21 ダンジョンとアイテムボックスと悪ガキと・・・
翌朝。
露店の朝は早い。
日の出前から準備を始め、通りを歩く冒険者に声を掛ける。
ゆっくりと朝食を終えた俺達は、露店を冷やかしながらのんびりとダンジョンに向かって歩いていた。
「いいの?もう行列が出来てる頃だよ?」
メイが、やや不安げだ。
「ちょっとね。」
俺はいくつかの露店にあるポーチを手に取ってみる。
《・・・ん~、高い割には縫製が甘いな。すぐ破れそうだし・・・ん?》
スズネさんの目が留まってらっしゃる。
視線をたどると、花柄の可愛らしいポーチに目を奪われているようだ。
《・・・実験だし、いいか・・・》
「これと・・・メイ、どれにする?」
「私もいいの?じゃ。コレ。」
機能性重視のポーチっすか・・・逆じゃね?
余計なことは言わず、ポーチを二つ購入。
「宿に戻るよ。」
俺は踵を返した。
「あ~、アレ、解析できたの?」
「そゆこと。」
メイさん名推理w
部屋に戻った俺は、二つのポーチを並べた。
結界発動。
「お~、これ結界?」
メイさんビックリ!
俺も驚愕w
「声や物音が漏れなければ良いんだけどね。」
「強固な結界ですね。問題ないと思います。」
スズネ様のお墨付き頂きましたw
昨夜。
早速とばかり、自分の上着のポケットに付与を試みたが、見事に消滅した。
結界張るのが先だったか・・・
次いで、替えのズボンのポケットに結界を付与。
底なしの空間が広がった。
・・・使えねえ・・・
失敗した『異〇元ポケット』を弄りまわしてるうちに、結界の強度と形態が必須であることに気付き、少し複雑化した結界を書き出してみた。
ズボンの反対側のポケットに再チャレンジ。
結果、片方は『異〇元ポケット』もう片方は『体育館サイズのアイテムボックス』という奇天烈な仕上がりになった。
「ついでだ。時間停止も付けちゃえ」
ダンジョン産のバックから解析した術式を片っ端から付与。
世界に一つしかない “素敵ズボン” が誕生した。
すぐ灰にしたがねw
だって “アイテムボックス“ と “付与スキル” 獲得したんだモンww
んで
今度は買ったばかりのポーチで試してみようって事で・・・
俺は二つの真新しいポーチを覗き込み、アイテムボックスを付与した。
術式がバレないように隠蔽と偽装も付与。
ついでに破れにくいように、結界も付与。
丈夫に育てよw
「本当に頂いても宜しいのでしょうか・・・」
恐縮しきりのスズネさんだが、実験ということで納得させた。
「やりぃ!アリガト!」
メイさん素直w
「使い勝手を試して欲しいんだ。この宿程度なら、建物ごと楽々入る広さだし、手を突っ込めばどこに何があるか判る。時間停止機能も付いてるよ。」
「親切設計ね」
「気を使ってみましたw 報告ヨロシク。」
「了解。」
宿を出た俺達が次に向かったのは、オアシスだった。
セルア商会の会長に会うためだ。
幸いにも、会長は数人の従業員と打ち合わせをしている所だった。
簡単に挨拶を済ませ、ダンジョン産のマジックバックを見せる。
もちろん “驚きの食いつき” だった。
食い入るように見分し、時間遅延機能付きだと説明すると、オークションに出せば金貨二千枚は下らないだろうと言われた。
ならば、やることは一つ。
「いま、現金で用意できるのはどのくらいですか?」
「今、ご用意できるのは金貨50枚程度かと・・・」
「では、急遽必要になったので20枚ほど僕に下さい。残りのお金の半分は工場の建設費用に充ててもらって構いません。残りの半分は父に渡していただけますか?」
「願ったり叶ったりですが・・・宜しいのですか?」
「構いません。お願いします。」
金貨の入った袋を手に分かれた俺は、そのうちの10枚を手に取った。
「スズネ “草” との連絡は取れる?」
「・・・いつでも。」
「ザッカさんや監視の気配が消えたのが気になる。無理しない程度に王宮の動向を調べてもらえる?僕はダンジョンに向かうよ。」
俺はスズネに金貨十枚を渡した。
「畏まりました。」
スズネは一礼すると、音もなく町へと走り出した。
《・・・忍者走り・・・さすがだね~》
「王宮の体制が変わったのかな。」
メイは俺と共に歩きながら呟いた。
「良いほうに変わるのなら万々歳だけどね。この場合の『良い方』ってのは僕にとって都合の良い方向だけど・・・」
「民草にとっては?」
「現状維持か、税金が安くなるか・・・かな?」
「世知辛いわね~」
「異世界でも “政治”は “政治” ってことさ。」
「発言がジサマなんだけど?」
「前世ジサマだしな・・・って、ほっとけ!」
わちゃわちゃと喋りながらダンジョンへと歩いた。
町に付く前に、3人のオッチャンにちょっと絡まれたが・・・
「ど定番・・・」
メイさん大活躍でしたw
鑑定では『冒険者』の他に『人攫い』の称号が付いていたので、少々乱暴に対応してもご愛敬w
俺?
