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22 オセロとポーチとグレイの怒り

ほんの僅かですが、スマホで閲覧する方が増えてきているようです。

それはそれで嬉しいのですが、くれぐれもマナーやルールを厳守しましょう。




 俺達は再び武器屋を巡っている。


 昨日のオーガの皮膚が固すぎて、メイのショートソードがボロボロになっていたのだ。

 「なんかゴメンね。」

 しおらしいこと言ってはいるが、反省はしてないな。

 昨日の稼ぎが吹っ飛びそうだ。


 「スズネはいいの?」

 「私のは問題ありません。」

 「そう。」

 昨日見た限りでは普通の忍者刀に見えたが、剣の鍛え方が違うんだろうか・・・


 《 まあ、日本刀と西洋の剣とじゃ製法も技術も違うからな・・・》


 俺の仕込み杖もそうだ。

 ボス部屋の戦闘で使えなくなるかと心配したが、意外と頑丈。

 今朝のスズネのシバきにも、ちゃんと耐えていた。




 「今日は4階層行くの?」

 新しい武器を手に入れたメイがウッキウキだ。


 「そうだね。スズネ。4階層って日帰りできそう?」

 「昨日のペースなら問題ないかと。」

 「メイ。念のために食糧と水を確保してから行こうか。」

 「りょーかい。」


 水魔法が使えるのに水の確保? と言うなかれ。

 ダンジョンでは魔力の確保が命運を分けると言っても過言ではないのだ。

 魔力枯渇の魔法使いなど、魔物にとっては美味しい餌でしかない。


 まあ

 俺は大人しく餌になってやるつもりはないから、毎朝スズネにシバかれてるんだがなw


 せっかく()()()()()()()()()()()があるのだ。


 活用しない手はなかろう?




 多めの食糧と水を確保した俺達は1階層を半ば駆けるように通り過ぎた。

 今日は何組かのチームがボス部屋で待機しているようだ。

 大きなリュックを幾つも担いでいるのを見ると、泊りがけの遠征だろうか?

 お疲れ様w


 「ようねーちゃん。昨日は災難だったようだな。」

 人のよさそうな冒険者が話しかけてきた。

 ナンパか?


「何でしょうか?」

「昨日の2階層のボス部屋、オーガの大群だったそうじゃねえか。ガキ二人も抱えて良く生きてこれたもんだってみんな騒いでるぜ?」


《 あ~ そうなってるのね。スズネさんヒロイン説w》


 「いえ?その情報は間違ってます。」

 スズネはきっぱりと否定した。


 《 いや否定せんでもエエんよ、スズネさん? あんたが大将でエエから。》


 俺のとっさの祈りは通じなかった。


 「正確には “大群” ではなく、10匹のオーガです。しかも、こちらに控えるグレイ坊ちゃまの初撃で半数以上が絶命。残りのオーガも足を切られ行動不能となりました。結果としてグレイ坊ちゃまが7匹を討伐され、私が2匹、メイが1匹のオーガに(とど)めを刺しただけです。ギルドにはそう報告しておいたのですが、聞いてませんでしたか?」


 淡々と “事実” を述べるスズネに冒険者の男が引いた。

 「いや、俺はてっきりアンタが一人で()ったのかと・・・」


 「ですのでそれは、大きな誤りです。その気になれば “10匹のオーガ程度” グレイ坊ちゃまお一人でも殲滅できたはずですが、畏れ多くも “オーガとの戦闘” と言う貴重な体験をさせるべく、私達に獲物を残して頂いたのです。むしろ、私達はグレイ坊ちゃまに助けて頂いたというのが実状です。」


 「へ・・・へ~・・・」


 《・・・口止め忘れてた・・・》


 どこまで理解してもらえたかは不明だが、俺を見る目が不穏なものになってしまったのは確かだ。


 仕方ないのでニッコリと微笑みかける。

 アストラス家末弟の3歳美幼児の “天使の笑顔” だ。

 『敵意はないよ』と言わんばかりの “エンジェルスマイル” を御覧じろ!


 「お・・・おい笑ったぞ!」

 「悪魔の笑顔だ!!」

 「デビルスマイルだ!!!」



 ギィィ!・・・とボス部屋の扉が開いた。



 「うわあ!」

 我先にボス部屋に逃げ込む冒険者の面々。


 何故逃げる?

 1チームごとの入場じゃなかったの??

