8 師匠の紹介(ボケてみたら怒られた)
3歳児とは思えぬ「肝っ玉」www
父との面会を終えて三日後、俺は今教会へ向かうべく馬車に乗っている。
メンバーは前回と同じ、母上とマーサ。
それとなぜか、サスカス兄が同行していた。
「母上、申し訳ございません。付き合わせてしまいまして・・・。」
「旦那様から話は聞きました。良いのです。あなたがお祈りをしている間は私が神父様を引き付けておきます。」
上機嫌だな母上。
傍を離れたくないとゴネたのが効いたかね。
ま、実際のところ、前世63歳の俺が母から離れたくないというのは可笑しな話だが、肉体に引っ張られているせいか、両親の庇護から引きはがされるのは想像しただけで泣けてくる。
ギャン泣き確定だ。
レベルMAXが解放されるかもしれん。
サラフィナ神様ではないが、寂しくて飛んだ先でハンバーグになりそうだ。
「ありがとうございます。で、兄様、お勉強はよろしいのですか。」
俺の隣で外を眺めていたサスカス兄は、俺をチラ見すると素っ気なく呟いた。
「父上の許可は下りている、」
「・・・そうですか。」
「サルカスは旦那様に直訴して無理やり付いてきたのです。よほどグレイが心配なのでしょう。」
「な!・・・そうではありません! サラフィナ神様にお目通りできるかもしれないのです! だから・・・。」
あ~はいはい・・・付いてくれば会えると思ったワケね。
・・・会えるといいねぇ。
「それはそうと、グレイ。ビートのクッキーは美味しかったわ。あの優しい甘みは普通のお砂糖では出せないわね。マリアが大喜びで食べてたわ。」
「そうですか。それは何よりです。」
ミネラルたっぷりだもんな。
元気に育てよ姉様w。
ビートの砂糖は結晶化というより、粉末と呼んだ方がふさわしい仕上がりになった。
名前はそのまま「ビート粉末」。
ベタと言うなかれ、父上の命名だ。
俺は知らん。
「あの仕上がりなら御婦人方にお勧めしてもいいんじゃないかしら?」
「ビート粉末は安価な素材の一つにすぎませんから、他の材料にお金をかければ高級感が出せるかもしれませんね、なんにせよ安定した生産性を確保することが急務です。兄様お力をお貸しいただけますか?」
「・・・当然だ・・・。」
父上に諭されたな。
いまどきツンデレは流行らんよ兄様w
そうこうするうちに教会に到着。
階段を上りながら気配を探ると、フランネ神父一人だけ。
孤児院の子達はどこだ?
遊びにでも行ってるんかね?
先日と同様、祭壇の横で待っていた神父は、胡散臭い笑顔で俺達を迎えた。
「ようこそおいで下さいました。またお目に掛かれて光栄です。」
「お早うございます神父様。今日は長男のサルカスを紹介したく参りました。サルカス、こちらはフランネ神父様です。以前は王都の教会本部に努めてらしたのですが、先日より、こちらの教会の司祭としてお勤めされることになしました。私が若い頃から何かとお世話になった方なの。くれぐれも失礼のないように。」
「はい。初めまして。アストラス家長男のサルカスと言います。お目に掛かれて光栄です。先日は敬愛なる母上と愚弟が大変お世話になったそうで、父も喜んでおられました。本来であれば領主本人がご挨拶に上がるべきところですが、少々立て込んでおりますので私が代役として参上した次第です。今後ともよろしくお願いいたします。」
すげぇなサルカス兄!
さっきまでの仏頂面がウソみたいだ。
詐欺師かよ!
こえ~わ!!
「丁寧な御挨をありがとうございます。お二人とも実によくできた御子息で、感激いたしました。アストラス家の未来は安泰ですね。もし何か困りごとがありましたら御遠慮なく相談なさってください、及ばすながらお手伝いできればと思います。」
「ありがとうございます、では早速ですが、この教会の祭神はサラフィナ神様で間違いないですか? できればお祈りを捧げたいと思うのですが・・・。」
「もちろんです。どうぞ参拝なさって行ってください。サラフィナ神もお喜びになられるでしょう。儀礼はお気になさらすに、どうぞ。」
うは~言葉の流れ作業だよ!
感服したよ!!