何もしてないワケじゃないよ?
メイよりレベル高い野郎は水魔法で溺れさせてたし・・・秘技 ”水風船” なんちてw
弱冠一名。
右手首から先を失った奴がいたが、血止めはしておいたので問題ないw
「つまらぬものを切ってしまった・・・」
血のりを振り払いながら呟く。
五右衛門て呼んで欲しいのかな?
担げ?
ムリっしょ??
息の根止めてポーチに放り込んだほうが楽なんだよ???
そうしないのは ”優しさ” なんだよ????
誘拐組織の情報源なんだよ?????
どうせ下っ端だろうけど・・・
早速セバスに用意してもらった『ジャイアントハンティングスパイダー』が活躍してるしw
「これハンティングスパイダーの糸なんで、暴れたら細切れになりますよ?」
素直に頷くオッチャン。
悪い事しなきゃいいのにw
ともあれ、ギルマスさん。
お仕事増やしてコメンナサイw
ダンジョン入口にできた行列の最後尾には、スズネが待っていた。
「遅かったですね。メイ?血の匂いがしますが?」
「ちょっと野暮用でね。」
ギルドに運ぶのが面倒になった俺は、ドンビシャスから派遣されていた私兵を見つけたので彼らを引き渡していた。
列から少し離れる。
「何かわかった?」
「教会と過激派が繋がってたようで、過激派の高位貴族の何人かが取り調べの憂き目にあっているようです。」
「ザッカさんとも繋がりがあるかな?」
「そのようです。『梟』と呼ばれる組織も打撃を受けたとか・・・」
「『梟』ね・・・暗殺とかもしてた?・・・」
「そうです。私達と違い、『情報』と『暗殺』の両方を請け負うことが多い武闘組織だったので・・・」
「そっか・・・」
《 なら潰れても問題ないか・・・》
「それから、お願いが・・・」
スズネが言いにくそうに付け加えた。
「なに?」
「長がお金を払うので “アイテムボックス” を作って欲しいと・・・」
「花柄バレちゃった?」
「申し訳ございません。」
「いいよ?」
アッサリと了承した俺に、スズネが驚いたようだ。
「・・・宜しいのですか?」
「“草” とは仲良くしておきたいからね~投擲武器は消耗品だし、お友達価格で作るよ。あ、ただし金属のアクセサリーはダメだよ。まだ実験もしてないからね。袋とかバッグ、ポーチならいいよ。」
「・・・ありがとうござます。」
スズネが恭しく頭を下げた。
「それからスズネは冒険者の再登録しておいてくれる?素材売るのに商業ギルドに足運ぶのも面倒だし、セルア会長も忙しいみたいだしさ。」
「畏まりました。」
ダンジョン1階層のボスはゴブリンリーダーと10匹のゴブリンだった。
「ちょっと多くない?」
のっけからファイヤーボールで頭部を吹き飛ばす。
「そう?こんなもんじゃないかしら?」
リーダーを失って右往左往するゴブリンたちを、舞うようにメイとスズネが倒す。
「1階層のゴブリンとスライムは、ほぼ壊滅状態でしたからね。ボス部屋はそう感じるのかもしれません。」
「そういうもんかな。」
「そういうモンよ。」
最後の1匹となったゴブリンの頭を叩き割りながら、メイが答えた。
返り血でスプラッタになってるよw
《 変動後が恐いな~》
「とりあえず2階層も気合入れて行こう。マップある?」
「こちらですね。」
スズネがギルドから支給されているマップを広げた。
浅層のマップは無料で支給されているが、6階層辺りからのマップは有料になっているらしい。
「今日は何処まで行く予定?」
「2階層最奥?とにかく数こなしたいからね~ 魔物部屋ある?」
「ここに分岐があって、左が進入禁止エリアだそうです。ここが怪しいですね。」
スズネと頭を突き合わせていると、メイが声を掛けてきた。
「新発見! 見て見て!」
「? どした?」
「こうやって、魔石踏むと・・・ほら、収納できた!」
《 そりゃビックリ!》
「そんな機能まで付いてたんですね。」
「いや、僕も知らない。」
「へ~、そうなんだ。どっちにしろイチイチ拾わなくて済むならそれに越したことはないけどね。」