 なにが 『デビルスマイル」 だ???


 サラフィナ様~ 爆笑してね~で何とかしてくだせぇ・・・





 「何してんの?次行くわよ?」

 1階ボス部屋の隅でしょげる俺の背を、メイが景気よく叩いた。


 「僕の笑顔が・・・デビルスマイルって・・・」

 マジ凹むわ・・・


 「あんなタイミングで笑顔見せるからよ。元日本人の悪いクセね。」

 メイはカラカラと笑った。


 「本当に失礼な輩でしたね。坊ちゃまの素敵な笑顔を悪魔呼ばわりなど。」

 スズネもプンスカ怒っちゃいるが・・・



 撃鉄起こしたのはアナダですからね。






 2階層のボス部屋は、普通にコボルト30匹だった。


 《 いやでも十分に多いんだけどね・・・》


 昨日の今日だけに、物足りなさを感じるくらいだ。


 「終わったよ~」

 俺が ”のほほん” とお茶を準備してる間に、さりげなくレベルを上げたメイとスズネがサクっと終わらせていた。


 「お疲れ~ お茶飲む?」

 「飲む~ お菓子ある?」

 「ちょっと待ってて。」


 ダンジョンとは思えぬ “ほのぼの風景”。

 スズネが呆れたように俺達を見ていた。


 「良いのですか?ここボス部屋ですが・・・」

 「昨日のはちょっとした事故みたいなもんだと思うよ?毎回オーガが出て来たら、誰も寄り付かなくなっちゃうしね。お茶の一杯くらい許されるんじゃない?」

 「そんなものでしょうか?」

 「御主人様が良いって言ってるんだから、良いんじゃないの?スズネ先輩、はいア~ン。」


 百合百合しいね~

 うらやましいw




 十分に休憩を取った後、俺達は3階層に降りた。

  3階層のオークとゴブリン各種にコボルトの編成部隊。


  昨日はメイの “八つ当たり” で俺とスズネの出番はなかったが、今日はチーム連携の練習相手になってもらった。


 「メイ!ちょっと出すぎ!スズネ左フォローして、ウインドカッターいっくよ~」


 射線上にゴブリンメイジとゴブリンアーチャーが重なったのを確認して、まとめて切り裂く。

 遠距離攻撃の手段が無くなれば、俺達の独壇場。


 《 ほ~れ!舞い踊れ~w》




 「ふ~連携って意外としんどい。」


 一仕事終えた野生児が、肩を回しながら戻ってきた。


 前世の記憶と他人への警戒心を持ったままのソロサバイバルは、自由なバトルスタイルが許される反面、全てが自己責任となり “チーム” を組んだ時にフレンドリーファイヤーを引き起こしやすい。


 昨日の “八つ当たり” で思い知った俺はメイの風魔法を封印し、チーム連携を主体としたバトルスタイルに重点を置くことにした。


 「味方を常に意識しないと危ないからね。慣れれば楽だよ。」

 「次は私が後衛ですね。お二方とも距離の取り方に気を付けて下さい。」


 「これ意味あんの?」

 「第三者の目で戦い方を観察するのは大事だよ?単独で戦う時も視野が広くなるからね。」


 「そういうモン?」

 「そういうもんw で、ひらめいた!メイ、オセロ売ってみない?」


 「あ~ “あるある” ね。忘れてたわ~」

 「オセロ?とは何ですか?」

 「遊びだよ。陣取りゲーム。ルールは単純だけど、意外と奥が深いんだよね。」


 「宣伝戦略も考えなきゃね。なつかし~な~」

 「宣伝部だった?」

 「んにゃ総務部。よく宣伝部長に泣きつかれてた方。」

 「マルチな才能を使い潰されてたクチね。お疲れ様。」


 「アカン地獄を思い出したわ・・・」

 「おっと!次来たよ。剣構えて!」




 3階層ボス部屋前。

 幸いにも俺達しかいないようだ。

 「疲れてない?」

 「問題ありません。」

 「ヨユ~w」

 