年の功(6歳)だよ!!!
社会人の鑑だよ!!!!
「ではマーサ、お願いね。神父様、先ほど我が家でクッキーを作ってみましたの。御一緒にいかがですか?」
「おお!ありがたい。是非に。」
「多めに作ってきましたので孤児院の子達にもどうぞ。」
「ありがとうございます。子供達も喜びます。ではお茶を淹れますので、こちらへ・・・・」
「ありがとうございます。」
ウッキウキだな神父。
甘味に飢えてたんかね。
二人を見送った俺たちは、どちらともなく席に着いた。
「・・・普通に祈ればいいのか?」
不安そうな兄様だが、固くならんでええんよ。
「形式やらは気にしなくていいようです。目を閉じで深呼吸して心を落ち着けていれば、サラフィナ神様が勝手に引き上げてくれる・・・という感じで。」
「・・・解った・・・。」
「マーサ。この間と同じだけど、少し長くなるかもしれない。」
「畏まりました。どうぞ、ご存分に。」
そして・・・
白い世界。
サルカス兄は来れたかね?
・・・いない・・・か・・・
「サラフィナさま~ いらっしゃいます?」
「いるよ~・」
霞の向こうから二つの影が歩いてきた?
一人はサラフィナ神様だけど、もう一人は・・・フード被ってんな・・・マントで身体隠してっから性別も判らん・・・
ともあれ今回はマトモな登場なんだな。
「ファーストコンタクトが不評だったからね~。」
ありがたいっすね。
そちらの御仁は?
「こっちが犯人・・・じゃない、キミの師匠になる神・・・かな?
「隠せてないぞ。それに “神” になった覚えもない。」
ん~。声の感じは女性かね?
「またまた~ その割にはしっかり仕事してんじゃない?根は真面目なんだから。」
へー 真面目なんだ。
ちょっと安心・・・かな?
え~ お初にお目に掛かります、グレイ・・・
「知っている。」
そっすか・・・で、当然のように心を読んでらっしゃる。
何とお呼びすれば?
「教える義理はない。」
あ~さいですか・・・では「黒子さん」でいいですね。
「!!」
「ぶは!いいねえ『黒子さん』。キミの新しい二つ名だwww」
ウケたようで何よりw
「キサマ、死にたいのか・・・。」
別に? お名前が分からないので・・・
「まあまあw、キミ達の相性が最悪なのは分かったよ。でも仕事だからね?上から許可下りてるし。」
「・・・勝手にしろ・・・だがその妙な名で呼ぶことは許さん。」
お~ そりゃ困りましたね。なんとお呼びしましょう?
「キサマに名乗る名などない!」
そっすか。んじゃ「クロコッチ」とww
サラフィナさま?
そんなトコで屈みこんでたら「クロコッチ」に踏まれますよ?
おお!? 地面が揺れとる!!
天変地異か?
「・・・キサマ、やはり死にたいらしいな・・・。」
お? フード取れてる。やっぱ女性か・・・すんげ~美人さん・・・
長いブロンドのくせ毛に、サファイアブルーの瞳か~
目尻が上がってるのは意志の強さかね?
鼻梁が通ってて、やや薄めの唇が良い~
お~~照れてる照れてるww
こういう時、心が読めるって不便だね~
「この変態が!」
褒め称えたのに変態呼ばわり!?
理不尽って言葉ご存じですか?
あ、サラフィナさま再起動。
「あ~ 可笑しい! そのくらいで勘弁してやんなよ・・・君の元の世界少し調べさせてもらったよ? マンザイってうんだっけ? ボケとツッコミ? 実際に見るとクるものがあるね~。」
あ~ もしかして今の地震がツッコミですか?
解りにくくて笑えないんですが?
「この子にツッコミ求めるのは酷だと思うよ?もっと殺伐とした世界から来てるからね~。」
同業(転生)者ですか?
「いや、今はコッチで僕のアシスタントしてくれてるよ。こう見えて忙しい身だからね。」
へ~ 神さまって忙しいんですか? なんか呑気に優雅にってイメージなんですが?
「違うね~ みんな忙しく働いてるよ?休む間もなくね。」
天国ってブラックっすか・・・天国の意味とは・・・
「捉え方の違いだね。ま。そのうち解るよ。 で? 名前くらい教える気になった?」
「・・・ソリアン・・・。」
ん? ドリアン?
