6 新事業?これチート?
3歳児の「巻き込まれ開眼!」
お楽しみくださいwww
我が家に到着した俺たちは、すでに居間でくつろいでいる父上達に簡単な挨拶を済ませた後、俺は部屋着に着替えるべく二階に上がっていた。
「グレイ。着替えたらすぐに居間に行きなさい。聞きたいことがあります。」
《・・・うわぁ・・・ヤな予感しかしねぇ・・・》
「・・・明日じゃダメですか?」
「ダメです。今日中に旦那様に御相談しましょう。」
「・・・その前に、一度書庫に寄ってもいいですか? 資料があった方が説明しやすいので・・・」
「解りました。居間で待ってます」
《 きっとアノ事だろうな~》
《 馬車ん中でマーサが嬉しそうに話してたし・・・》
《 目立ちたくないんだよな~》
《 何とか言い包めないと・・・》
急いで着替えた俺は、マーサと共に書庫へと向かった。
植物図鑑は手が届かない場所にある。
俺の背が小さすぎて足場台に乗っても届かないし・・・
マーサがいないと不便なことこの上ない。
しっかりと図鑑を抱え、重い足取りで居間に向かった。
《 アアメンドクサイ・・・》
居間では家族全員が揃っていた。
注目の的だ。
《 やだなぁ。》
《 母上なんか、目がキラッキラしてるし・・・。》
《 サルカス兄?・・・何で睨んではるん?》
《 セバスもおるやん!》
《 何で?》
「おかえりグレイ。ミレイから聞いたぞ? 何か発見があったそうだな。」
《 うは~》
《 俺、元しがない歯医者だぜ。》
《 プレゼンなんかしたこと・・・あ。あるか・・・》
《 前世で大学入ったのは28歳ころで・・・。》
《 高校卒業してから10年近く、即バイト→ 派遣社員みたいな感じで、新商品のプレゼンしてたわ。》
《 なっつかし~な~。》
《 あんときも注目のマトだったもんな~。》
《 プレゼンの時だけ・・・。》
《 半泣きだったな~。》
《 アホみたいに勉強して歯医者の免許取った後も2年間の研修医(無給)生活。》
《 先輩開業医でバイト(雀の涙)に月一の臨床報告会で目ぇ回してたっけ・・・。》
《 机に齧りついて国家試験通ったのに年収半分以下ってどうよ?》
「グレイ。どうした?」
父上の声に再起動した俺は、ゆっくりと深呼吸した。
サルカス兄、目ぇ怖いって・・・
「・・・はい。え~と、こちらをご覧ください・・・。」
俺はテーブルの上に図鑑を広げた。
《もう腹を括るしかないかね。》
《母ウッキウキだな!》
《マリア姉様、寝るには早いんじゃないかな?》
「これはビートという植物です。ご存じですか?」
《 父上、眉間に皺が寄ってるぞ。》
《 無駄にシブいな。》
「うむ。飢饉などの際に市井の者が非常食として食べるものだな。決して旨くはないと聞くが・・・。」
「はい。煮ても焼いても美味しくありません。ですが、繁殖力に富み災害に強い。まさに非常食です。」
「よく知ってるな。もしかして食べたのか?」
「・・・はい。裏庭に生えてたので・・・。」
「・・・マーサ・・・。」
「申し訳ございません。気が付いたら厨房から鍋を借りて煮てらっしゃっていたので・・・。」
父上に睨まれた専属メイドは。青い顔をして頭を下げた。
《 いや問題はソコじゃないから!》
《 あとマーサをイジメないで。自業自得だけどもw》
「マーサを叱らないで下さい。すべて自己責任でやったことですし、まだ続きがあります。」
《 盛大な溜息だなオイ・・・気楽にいこうぜ。》
「・・・話せ・・・。」
「はい、で、ここをご覧ください。」
俺は図鑑に掛れた一文を指さした。
【ビートは遠い東の国ではテンサイと呼ばれ、□トウキビの代用品として重宝された・・・】
「・・・トウキビの代用品?」
「はい、トウキビではなく、サトウキビと書いてあります。文字がかすれてトウキビと書いてあるように読めるんです。」