 「3階のボスって何だっけ?」

 「複数のオークですね。ゴブリンジェネラルの時もあるようです。」


 「ここもガチャ?」

 「現時点ではオークとジェネラルの二種類しか確認されてないようです。」


 「お肉が良いなぁ~」

 野生児にとって、オークは魔物と言うより食糧に分類されるらしいw


 「ダンジョンの魔物は消えて・・・ちょっと実験してみようか?」

 「どんな?」

 「倒したら、吸収される前に収納?」

 「やる!」

 育ち盛りだねw


 俄然やる気を出したメイを先頭に、ボス部屋に突入した。

 大漁でしたw


 何でも楽しまなきゃねww





 4階層


 出会ったオークと、オークリーダーを倒しながら探索を進める。

 もはや、探索と言うより食糧確保と言うべきかもしれないが、売却する魔石も必要なのでオークリーダーの肉だけ確保という形にした。


 格上の魔物の肉が旨いという話・・・・ジェネラル転がってないかな・・・



 「しかし、ないね~」

 俺はマップを頼りに歩きながら呟いた。

 この階層から罠があるらしいが、マップに記されているだけ大分ましだ。

 発見されていない罠がある可能性も捨てきれないが、既に多くの冒険者が通るルートなので、あまり心配はしていない。


 「何か探し物でも?」

 「魔物部屋。あったら殲滅して休憩所に出来ないかな~って。」

 「それもそうね。こんなところでお弁当広げられないし・・・」


 お茶の時間に弁当広げるのか?

 食事の時間は??

 ポーチには大量の生肉(オーク)が眠っているが???


 「3階層までは罠がないだけ楽なんだろうけど、十分休んだ上で次の階層に行きたいと思うのは我儘?」

 「いえ、他の多くの冒険者も同じことを考えるでしょう。」


 《・・・だよね~》


 「ボス部屋の前は安全地帯っていうけどね。」

 「それ確認されてる?」

 「いえ、ボス部屋前でも普通に襲ってきますが?」


 《”異世界あるある” が通じないですと!?》


 「意地悪だね~ 腹ペコでボス部屋入りたくないな~」

 「ギルドに戻ったら確認してみましょう。」

 「急がなくていいよ。明日一回帰ろうと思ってるから。」


 「へ?急なんだけど?」

 俺の発言にメイが驚いたようだ。


 そんなにダンジョンが気に入ったかえ?

 

 「オセロの件でね、現物作ってセルア会長に遊んでもらって、まず領内に広めてみようか。メイ、プレゼンよろしくw」

 「いいわね。人生ゲームとかも流行りそう。」


 「テーブルゲームは長時間座るからね。官僚とか会計の仕事の人とかは良いけど、現場で忙しく働いてる人には馴染みにくいかも、識字率も低いしね・・・まずオセロで様子見ようか?作るのカンタンだし。」

 「OKOK~」


 「あの・・・人生ゲーム・・・とは?」

 すまんスズネ『蚊帳(かや)の外』でしたw





 翌日


 “草” から5000枚の金貨を受け取った俺は、さっそく馬車を借りた。


 途中、材木店で端材を手に入れた俺は、木魔法で()()()()()()とオセロボードと駒を作る。


 「うわぁ・・・気持ち悪ぃ。」

 メイが顔を顰めた。


 「こらメイ!失礼ですよ!」

 「は~い。」


 《 ふん! 出来るもんならやって見やがれ!!》


 「ペンキがないから『表』と『裏』の表記にしといたよ。後はメイ次第。」

 「了解。腕が鳴るわ~」


 がんばれ~w




 オアシスで指揮を執っていたセドア会長に声を掛ける。

 「お疲れ様です。順調ですか?」

 「グレイ様。お疲れ様です。今日はどういったご用件しょうか?」


 「一度、実家に帰ろうかと思いまして。ついでに先日お話した口座開設と、新商品の打ち合わせを・・・」

 「行きましょう!」


 《 また被せて来たヨ・・・趣味なん?》


 「ここは大丈夫ですか?」

 「問題ありません。あらかた指示は出しておきましたので、後は大工の手が空き次第工事に入るつもりです。」


 「では参りましょう。馬車の中で説明させていただきます。」





 ドンビシャスの町に着く頃。


 オセロにドハマりしたセルア会長は、商業ギルドに飛び込むようにしてメイの名で特許申請。

 ついでに俺達の身元保証人となって、口座開設に貢献してもらった。


 「あとは売り方ですね。」

 「店に置くだけじゃ、なかなか売れないものね。」

 「冒険者ギルドで人雇ったら?」

 「ああ、な~るね。」


 メイは納得したようだ。

 以外と ”転移物” 読んでるねぇ・・・君?