「ソリアンだ!馬鹿にしてるのか!!。」
お~~~ 揺れる揺れる?
馬鹿に?
してませんよ?
声が小さくて聞き取れなかったもので?
“ソリアン神様” ですね?
ありがとうございます?
「私は神になった覚えはないと言っただろ!それに何で全部疑問形なんだ!!」
神様じゃない?
ですが ソリアン様 ?”
あんなフザけまくった “呪詛(笑)” 送ったのは。ソリアン様では?
「・・・私の渾身の祝詞を『呪詛』だと?・・・。」
毎日のようにSAN値削られる身にもなってください?
新手のイジメですか?
思うに俺の元の世界の芸人ネタを参考にしたんでしょうけど、チョイス間違ってません?
それとも、アアいうのが “お好み” で?
「出〇哲〇氏の身体を張ったピン芸は至高だろうが!!」
あ・・・理解しました。
『追っかけ』さんでしたか・・・南無・・・
「なぜ拝む!?」
いえ、個人のシュミに付き合う気は毛頭ないので・・・お幸せに・・・
「なぜそうなる!! サラフィナ! 私は下りるぞ! 他のヤツやらせろ!!!」
ビックリマークの使い方教えましょうか?
「余計なお世話だ! サラフィナ!!。」
「クックック・・・だめだ・・・息が続かない・・・もう勘弁してぇ・・・。」
世は並べてこともなし・・・
「あっはっはっは!・・・ひ~~~!っく苦しいwww・・・無理だよ ソリアン君。君以外に適任者ないないよ~ 他の子じゃ笑い死ぬ・・・。」
お~~
美人の絶望顔もイイネ~
ゴチソウサマデス(笑)
「・・・この変態が・・・。」
『変わり者』とは言われますがネ。
“神” の称号を蹴った方に言われたくないセリフですね~。
やっぱ『ブラック』なんでしょうかね?
「フフ・・・捉え方によると言ったよね。そのうち解るとも・・・。」
それは『内定』ってことですか?
おっ死んだら天国で馬車馬のごとく・・・みたいな?
「それは君の今後の働き次第さ。期待してるよ。」
荒れ果てた無人の荒野で “一人漫才” に耽る趣味はないので、頑張らせていただきますが・・・
「ほんと。面白い子だね~。それでいいよ。じゃ、ソリアン君たのんだよ、」
あ、お待ちください。もう一つお願いがあるのですが・・・
「知ってるよ?君の国のオエライさん達の前で “証” を見せろって言うんだろ?
特別に見せてあげるよ。心配しないで。」
ありがとうございます。助かります。
「さんざん笑わせてもらったからね~ そのくらいはサービスするよw。」
さっさと踵を返したサラフィナ様が、後ろ手を振りながら霞の中に消えた。
ほっと一息。
監禁 → 打ち首コースは避けられそうだ。
「・・・ふん!安心したか。」
そりゃあね。若いみそらで『さらし首』はゾッとしませんし・・・
「・・・ダンジョンの申請が通った・・・。」
ほ? ダンジョンっすか!?
どこに?
「貴様の領地内だ。安心しろ、人間の生活圏外に創ってある・・・踏破しろ・・・話はそれからだ。」
単純明瞭な修行方法ですねぇ・・・死んじゃったらどうします?
「・・・知らん。諦めろ。」
修行とは・・・
「は! 貴様のようなガキが私の修行に着いてこられるワケがなかろうが! せめてレベル上限突破してから物を言え!!」
・・・師匠が “どS” だった件・・・
「なんだとぅ・・・・」
揺らさないでくださいよ。
いたいけな子供はオモチャじゃありませんよ?
「どと面下げて言う・・・。」
このツラです。
可愛いでしょ?
「・・・ああ言えば、こう言う・・・気に入らん。」
可愛いは否定しないんですね。
お気に召されたようで何よりです。
「煩い! 私は戻る! さっさとダンジョン踏破しろ!この若年寄が!」
そう言い捨てると、ソリアン様も踵を返し、さっさと消えていった。
若年寄か・・・ありゃ意味間違えて憶えてんな~
ツッコミネタ提供して去るとは、若いね~
俺の方が若いケドww
教会の香の匂い・・・
ゆっくり目を開ける。
意識が戻ってきた・・・
周りを見ると全員が揃って教会の壁に張り付いていた。
注目のマトやん。
何があった?