「・・・サトウキビとは?」
「砂糖の原料です。つまり甘味で、ケーキやお菓子の材料です。」
「ケーキ!」
《 起きたか姉よ。あまりに素直な反応でほのぼのします。》
《 そして兄様、目が恐いです。》
「砂糖の代用品?にわかには信じられんな。」
《 ですよねぇ。》
《 でもここからが大事なんすよオヤッサンw》
「はい。ですので少し工夫してみました。」
「ほう。・・・どのように?」
「おろしで擦って、煮詰めてみました。」
「・・・ほう・・・。」
「火加減が少々手古摺りましたが、2回ほど沪してやると苦みが和らいで甘味が際立つようになりました。」
「・・・ふむ。現物はあるのか?・・・。」
「残念ながら・・・面白半分で作ってみただけなので・・・しかし繁殖力の強い植物なのでご許可いただければ近くの森で簡単に手に入るかと・・・。」
「・・・マーサは食してみたのか?」
「はい。エグみがあり、砂糖ほどの甘みはありませんが、市井の甘味の代用品としてなら十分かと・・・。」
「貴族には向かないということか・・・」
《 おっと?》
《 そうじゃね~んだよな~》
「父上。多少のエグみは何とかなると思いますし、『貴族』よりも『市井』に目を向けてみてはいかがでしょうか?」
「市井にか・・・うむ、”薄利多売”というヤツか。」
《 ピンポ~ン♪》
《 正解。よく勉強してらっしゃるw》
「はい。『貴族』のほとんどは裕福ですが、当然、数として圧倒的に多い領民の嗜好品狙いです。」
「領民の嗜好品・・・か・・・。」
「毎日の食事に ”ささやかな甘味” を・・・というヤツです。」
「・・・う~む・・・採算は取れるのか?」
「生命力の強い植物ですので、生産効率の悪い農地でも十分育つ可能性はあります。人件費が最初は嵩みますが ”先行投資” と考えれば十分もとは取れるかと・・・。」
《 新事業だからな、スタートは赤字が当然。》
《 人生はギャンブルなのだw》
「あなた、試しにギルドに頼んで採取してもらってはいかがでしょう?」
《 母ノリノリだな。》
《 まあ、この世界では砂糖は貴重品だ。》
《 代用品が見つかれば飛び付きもするか・・・。》
《 マリア姉様、よだれよだれwww》
◆◆
翌朝
早速セバスが冒険者ギルドに依頼を出したらしい。
行ってみたかったな、冒険者ギルド。
《 自由を語る無法者集団。》
《 夢あるね~。》
父上は朝早くに屋敷の全員をロビーに集め、実験の概要を説明した。
かん口令を敷くためだ。
うまく行けば新産業が生まれるからな。
失敗しても俺が笑い者になるだけだ。
そういう俺は、マーサと一緒に厨房から道具を借りそろえることに余念がない。
せっかくだから成功させたいじゃんよ。
お金はあっても困らんし・・・。
《 問題は、結晶化できるかどうかだな。》
泥状のまま売ってもいいが、匙加減が難しいし、カビも生えやすいか?
長期保存を目指すなら、少々大きくても結晶化が望ましい。
《 売る前に細かく砕いてやればいいだけの話だし・・・結晶化か~》
室を作って陰干し?
いや、時間をかけるとカビるか?
人を雇って風魔法で?
いや、人件費がバカにならん。下手すりゃ砂糖より高価になる。
巨大な鍋でゆっくり温める?
いや、竈じゃ火加減が難しいし、慣れないうちは大概鍋底が『おこげ』になるか?
むしろ勿体ない。
薪の煙の匂いが商品に付くのも避けたい。
熱した鉄板の上に鍋ぶら下げて、鍋全体をじんわり温める?
直接火が当たらない分『おこげ』の危険性は低減するが、時間効率が悪いか?
火を絶やさないように四六時中見張るのもな~
村人総出で団扇で扇ぐとか・・・非効率ここに極まれり・・・
《 せめて扇風機があればな~》
《 扇風機・・・か・・・扇風機は回る・・・回る・・・》
ピコーン!