「確かに・・・」
売値が上がりそうだw
2階層ではゴブリンのほか、ホブゴブリンやゴブリンアーチャーが出てきたが、俺の結界魔法の強度を図る実験に付き合ってもらっただけだった。
「なかなかの強度ですね。」
「そうだね。囲んでしまえば、叫んでも音漏れしなかったし、時間を掛ければ窒息も可能かな?」
「御主人様の魔法は通るの?」
「試してないけど多分ムリだろうね。結界内に入らないと・・・」
「そう都合よくいかないか。」
「やり方はあると思うよ?」
「どんな?」
「もうちょっとレベル上げてから試すよ。」
「お楽しみね。」
それはそうと・・・
「なによ?」
俺はニンマリとメイを見た。
「初めて『御主人様』って呼ばれた気がする。」
お~真っ赤になったw
「あたりまえでしょう!私は『奴隷』なんだから!」
「そうですね~ イイ子イイ子w」
「ちょ!何ヨ腹立つ~ この『坊ちゃん詐欺師』!」
「はいはいw」
ちょっと離れた通路で元気よく戦闘している横を、俺達はきゃっきゃワイワイと通り過ぎる。
戦闘中のチームには、助けを求められない限り手を出さないのが暗黙のルール。
すまんな諸君。
頑張ってくれたまえw
「この先の分岐路。左側が進入禁止になっています。」
マップを見るスズネが告げた。
「メイ。どう?」
「気配なし。そっちは?」
「俺も感じない・・・」
俺とメイの気配察知は、けっこう広範囲だ。
それでも何も感じないとなると・・・
「罠?」
「金糸鳥のアッサムさんは3階層までは罠がないって言ってた気がするけど?」
「進入禁止には何か理由があるはずですが・・・」
俺は少し考えて結論を出した。
「うん。予定変更、2階のボス部屋に向かおう。」
「行かないの?」
「好奇心猫を殺すってね。藪を突ついて蛇に噛まれたくないし。」
「それもそうね。」
「えっと・・・今の言い回し?は、どういうことでしょう?」
この格言もコッチにはなかったか・・・
「数はこなしたいけど危ない橋を渡る必要はないってこと。正規のルートを辿りながら魔物部屋を探してみようか。」
その後、正規ルートを辿るついでに大量の魔物の気配を感じ取った俺達は、ルートをはずれ念願の ”ヒャッハー” を果たした。
ゴチソウサマでしたw
2階層最奥まで辿り着いた俺達は帰還門と使って一階層のロビーに戻った。
「戻ってこれたは良いけど、明日また1階層からでしょ?面倒じゃない?」
「都合よく周回してると思えばいいさ。基本は大事w」
「都合よく、ねぇ・・・なんかゴブリンが可哀想。」
「話しかけて友達になってみる?」
「果てしなくイヤ!臭いし!」
「じゃあ諦めて排除しよう。経験値稼がなきゃ。」
「はいはい・・・」
実際の話、どこから大量のゴブリンが湧いて出て来るのか疑問に思わないでもないが、ただいま絶賛修行中の身。
出会ったゴブリンには盛大に散ってもらうことにしよう。
屋台で食事を済ませ、部屋に戻ると木箱が一つが置いてあった。
「“草”からですね・・・こんなに沢山・・・」
スズネさん呆れてますw
「ポーチに小袋。バッグ・・・デザインも色々か。倉庫ひっくり返したのかな?」
「だと思います。埃被ってるようですし・・・あ、これ・・・」
「知ってるのがあった?」
「師匠の愛用のポーチですね。」
「ご健在?」
「元気ですよ。呆れるくらいに。」
苦笑してるよw
「んじゃ、気合入れないとね。」
俺は手当たり次第に、次々とアイテムボックスを付与していった。
「2階層のボス部屋はコボルトが多数だそうです。」
冒険者の再登録を済ませたスズネが情報を取ってきた。
ギルド支部は、まだ建設中の為、でかいテントがいくつか並び、簡素な受付とテーブルがそこかしこに並んでいる。
俺とメイは隅のテーブルを陣取り、足をブラブラさせていた。
「コボルトが多数?」
「3匹の時もあれば30匹の時もあるとか、多くの冒険者が泣きを見るそうです。」
《 そりゃ泣くわw》