「え~と・・・どうしましたか?」
「グレイ!大丈夫なのですか!?あなたビカビカと光って・・・それに地面が激しく揺れて・・・。」
あ~そ~きたか~・・・
にぎやかしい・・・だったもんな~
「大丈夫ですよ?もう何も起きません。」
「どういうことだ!グレイ!!説明しろ!!!」
ソリアン様見てます?
これがビックリマークの正しい使い方ですよ~
「・・・坊ちゃん・・・。」
ありゃ、マーサ大丈夫かね?
顔、真っ青だよ?
「勿論、そのつもりですが・・・神父様、今日の件については教会本部にご報告なさいます?。」
ダイジョブかね~ 土気色になっとるがwww
「は・・・はい!このような『奇跡』は初めてなので・・・取り急ぎ、報告すべきかと・・・それにその “神気” ・・・もしかして神子様ですか?」
神気?・・・あ~~~・・・だよね~
「そんな大層な者じゃありません。しかしながら僕も父上やサルムンド侯爵様を通して王都へ報告しなければならないことがあります。もちろん協会本部へも・・・非常に機密性が高いと思われますので、可能な限り秘密裏にお願いできますか?」
王都へお引越し~なんて興味ないからね~
コッチでやることあるしぃ。
「・・・畏まりました。ならば私が直接出向いてご報告させていただきます・・・サラフィナ神様との密約・・・という解釈でよろしいですか。」
密約ときたか・・・報告する時点で密約じゃないけどなw
「ご随意に・・ただ僕は『ワケあって領内から長く出られない。』ともお伝えください、」
「出られない?・・・それはまた、どうして・・・。」
「密約です。こればかりは、たとえ教皇様でもお教えすることはできません、ご了承ください、」
詐欺師爆裂ぅ~
「解りました・・・王都へは来られるので?。」
「わざわざこの辺鄙な田舎町に呼ぶワケにもいきませんので、呼ばれれば参上いたします。ただ、王都に住めというのは。ご勘弁いただきたく・・・。」
「理解いたしました。では早急に王都に参ります。」
そう言うと、神父は慌てて奥へと駆け出した。
ん~・・・早まったかな~・・・
「母上。兄様。僕達も急ぎ帰りましょう。父上に報告しなければなりませんし、この件については僕も情報を整理しなければなりませんので・・・。」
密約事項炸裂ぅ~
悪いね~
神様爆笑させたなんて言えないからね~
神様おちょくって “反教の刑” なんて恥ずか死するわw
「解りました。サルカス。マーサ、いいですね?屋敷に帰るまでは口を開かないように・・・参りましょう、」
いち早く立ち直った母上は颯爽と踵を返す。
母は強し・・・
◆◆
教会の外はごった返していた。
さもありなん。
63年間も『地震大国』とも呼ばれた日本で生活していた俺は、少々の揺れでは不感症に近いが、この国ではどうだろう?
現世に生まれて3年程度だが、地震らしい揺れに遭遇したことはない。
まあ、その事実だけでも恵まれてる方なんかね?
魔族や魔物が跋扈する世界だが・・・
「・・・仕方ないわね・・・。」
右往左往する住民がいては馬車も動けん。
母が大きく息をすると、声を張り上げた、
「落ち着きなさい!揺れはもうありません!誰か!私警団か町長所縁の者はいませんか!」
ひゅ~♪ 凛々しい!