 「どういうことでしょう?」

 俺の発言に、会長とスズネが首を(かし)げる。


 「見目のいい冒険者に、ギルド内や町のあちこちで実践で遊んでもらうんですよ。ゲームは見ても楽しめるものだからね。」


 「そんな冒険者の使い方もあるんですね。」

 セルア商会長は関心しきりだ。


 「基本『何でも屋』ですからね。遊んで小銭が稼げるなら誰でも飛び付くでしょう。」


 「マネする業者も出て来そうですね。」

 「真似されないための特許なんだけどね。不安ならロゴマークで焼き印でも入れてみる?製造番号付きで?」


 「それもどうかな~?」

 悩め悩め~若者よw


 「会長。ボードは大小色々作った方がいいですよ?旅先で楽しめますし・・・折り畳み式のボードなんかも良いかもしれません。」


 「成程、参考にさせていただきます。」


 「メイ。俺達は先に帰るよ。あまり遅くならないように。ノワール、メイに付いてやって護衛ヨロシク。頑張ってね。」


 「は~い。」

 「にゃ!」


 ノワールを頭に乗っけながら、あれこれ悩むメイを放置。

 俺とスズネはギルドを出た。



 「大丈夫でしょうか・・・」

 「オセロは俺達の世界でも大成功したゲームの一つだよ。『勝ち馬』の一つと言ってもいいくらい。後は売り方だろうね。」


 「そうですか・・・」

 「羨ましい?でも、スズネにも一枚かんでもらう予定だけど?」

 「え?私もですか?」


 俺は目をを丸くする見目の良い “傍付きメイド”にニッコリと笑いかけた。


 オマエモマキコマレテシマエ・・・


 「そ。別な新商品でね。当たれば良い小遣い稼ぎになるかもね。楽しみにしててw」






 馬車を返しテクテクと歩く。

 「貴族が歩いて帰るなど・・・」と、スズネが何か言ってたが気にしない。

 俺は庶民派なのさw


 「おかえりなさいませ。」

 門番に挨拶をして玄関に入ると、筆頭執事が丁寧に出迎えてくれた。


 「セバス。久しぶり。父上と母上は?」

 「皆様は居間でお待ちになっております。」

 「ありがとう。」


 「あと魔法省からお届け物が届いております。」

 「ん?」

 「上級の魔導書のようです。なんでもダンジョンに彫られていた碑文の解読の礼だとか。」

 「Yes!」


 《 国王が手を回してくれたんかね?何にせよ感謝!》


 俺は足取りも軽く居間に向かった。


 「ただいま帰りました。」

 居間には父、母の他にもサルカス兄やマリア姉が揃っていた。


 「おかえり。無事だったか。」

 「はい父上。少々大変でしたが、怪我はありません。」


 「心配していたのですよ。」

 「大丈夫です母上。安全第一で潜っていますので、メイやスズネもいますし。」


 「そのメイは何処だ?いないようだが?」

 「所用で商業ギルドにいます。じき帰って来ます。」


 「グレイお土産は?」

 「マリア姉様、すみません。“不毛の地” はまだ開発途中で、大した店は出ていないのです。皆、頑張っているのですが。」


 「つまんな~い。」


 「ダメですよマリア。グレイは大事な御勤めで “不毛の地” まで出かけているのです。無事に帰ってきたことを喜ばなければ。」

 「は~い。」


 《 エエんよ。マリア姉はそのままでw》


 「ところで兄様。実験機の方は如何でしょうか。」

 「じき完成する。明日、父と視察に出るつもりだ。お前も来い。」

 「ありがとうございます。嬉しいです。」


 「ああ、お前のアイデアも、親方(おやかた)達が面白がってたぞ。」

 「見るのが楽しみです。」


 《 普通に話してくれるようになったね~ 泣いて良い?w》


 「ダンジョンの中はどうだった?聞かせてくれ。」

 「まだ、4階層までしか行けてませんが、ギルド内の情報によると・・・」


 それから夕飯の時間が過ぎても、俺達は家族の団欒を楽しんだ。






 夜


 俺は父の書斎の戸を叩いた。