「ガチャ部屋か~」
メイがうんざり顔だ。
「がちゃ部屋?とは?」
「引いた数が一定じゃないってこと。引きが悪いと凶悪モンスターに当たることもあるらしいけど?」
俺が苦笑交じりに説明した。
「今のところコボルトだけ?」
メイさん。なにか素敵な思い出あるのかねw
「報告ではそうなっています。」
「油断できないね~・・・メイ、スズネ。武器屋に行こう。予備の武器が必要になるかもしれない。」
何件かの武器屋を梯子し、良さげな武器を調達した。
「御主人様は武器買わないの?」
「これ仕込み杖でね。同じようなのは手に入りにくいし、魔石付きは高すぎるし、もともと素手でも魔法使えるからね。」
「だからといって油断はなりません。今からでも予備の杖を購入されてはいかがでしょうか?」
スズネさんの心配も解るんだけどねw
「別にダンジョンを侮ってるワケじゃないんだけどね・・・ないんだよ。」
「ないって?杖が?」
「そう、この杖は魔力の通りが悪くてね。逆にそれがブレーキになってダンジョン内で程よい感じに魔法打てるんだけどね。」
「魔力の通りやすい杖だと、杖の方が持たないと?」
「そゆこと。サイズも合わないしね。」
俺が通常サイズの杖を持ってると、杖が本体だって思われそうだ。
メイは呆れたようだ。
「魔力が強すぎるってのも不便ね。いいわ。私とスズネ先輩ならコボルト程度、何百匹いても問題にならないから、今度魔道具展で相談してみましょ。」
な~んて
励まされた日もあったよ。
今日だよ。
数時間前だよ。
なんて日だ!
2階層ボス部屋。
律儀に並んで、因縁吹っ掛けて来る冒険者らをスズネの威圧で黙らせて、意気揚々と中に入ると・・・
オーガだよ・・・
レベル40越えのオーガ10体・・・
コボルト何処行った?
似ても似つかぬ巨体が勢揃いしてるんだが?
今日は厄日か?
日頃の行いか?
仕方ない・・・
「俺が出る・・・」
ちょっとアタマに来て、乱暴な口調になったが勘弁してもらおう。
剣を構えたまま青くなってる二人を尻目に、俺はスタスタと歩いた。
正気に戻ったスズネが警告する前に・・・
仕込み杖を抜刀一閃。
『空間斬』
怖くて使えなかった ”空間魔法” で、奥にいたオーガ数体の胴体をぶった切り、比較的近くにいたヤツの足をまとめて切断した。
「メイ!スズネ!止めを!!」
鋭い声で二人を正気に戻す。
足を失って痛みに悶えるオーガ打ち取るのは、そう難しくないだろう。
「「は、はい!」」
結局、俺が打ち取ったオーガは7体。
スズネが2体。
メイが1体
「頑張ったね~」
のほほんと声を掛けてみる。
「なんかすっごい理不尽!ねえ、この怒り誰にぶつけたらいいの!?」
「ん~~~・・・コボルト?」
「ソレがいないじゃないの~~~!!!」
メイさんの怒りがボス部屋に響いた。
「隠してたんですか?」
怒りに震えるメイを尻目に、スズネが声を掛けてきた。
「ん~ 隠してたっていうより、怖くて出来なかったって言う方が正しいかな?」
俺は奥の壁を指差した。
『空間斬』の余波でボス部屋の壁が横一線に切れている。
「加減間違えて崩落事故なんて洒落にならないでしょ?」
「・・・その心配はないと思いますが?」
よく見ると、切れた壁がゆっくりと自己修復していた。
「・・・思い切りぶっ放してみてもいい?」
「それはお止めになられた方がよろしいかと・・・」
「・・・だよね~」
3階層は普通のゴブリンの他、ゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジ、ホブゴブリン、コボルトにオークが混ざっていた。
《 オークとゴブリンにコボルトって仲いいのか?》
どうやらココではそうらしい。
「ねえ・・・メイさんまだ怒ってる?」
予備のショートソードを左手に握りしめて二刀流で無双するメイを、スズネと眺めながら聞いてみた。
もちろん。
魔物のレベル見て、魔法でフォローはしてるよ?