「これは奥様!お怪我はございませんでしたか!?。」
小太りの爺さんと皮鎧のおっさんが、ワタワタと駆けて来た。
「トマック町長。大事ありません。そちらの方は?」
「お初にお目に掛かる。ここドビシャスの町にある冒険者ギルド支部長のコッカスという者です。お見知りおきを・・・」
「解りました。では。命じます。今すぐ治療院を解放し、今回の地震によるけが人や治療の必要な方々を集めてください。コッカス様、ギルドに治癒魔法を使える方はいらっしゃいますか?」
「今すぐにというなら、ギルド職員2名ほどでしょうか。他の冒険者も含めれば3。4人程度は・・・。」
「結構です。その方々を全て治療院に回すよう要請致します。その際、全てのかかる費用は我がアストラス家が負担します。」
「・・・よろしいので?」
「問題ありません。そのための領主家です、」
「・・・仰せのままに・・・。」
コッカスが恭しく頭を下げた。
「次にトマック町長。出来るだけ早く家屋や施設の被害状況を確認し、報告してください。見積もりは正確に・・・この意味は理解できますね?」
「!・・・ははぁ!!鉄銭の一枚たりとも無駄には致しませんんん!!。」
「よろしい。では皆さん。道を開けてください。私達はこのことを領主様にお伝えしなければなりません。」
毅然と先頭に立ち、馬車に乗り込む。
母かっけ~!!!!
馬車の中で静かに目と閉じる母は、淑女そのものだった。
「母上。流石です、」
兄上が尊敬の眼差しを向ける。
「サルカス、グレイ、私達は貴族です。そして貴族は領民に生かされていることを忘れてはなりません。理解できますね。」
「はい!」
「今回私は、領主の了解を得ず指示を出しました。これは本来、褒められるべきことではありません。」
「そんな!しかしあの場合・・・。」
「いいえ。私の立場は領主夫人であり屋敷内の人事と安全。そしてあなた達を立派な貴族として自立させることが私の役割であり。この件に関しては明らかな越権行為。許されざる罪なのです。」
「・・・母上・・・。」
「良いですか二人とも、よく聞きなさい。今回。トマック町長も冒険者ギルドのコッカス様も私の越権行為を知りつつ、同意し、命に従ってくれました。ですが彼らを責めてはいけません。なぜなら私の命に従うということは領主権限の逸脱行為の補助にあたり、彼らもまた罰を受ける覚悟があるということなのです。そういう覚悟を持ち、町を守ろうという気概を持った者達を安易に罰してはなりません。全ての責は私、ミレイ・アストラスが負うべきであるとして命じたのです。いいですか? どのような罰が私に下されようとも決して目を背けてはなりません。なぜなら私達は貴族であり、その本懐は領民を守り、ヨーデル王国に安寧をもたらす一助となるために存在しているのです。」
・・・迂闊だった・・・
こんな惨事が待ち受けているとは思いも寄らなかった。
兄上やマーサは声を押し殺して泣いている。
許されるなら、俺も大声で泣きたい気分だ。
・・・クソっ・・・
時間が戻せるなら、フザケ捲った俺を殴り倒したい!
俺は俯いて両の手を握りしめるしかなかった・・・。
屋敷では、兵士とメイド達が忙しく走り回っていた。
馬車を下りた俺たちは1階のロビーへと歩みを進める。
「おお!奥様!ご無事でしたか!」
セバスが駆け寄ってきた。
「大事ありません。旦那様は何処に?」
「執務室においでです。被害報告書の作成をしているところです。」
「解りました。サルカスとグレイは自室で休んでいなさい。後で呼びます、」
有無を言わせないとはこのことだろう。
俺達は黙って従うしかなかった。
後日、セバスに聞いたが、母の報告を受けた父は、文字通り頭を抱えたらしい。
母の行動は間違っていない。
パニックを起こさないように、被害を最小限に食い止めるには直接現場で責任を明確にし指示を出すことがベストな選択だ。
だが貴族には矜持がある。
それを明確にするのは命令系統の順守であり、貴族同志の不文律だったりする。
身内だからと言って罰を不問にし、罰則なしを他の貴族に知られると、侮られ、最悪、領を攻められる場合だってある。
何もしないワケにはいかないのだ。
結果として、母は屋敷に軟禁され、茶会への出席を禁じられることになった。
「良いのです。」
膝にすがって泣く俺を、母は優しく撫でた。
「地下牢に監禁され、飼い殺しにされる覚悟はありました。それを考えると破格の処遇です。茶会への出席は断念せざるを得ませんが、お屋敷に呼ぶことはできるのですよ?」
「僕を責めないのですか?」
「幼い我が子を責めるなど・・・あなたにも事情があったのしょう。自分を責めてはいけません、むしろ、幼いあなたに重責を負わせてしまった私達を不甲斐なく思います。」
重ねて言おう。母は偉大だった。
「・・・聞こう・・・。」
執務室に俺を呼んだ父は、テーブルに両肘を置き、その両手を口の前で組んで短く言った。
ゲ〇ドウさんスタイルかよ!