 「グレイです。少しお話があります。」

 「入れ。」

 「失礼します。」


 《 お?テーブル入れ替えたんやねw》


 「何だ?」

 以前より立派なテーブルに、これでもかと書類が積まれている。


 「大変そうですね。」

 「・・・まあな。だが、これも領のためと思えば遣り甲斐もあるものよ、」


 「尊敬します。父上の御傍にいる兄様が羨ましいくらいです。」

 「謙遜するな。コッカスから聞いたぞ。ずいぶんと羽を伸ばしているようだな。」


 「誤解ですよ。毎日スズネとダンジョンにシゴかれています。本当は昼寝でもして呑気に暮らしたいんですが。」

 「お前の年頃なら、それが普通だろうな・・・苦労をかける。」


 「お気になさらないでください。自分で決めたことです。後悔しない程度には頑張るつもりです。」

 「先走りすぎるなよ?ミレイが泣く。」


 「慰めるのは父上の役目ですよ?」

 「これ以上、仕事を増やすな。過労死するぞ。」


 「兄上が踏ん張りますよ。」

 「兄弟を巻き込むな。サルカスも泣かすつもりか。」


 「兄上の泣いた顔ですか?一度見て見たいですね。」

 「アイツが泣くと手に負えん。要件は何だ。」


 俺は包装された箱を差し出した。

 「お受け取り下さい。」

 「これは?」


 「ポーチ型のアイテムボックスです。」

 父フリーズw


 「・・・いま・・・何と言った?」

 「ポーチ型のアイテムボックスと言いました。開けてみてください。経緯を説明します。」


 俺はダンジョン一階に未発見の宝箱を探し出し、アイテムバッグを見つけたことを話した。


 父は聞きながら高級な革製品を扱う店で奮発したお洒落なポーチを確認し、手を突っ込んだり、ペーパーナイフを出し入れしたりしている。


 俺は苦笑しながら、話を続けた。


 「・・・で、そのアイテムバッグを解析して、ポーチに付与みました。」

 父フリーズ 2回目~ww


 「・・・付与した?」

 「はい。お金が必要だったので、セルア会長に頼んでオークションに出品する前に解析を試みたら・・・出来ちゃいました。」


 「・・・出来ちゃいましたって・・・」

 言いたいことは解るw


 「出来ちゃったものは出来ちゃったんです。サラフィナ神様の御加護かもしれませんが出来ちゃったんです!」

 ここは押すしかあるまいよw

 サラフィナ様・・・メンゴ!


 「・・・そ・・・そうか・・・」

 「ポーチの性能を説明しても良いですか?」


 「ああ・・・いや、ちょっと待て!」

 父はテーブルの脇に置いてある水差しから、水をぐいと煽った。


 「まったく!お前といると寿命が縮む思いだ。」

 「犯罪者予備軍みたいな言われようですねw」


 「今になってミレイが “普通の子であるように” と願う気持ちが分かった気がするぞ。」

 「なかなか “親孝行” が出来ず申し訳なく存じます。」


 「その台詞サルカスの前で言うなよ。あいつがグレる。」

 「気を付けます・・・ああ、そう言えば・・・」


 「まだ何かあるのか・・・」


 「オークションに出すアイテムバッグの予想販売価格が2000枚を超えるそうですので、そのうちの半分を “不毛の地” の工場建設に、残りの半分を父に渡すようにと、セルア商会長にお願いしています。お役立てください。」

 父フリーズ 3回目~記録更新なるか!?


 「・・・そうか。」

 立ち直り早!

 順応してきたかな?


 「ポーチの話に戻ってもいいですか?」

 レディ~ ファイ!!


 父は力なく座り直した。

 ゲンド〇さんスタイルw


 「話せ。」

 「まず、そのポーチの内容量ですが、およそこの屋敷がすっぽりと収まる程度だと思っていただいて間違いありません。」

 父フリーズ 4回目~w

 


 「・・・いや・・・もう驚かん・・・それだけか?」

 十分驚いてるヤンw


 「いえ、時間停止機能付きです。」


 あ!

 いま一瞬白目向いた!?