《 そか、羽を回せばいいか!水車小屋ならイケるんじゃね?》
《 書庫に似たようなのあったかね?なきゃテキト~にでっち上げて、親父殿に進言してみるか?》
「・・・グレイ坊ちゃま・・・。」
「なに?マーサ。」
「何考えておいでです? すごく悪い顔になってますが?」
・・・ゴメン・・・
と
そこへ
派手な足音と共に誰かが近づいてきた。
《サルカス兄か。気配バレバレなんだよな~。》
《気配察知が目覚めたか?》
「精が出るな。無駄な努力という奴か。」
《 せめて殺気抑えてくんないかな~》
《 ビビっちゃうよ。》
「そうですね。そうならないことを祈っててください。」
「ふん!今から点数稼ぎか。次男坊も大変だな!」
《・・・あ~・・・そゆこと?・・・》
「どうでしょうか? 僕はそのつもりはありませんが?」
「・・・どういうことだ?」
《 だからぁ、殺気抑えてって・・・》
「勘違いされてるようですが・・・僕は兄様と跡目争いをするつもりはありませんよ?」
「なに!?」
「考えてみてください。もしこの実験が成功して。新たな事業を立ち上げてお金が入ってきたと仮定しましょう。じゃあ、そのお金は誰のものですか?」
「む!・・・それは当然、領の金だ!」
「そうですね。領のお金です。領を豊かにすることができます。」
「だが、貴様には権利とアイデア料が・・・。」
「僕は貰うつもりはありませんよ?」
《 おっと被っちゃった。失礼ww》
「なんだと!」
「あ、すみません。言い間違えました。忘れ去られたとは言え、もともと先人の知恵ですし、僕はソレを掘り起こしたにすぎません。認めてくれるのは素直に嬉しいですけど・・・それに、アイデア料を貰ったとしても、全て僕の養育費としてお返しするつもりです。」
「養育費・・・。」
さて、納得してくれるかな?
「兄様。恩返しなんです。」
「恩返しだと?」
「はい。親孝行と言ってもいいですが・・・僕は跡目争いをするつもりはありません。むしろ、勉強や剣術に励む兄様を応援する立場にあると、思ってください。」
「・・・それとどう関係があるんだ。」
《 お、ノッてきたw》
「兄様の、親孝行はなんですか?」
「む!それは勿論!勉学や剣術に励み、学校で良い成績を収めることだ!」
「その通りです。尚且つ、卒業した後は領主代行として父上のお仕事を手伝い、兄上なら大丈夫と安心して引退していただければこの上ない悦びでしょう。手柄や功績を積み重ねて伯爵や侯爵に上り詰めれば泣いて喜ぶかもしれませんね、」
「俺が・・・伯爵や侯爵・・・。」
《 効いてる効いてるw》
《 妄想が膨らむね~》
《 頑張れ若者!これが洗脳教育ってやつだ!》
「これが現在の兄上の立場です。対して次男坊の俺はその立場にありません。」
「ぬ!何を言う。俺が領主になればグレイを代行として認めるくらいは・・・。」
「・・・ありがとうございます。ですが、それは悪手だと断言できます:」
「なにい!」
「父上はアストラス領の領主です。領主の役目は魔物や国外勢力の脅威から領民を守り、しかも天災や水害等に対して適切に対処することが責務です。子供である僕達には厳しくも優しい父上ではありますが、見えないところでは綱渡りのように歯を食いしばっているのです。それは母上にも同じことが言えます」
「・・・それは俺も知っている・・・書斎で頭を抱えてる父上を見たことがあるからな・・・。」
《 ホントかね~?》
《 はじめて知ったっつう顔してないかい?》
《 まあいいや。》
「じゃあ、僕はどうでしょう?・・・これからやる実験は失われた技術の再現です。」
「・・・だから何だ?」
「文献にも数行しか残らず、このヨーデル王国内でも誰も見向きなしなかった技術の再現を、なんの保証もなくやろうとする人間に領主代行を頼めますか?」
「ぐっっっ!!」
「領民はいい迷惑でしょうね。失敗するかもしれない実験や政策に付き合わされるんですから、下手すれば反乱ものです。」
「・・・じゃあ、お前は何がしたいんだ!」
《 解らんかね~?》
「だから恩返しですよ。僕が跡目争いに参加しない以上、この屋敷に居られる時間は兄様に比べて遥かに短いんです。ならば、たとえ失敗しようとも考えられる最善な方法を模索して領に貢献するのが、次男坊の役割だと思いませんか?」