その隣では、セバスが紅茶を注いでいる。
気配うっすいな!
「報告します。」
俺は直立不動で、言葉を続けた。
「師匠が決まりました、サラフィナ神様の直属の部下でソリアン様と言う女性です。」
「・・・ほう・・・で?」
「ソリアン様は祝詞を作った本人であり、サラフィナ神様の命を受け、啓示を授けたことが判明いたしました。」
「祝詞を・・・か・・・続けろ。」
「端的にいうなれば、口喧嘩をしました。」
漫才・・・とは言えね~な~。
ボケとツッコミなんて、コッチにゃね~し・・・
セバスさ~ん。茶ぁ、溢れてまっせ~
「・・・もう一度・・・言ってみろ・・・。」
「はい。ソリアン様と口喧嘩をしました。」
お~ 父上の額に青筋が・・・
「・・・ソリアン様・・・と、言ったな。・・・神・・・ではないのか・・・。」
父上~深呼吸して~~~
「はい、『私は神などではない。』とはっきりおっしゃってました。」
「・・・神ではない・・・か・・・マーサやサルカスはお前の身体が光っていたと言っていたが?・・・なぜだ・・・。」
「僕にも分かりません。ですが、サラフィナ神様も隣にいらっしゃっていたので、その影響かと・・・。」
「・・・そうか・・・サラフィナ神様は、口喧嘩を止めなかったのか?」
「その・・・爆笑・・・してました。」
うわ~ 言いずれ~~~
「・・・は?・・・。」
「爆笑してました。」
ここ大事!
セバスさん? 小鼻膨らんでますよ?
「・・・口喧嘩を止めることなく・・・隣で爆笑してたと・・・。」
「その通りです。久しぶりに大笑いしたと、お褒めの言葉を賜りました。」
「・・・そうか・・・。」
父上~ 青筋増えてない?
「・・・昨日の、地揺れは憶えているな・・・あれは、サラフィナ神様の影響か?・・・」
「いえ・・・その・・・どちらかと言えばソリアン様の・・・」
ビキィ!!!
おお、割れた!?
いや、皹が入ったのか?
置いた肘を中心に『蜘蛛の巣』が!!
「ソリアン様とか言ったな・・・何者なのだ・・・勇者か?」
「明言されてはいませんが・・・おそらく・・・。」
ストレートに聞きゃよかったかな?
ま、そのうち判るか?
「旦那様。サラフィナ神様の直属の部下ならば『勇者』であってもおかしくないかと・・・。」
セバスもそう思う?
「判っている。むしろ『勇者』でなくてはクレイの資質は開花しまい、妥当な人選と納得すべきか・・・。」
父上考え込んでるね~
シブさに磨きが掛かってらっしゃるw
解答が得られないものに悩んでも仕方ないよいww
ん~~、
思考の海に溺れる前に、も一つ爆弾落としとこうかね?
「父上。ソレについてもう一つご報告があります。」
父~ 疲れたね~♪
「・・・なんだ・・・、」
物憂げな顔がセクスィ~だね~(笑)
「我が領にダンジョンが出来たそうです。」
お~~ 盛大に吹いたね=
今虹が見えなかった?
「・・・いま・・・ダンジョン・・・と、言ったか?」
「はい。ソリアン様が申請して許可をもらったから創ったとおっしゃってました。」
「・・・申請・・・許可・・・創った?・・・。」
我ながらエライこと言ってんな~
何この、ちょっと買い物行ってきます感。
ダンジョンって片手間に作れるモンかいな?
「そこを踏破するのが修行の第一歩だそうです。でないと、ソリアン様の直接指導は難しいかと・・・。」
あれ?
父上~ 白目向いてないかい?
ダンジョンだよ~
人集まるよ~?
お~~~い!
「!! どこに創った!? 近くか!?」
うわわ!
いきなりすんごい喰いつき!!
落差激しいな!!!