 おしい! 踏ん張ったかww


 「・・・で?・・・」

 父ガンバ!www


「強固な結界付きです。試しにそのナイフで刺してみてください。傷一つつかないのは検証済みです。」


 父は手に持ったペーパーナイフを、ほぼ全力で振り下ろした。

 ガキン!と、ナイフが折れる。

 呆然と、折れたナイフを見ていた。


 「・・・以上です。」

 父ツカレタね~ww


 背もたれに身体を預けた父は、大きく息を吐いた。


 俺はもう一つ、ピンクのリボンのついた箱と、色違いの二つの箱を並べた。


 「・・・これは?」

 「こちらは母上に。内容量は少し小さめですが、時間停止と結界が付いてます。後の二つはサルカス兄様とマリア姉様に、内容量は母上の物よりさらに小さめですが、他の機能は同等です。」


 「・・・お前が渡せば良いではないか。」

 「母上の白目をむいた姿を見たくありませんのでw・・・それに・・・」


 「それに?」

 「兄様と姉様の分は、父上が認める成人になるか、輿(こし)入れまで預かっててくださいませんか?」


 「・・・遺品にするつもりか・・・」

 「そんなつもりは毛頭ありませんが、僕等はまだ脇が甘い子供なのでw」


 「・・・解かった・・・預かろう・・・」

 父は二つの箱を、丁寧に金庫に仕舞った。


 「これ一つだけでも、国宝級だな。献上はしないのか?」

 「安全面には十分に気を使ってるつもりですが、まだ少し改良の余地がありそうです。納得のいく物ができたら、国王陛下、王妃殿下、ノルグナー公爵閣下、サルムンド侯爵閣下に献上しようかとも考えてますが、いかがでしょうか?」


 「うむ。悪くないな。お前がこの国で自由に動き回りたいのであれば、そうした方が良いだろう。」

 「解りました。改良を急ぎます。」


 「無理はするなよ。」

 「ギルマスからお聞きになられたのでは?けっこう羽を伸ばしてますよ?」


 「ふっ・・・言いよる。」






 退室した俺は自分の部屋に戻るべく玄関前のロビーまで歩き、そこで足を止めた。

 「出て来い。セバス・・・」


 小さく、怒りを抑えた声で呟く。


 吹き向けの渡り廊下を支える柱の陰から、ゆるりと執事が姿を見せた。


 全く・・・

 これだけ気配が薄いと探す方が苦労する。


 「・・・付いて来い。」

 俺は先頭に立って、自室へと歩いた。


 セバスは無言だ。


 部屋に入り、二人きりになると結界を広げた。

 これで多少のの物音は漏れないはず。


 多重思考。並列思考。


 セバスも俺が何をしたのか理解したようだ。

 「・・・お見事ですな。」


 俺は無造作に椅子に腰かけた。


 散視。

 敢えて相手を凝視せず、視野を広げる。

 咄嗟の動きに対応するためだ。


 「盗み聞きが趣味とは知らなかったぞ。」


 「お屋敷の管理が私の仕事なので・・・」


 「それは母の役目だ。お前は補佐にすぎない。」


 「そうでしたな。大変失礼いたしました。」

 恭しく頭を下げる。


 「父上は知っているのか?」


 「はい。ご存じです。」


 俺は溜息をついた。

 「それでか・・・」


 「・・・と、おっしゃいますと?」


 「俺がドアをノックしてからの返事が早かったからな、お前が知らせたか。」


 「その通りでございます。」


 「・・・で?どうする?」


 「どうするとは?」


 「お前が『元暗殺者』であったことは知っている。父上を殺して、ポーチを奪って逃げるか?一生遊んで暮らせるぞ。」


 「『勇者』様の御父上を・・・ですか・・・逃げおおせるとは思えませんな・・・」


 「ではどうする?」


 「私は『暗殺者』である前に執事です。他の執事より多少は高いお給金を頂いておりますが、それはあくまでアストラス家の御家族をお守りするため・・・それ以上でも、それ以下でもございません。」


 「・・・父上に雇われて何年になる・・・」


 「そうですな・・・13年ほどになりましょうか・・・」


 「・・・これをやる。」


 俺は無造作に、黒いポーチを投げた。


 「これは?」


 「アイテムボックス。父上のは機能が高すぎて売るの難しいだろうが、それは王都のアストラス家の屋敷が入る程度のものだ。時間停止と結界が付けてある。」


 「・・・よろしいので?」


 「もう断りなく盗み聞きはするな。俺が傍にいる時は、俺が父上を守る。」


 「畏まりました。」





 静かに部屋を退室したセバスが自室に戻ったとき、初めて 『汗』 を掻いていたことに気付いた。


 喉が・・・カラカラに乾いていた。


 「・・・恐ろしい・・・御方だ・・・」

 セバスは久しぶりに恐怖というものを思い出した。



次回 3月21日更新予定です。

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