて書きましたよ(^-^)/イメージとしてはまさにスターウォーズですがf^_^;)学校の中をあちこちぶっ壊しながら戦ったので激しさは伝わったんじゃないかと思います(^-^)/そういえば、今回初めてヴォルケニックスが夜以外に登場しましたねf^_^;)いつも夜に変身して戦っているので。
そして第2話以来、人々から罵声を浴びせられた挙句、機動隊員に攻撃されるヴォルケニックス。今回は近くに関係者がいましたが結局止められなかったパターンですね。多分、花梨が1番傷ついたでしょう。
最後に黒幕である天使・マリアフォキナが初登場(^-^)/色々気になる言葉を言いましたが、まだまだ謎は多いですf^_^;)
○マリアフォキナ・エンジェルミナス(ICV:田中理恵)
今回から初登場した正真正銘の新キャラで天使です(^^)そして宗矩の敵である事は間違いないですねf^_^;)まだ本格的に物語に関わるわけではありませんが、こんな奴等が暗躍してるんだよというアピールにはなったと思います(^-^)/イメージキャストの田中理恵さんはご存知プリキュアでしたし、ガンダムだとラクスとミーアでお馴染みですね(^^)結構、ピッタリだと自分では思いますね(^-^)/
さて、次回は不死鳥シリーズからのカムバックキャラが初登場しますよ(^^)お楽しみにo(^▽^)o
ではではm(_ _)m