「えっ~と、アストラス領の、人間の生活圏外にあるとおっしゃってましたが、詳しくは・・・。」
「セバス!冒険者ギルドに依頼を出せ!!領内のどこかにあるダンジョンを見つけた者には報奨金を出すと!!!」
「畏まりました。」
目覚めたと思ったら、いきなりエンジン全開だね~
「父上、ダンジョンとはそれほどのモノですか?」
「それほどのモノだ。ダンジョンは危険だがそれに見合う宝も掘り出される。現在の錬金術や魔法でも再現不可能な魔道具とかな。それをオークションに懸ければ大金が動くことも珍しくない。なにより、一獲千金を求めて冒険者が集まれば、商人も動く。・・・ダンジョンを中心に街が出来る。ゆえにダンジョンを見つけた領主は王都に報告する義務が生じるが、その手間暇を鑑みても得るものは大きい。」
父はイソイソと地図を引っ張り出し、目星を付け始めた。
「人の生活圏外か・・・ありがたいな・・・作るとしたら “不毛の地” か “魔物の森” か・・・森の浅いところなら大した脅威はないな。王都に補助金頼んで壁を作れば、スタンピード対策になる・・・。」
ほえ~予想はしてたけど、改めて聞くとエライこっちゃがね~
ソリアン様大奮発!
また漫才けしかけてみようかな♪
「ソリアン様が申請許可して創ったと言ってたな。もしかしてグレイしか入れないとか言うのではあるまいな。」
「それはないと思います。そんなくだらない事をする人ではなさそうですし、他の冒険者や兵士が強くなれば魔人対策にもなりますので、僕としては大いに活用して欲しいくらいです。」
「・・・そうか・・・そうだな・・・地揺れは大迷惑だったが、それ以上の代償が得られたか・・・よくやったと褒めるべきだな、」
ガシガシと撫でられる頭は痛いくらいだが、悪い感覚ではない。
「父上、今回に免じて母上を許すことはできませんか?」
目を丸くした父は、苦笑し、優しい目を向けた。
「それとコレとは話が別だ。ミレイへの罰は、罰として受けねばならん。でなければ領民や周囲の貴族に示しがつかん。心配するな、悪いようにはせん。」
時間は掛かるが何とかするって事かね?
アテにしてまっせ! 父上~
「それと父上、ビートの件はどうなりましたか?」
「順調と言えるな。水車小屋を作る場所も選定に入ったし。お前の作成した資料も大工や木工職人や鍛冶師を呼んで見てもらったが、大いに興味が湧いたようだ。領主である私を蚊帳の外において、議論しておった。」
父はそこまで言うと、ククと笑った。
「サルカスもミレイの ”貴族としての決断と潔さ” に大いに感銘を受けたらしい。ビート事業はお前から引き継いで成功させると張り切っておったわ。」
「それは何よりです。」
兄上頑張れよ~
ホ・ンキのア・ニキが見って見ったい♪ あ、そ~れ♪
「で?お前はこれからどうするのだ?」
「ダンジョンが見つかるまではビート事業を手伝おうかと考えています。とは言っても、水車小屋については専門家に任せた方がいいでしょうから、試験的な農地の選定やら、栽培方法の確立なんかを進めるべきかと・・・。」
「候補地はある。ここ数年、収穫が落ちている農家があるからな。・・・栽培方法?必要か?」
「必要です。均一した甘さを安定的に生み出してもらわねば商品価値が下がります。ギルトと同じです。実力に応じでランク分けして一定の成果を出してもらう。
それがギルドの信用に繋がります。」
「くっくくっくく・・・もはや3歳児にとは思えんな。よもや『勇者』は偽りで実は『賢者』でしたとか言うまいな。」
「その方がどれだけ楽でしょうね。前衛を人任せにして、後方から好き勝手に指示を出して気まぐれに大魔法を打つ。実に楽そうです。」
「それでも討伐には行かねばなるまい。危険な事は変わらぬよ。・・・実に惜しい・・・サラフィナ神様にお願いして他の者に『勇者』をやってもらうワケにはいかんか?」
「・・・残念ながら・・・。ですが、父上の御心、大変うれしく思います、」
「・・・そうか・・・そうだな・・・死ぬなよ・・・。」
「・・・はい。」
「コミカル」と「シリアス」のミルフィーユ!
節操がないともいうwww
書き溜めはココまで、以降、更新が遅くなります。
週一くらいになるかな~