でないと気配察知した途端に、えらい勢いでかっ飛んで行くんだもの・・・
「そのようですね。」
スズネさん冷静だね。
「訳。聞かない方がいいかな?」
「その方がよろしいかと・・・」
オトメっておっかないのねん・・・
3階層のボス部屋まで来た。
さすがのメイさんも少し息が上がっているようだ。
「じゃ。今日はここまでにしようか。」
「明日もまた1階層からか・・・イヤになるわね。」
「下層に行くほど時間が掛かるからね。食料とテントが必要だね。」
「この分だと、踏破を狙うには数百人規模のクランが必要になりそうですね。」
「物資を運びながらの戦闘か~ 気が遠くなりそう。」
「ポーチの容量でどこまで行けるかしらね。」
宿屋程度の容量じゃ不安かね?
「徐々に下りながら、考えて行こうか。最悪容量を増やすか、アイテムを複数持つか決めないとね。」
◆◆
”不毛の地”の、とある店。
何ら変哲もない真新しい飲食店。
早々と閉店した店のテーブルには、大小20個のバッグやポーチが並べられていた。
その周りには、三人の老人と、五人の白髪交じりの男女がテーブルを囲んで立っている。。
「これだけの数を一晩で・・・確認したのか・・・」
「はい。性能はすべて同一。王都の下級貴族の屋敷が入る程度の容量で時間停止機能。追加情報で、アイテムを身に付けていれば触れただけで自動収納が可能だとか・・・」
「・・・聞きしに勝るな・・・」
一人の女性が、ポーチに手を伸ばした。
「あたしの愛用のポーチが、国宝級のアイテムボックスになるなんてねぇ。あの娘も素敵なボウヤを捕まえたじゃないか。大事にしないとね。」
「オークションに懸ければ。一体いかほどか・・・」
「近くダンジョン産のアイテムバッグがオークションに出されるようですが、この10分の1以下の容量で時間遅延機能付き、予想価格は金貨2000枚程度とか・・・」
誰もが息をのむ中、女性だけが大きく笑った。
「はっはっは!この10分の1以下の性能で金貨2000枚!? あたしの今までの稼ぎでも到底かなわないねぇ?こりゃとんでもない借りを作っちまったもんだ!」
「で・・・先方は何と言っておる・・・」
「金貨5000枚で良いと・・・」
「は?アイテムボックス2つ分以下だと!?何の冗談だ?」
「性能考えれば、1個分だね。20分の1さ。どうするんだい?」
「・・・本当に、5000枚で良いのか?」
「条件があるそうです。」
「条件・・・聞こう・・・」
「今後の王国の情報を無料で提供すること、ついで同様の情報を包み隠さずアストラス領主に伝えること、予備の仕込み杖と投擲武器の無料配布・・・だそうです。」
「・・・そんなことで良いのか・・・」
「その際の・・・情報を入手する際の絶対条件として、無理をしないこと、生命を掛けてまで情報を入手しないこと・・・です。」
「はっはっは!こりゃ一本取られたね!正確無比な情報入手に命を懸けるアタシらに無理をするな?雲をつかむような噂話を実しやかにたれ流せと言ってるのかい?馬鹿にしてんのか!?」
女性がダンとテーブルを叩いた。
「あの・・・そう言われるだろうとも言っておりまして・・・」
「なんだい!」
「その際の返答は一つだけ・・・アイテムボックスはくれてやる。だが、これ以降の取引には一切応じないと・・・」
「・・・」
「・・・完敗・・・だな・・・」
「ヨーデル王国の神童とは、よく言ったものよ。」
「・・・金貨5000枚用意しろ。条件も全て飲むとな・・・」
「ちっ!スズネのヤツ!とんでもない悪ガキ捕まえよってからに・・・」
「諦めろ。相手の方が一枚も二枚も上手だ。」
「・・・ちっ!・・・」
『素敵なボウヤ=悪ガキ』説w
次回更新 3月18日の予定です。