《 証明完了・・・っと》
《 も一個、肝心なコト言ってないけど、フラグ立ちそうだモンな~》
《 余計なコト言わんトコ・・・》
《 あ~チカレタ~・・・茶~シバキてぇな~》
「・・・グス!・・・」
《 あん? マーサ、花粉症かい? 無理させちゃったかな?》
《・・・って、泣いてんじゃん!!》
「ま。マーサ?どうしたの??」
「・・・グレイ坊ちゃまが。それほどのお覚悟で実験に臨もうとは・・・このマーサ!最後までお供いたしますぅ・・・」
「あ・・・あ~・・・マーサ大丈夫だよ?ホラ、この間のはウマクいったろ?厨房のマークさんには怒られたけど・・・ね?・・・・」
《 洗脳教育の波紋がヒドイ!》
「・・・ぐす・・・はい・・・そうですね・・・きっと上手くいきます・・・あとマークはシバいておきます・・・。」
《 あ・・・やべ! 藪蛇だった!?》
「いやいやいや!ほら!!・・・マークは皆の食事を賄う立場があるからさ!叱られて当然なんだよ? むしろ叱られるような事した僕が悪いんだからサ!・・・ね?」
「すん・・・坊ちゃまはお優しいですね・・・解りました。ひっぱたく程度にしておきます・・・ぐすん・・・。」
《なんだ? この引退間近のメイドさん??》
《いつから戦闘民族にジョブチェンジした???》
そしてごめんマーク・・・完全に事故った・・・ゆるせ・・・
◆◆
そんなこんなでなんとかその場を切り抜けてみたが・・・黙って背を向けて帰って行ったサルカス兄・・・大丈夫かね~?
《 ま、悩んでもしょうがない。今は急がねば!》
次の準備を進めるべく標的がいそうな場所を探索して・・・いた!
「ねえセバス。水車って知ってる?」
セバスはアストラス家の執事で元暗殺者だ。
どういう経緯で今に至ったか・・・非常に興味あるが、後回しだ。
「水車・・・ですか?・・・はて?」
《『元暗殺者』なら冒険者ほどじゃなくても他国を渡り歩いてると思ったんだがな~アテが外れたか?》
「川の力を利用して車輪を回すみたいなんだけど?」
「車輪を回す・・・ですか・・・ああ! それなら庭師のオッズに聞いてみてはいかがでしょうか?元冒険者ですし水車小屋なるものに興味を持って色々聞いて回ったとか言うのを聞いたことがあります。」
《 ビンゴ! 聞いてみるモンだ!》
《 思わぬところに伏兵がいたよ!》
早速、庭に出てオッズを探す。
《・・・めっけ! 仕事中にスマンな。》
《 ちょっとだけ与太話に付き合ってくれ。》
「オッズ~!ちょっと聞いていい?水車小屋について話を聞きたいんだけど。」
「グレイ坊ちゃん?もう雑草に興味が無くなったんですかい?」
「じゃなくて、本に水車小屋の話が出てきたんだよ。で、セバスに聞いたらオッズが詳しいって・・・。」
「そうですかい。昔、冒険者やってた頃に二つ隣の国のオセニア帝国に足を延ばしたことがありましてね。そりゃでっかい水車に目を奪われたモンでさぁ。」
「へ~・・・もっと詳しく教えてくれる?仕組みとか解るの?」
「へい。ワシも興味あったんでイロイロ聞いちゃみたんですが、細かいところまでは・・・。企業秘密ってヤツですか?領主やら地主やらが絡んでくるらしくてですね・・・。」
オッズは申し訳なさそうに頭を掻いた。
《 気にせんでエエよ。前世の儂がようけ知っとるけ。》
《 よ〇つべ様様だな!》
庭の石畳の上に大雑把な絵を書いてもらい、前世の記憶を掘り起こす。
《・・・よっしゃ!》
《 パーペキ!!》
《 思い出した!!!》
《 やれる!!!!》
礼を言い急いで屋敷に戻る。
・・・にしても今更気付いたんだが、オッズの左足って、膝から下がないのな。
たぶんそれが原因で冒険者引退したんだろうけど・・・
あの足で器用に梯子を上って、自分の背丈より高い木の剪定するんだろ?
手が空いてれば荷運びも手伝ってたみたいだし・・・
すげぇな・・・
畏敬の念を抱きつつ、セバスから紙とペンを借り受け、自室に戻った。
詳細な記憶があるうちに図面と注釈を書き留めておかねば・・・
作業は深夜まで続いた。
引退間近の専属メイドが報告魔兼戦闘民族?
元暗殺者の執事や元冒険者の庭師といい、実は『濃いアストラス家』w
そろそろ書き貯めが無くなりそう。




