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12 訓練と香ばしい偶像

ちょっとだけ溜まったので、少し更新を早めますよ


 朝食後

 飯食ったら復活!


 若さなのか状態異常無効化スキルの恩恵なのか・・・

 あまりに早い回復力に戦々恐々としつつ、森に入った。

 もちろんスズネも一緒だ。



 「ヨロシクお願いしますぅ。」

 メイドのメイサが木刀二本を片手に森の空き地に歩いてきた。

 剣の稽古なので裏庭でも良いのだが、あまり賑やかだと兄の勉強に差し障りがあっても困る。


 《・・・ってなわけで、引き続きこの場所で訓練することになったのだが・・・》


 メイサ・フォラデウス 19歳 レベル28


 フォラデウス男爵領の三女らしい。

 栗色の長い髪を三つ編みした、童顔そばかすの女性だ。

 少し垂れ長の目が可愛らしい印象を与える。

 隣に控えるスズネの説明によると、女性騎士を目指していたが、とある理由で頓挫(とんざ)したとか。

 無造作に歩いているが、重心は安定しているようだ。


 《 うん。ぱっと見強いか弱いか解らん。》


 強い部類であることは間違いないんだろうが・・・


 「ふわ~! 話には聞いてたけど、ホントに “ため池” できてるぅ!」

 ですよね~

 木剣を胸に抱いて無邪気にぴょんぴょんと跳ねる仕草がシュールだ。



 《 魔法の水だから消えてもいいと思うんだが、何故か残ってんだよね。》

 《 水魔法って、空気中の水分を搔き集める魔法なんかね?》


 ♪おミズさん~アナタどこから~いらしたの~♪


 《 ようわからん・・・》




 「メイサ、よろしくね。」

 とりあえず、にっこり挨拶。

 何はともあれ笑顔は大事!


 「セバス様から聞きましたぁ。剣の型と基本訓練でいいですかぁ?」

 「そうだね。あと余裕があったら、軽く模擬戦の相手もしてほしいかな?」

 「模擬戦ですかぁ?わかりましたぁ。」


 「メイサ。坊ちゃまのレベルは10を越えています。」

 「え~、そうなの? 油断できませんねぇ。それじゃぁ早速ぅ素振りからぁ。」


 両刃の直剣は初めてだが、とりあえず振ってみる。

 「お~!握りはイイですねぇ。でも、振り上げた時は気を付けて下さいねぇ、両刃ですから、自分の頭切っちゃいますよぉ?」


 細々した諸注意を受けて、角度を変えて振る。





 「ん~?」

 メイサはじっと見つめながら首を捻った。


 「メイサ?」

 「悪くないんだけどなぁ、両刃の剣じゃ怪我するかも・・・スズネの剣のほうが馴染んでない?」


 「そうかもね。初日から “草刀(くさとう)” も、そこそこ使いこなしてたし。知識もあった。」

 「そう? 剣の返し方が片刃のそれなのよねぇ。続けるぅ?」

 「後で坊ちゃまと相談してみるわ。とりあえず続けて?」

 「りょうかい~」




 《 まあ、そうなるか・・・》


 木剣を振り回しながら聞き耳を立てていた。


 道場にこそ通わなかったが、前世は我流で居合やってたからか?

 隣のオッサンが 自称 “鹿〇流忍術” 師範だとか?


 《 一升瓶が稽古料だったもんな~ 》

 《 通販で買った “撒菱(まきびし)” 踏み抜いて騒ぐ人だったもんな~》



 一通り振り回して、型を習う。


 《 大分勝手が違うな~》


 「どうします? 模擬戦やってみますぅ?」

 「なんでも経験だね。お願いします!」

 「はあい。」




 って、普通にコテンパンにされました・・・






 昼食。

 食ったら復活の理不尽な幼児体質。


 ・・・カミサマ?・・・


 「・・・お元気ですね・・・」

 スズネさんも引き気味だ。

 気持ちは解る。


 トコトコと庭に出ると、オッズが休憩していた。

 「おかえりなさい坊ちゃん。セバスさんから話は聞きました。水車小屋作るんですって? あんな雑な説明で大したもんだ。」

 「いや、十分役に立ったよ。ありがとね。」


 「出来たら見に行きます。楽しみだなぁ。」

 「実験的なモノだから本場に比べたら小さいだろうし、今はサルカス兄様が主導で作ってるからね。」

 「ほ~サルカス様ですかい? 兄弟そろって優秀なモンだ。 んで? 今度はダンジョンの話ですかい?」

 「うん。今日明日ってワケじゃないけど、階層式のダンジョンって入ったことある?」

 「一般的なヤツですね。もちろん入ったことありますが・・・お一人で?」

 「それはないね~ ”チーム” 組まないと危ないでしょ?」

 「そーですね。ま。階層の浅いトコなら単独でってヤツもいましたがね。中層からは ”チーム” でないと自殺行為っすからね。」


 こうして休憩時間いっぱいを使って、ダンジョン談議に花を咲かせた。





 「スズネはダンジョン入ったことある?」

 部屋にもどる途中。

 ふと気になって聞いてみた。


 「はい何度か。北のザブズクルのダンジョンとか、西のラッテルの町のダンジョンですが。」

 「深いの?」

 「そうですね。踏破(とうは)こそしませんでしたが、よい修行にはなりました。」

 「修行かぁ・・・ダンジョンを修行の場として利用する冒険者って多いのかな?」


 「人によりけりだと思います。日銭を稼ぐ目的だったり、一獲千金を夢見ていたり。ラッテルの町で知り合った ”チーム” は25階層のボス部屋を専門の狩場にしてましたね。」

 「? お宝でもあるの?」

 「ボスの『ホワイトサーベルウルフ』の毛皮が高く売れるそうです。家族を養うには丁度いい値で売れるとか・・・あとボス部屋の宝箱から時々掘り出し物が出るとか言ってました。」


 「へ~、そういう冒険者もいるんだ。・・・でもダンジョンの魔物って、死んだら吸収されない?」

 「そうです。ダンジョンの中に入った全ての生物は、死んだらダンジョンに吸収されます。しかしそれは倒れ伏して壁や床に接触した場合であって、風魔法で浮かせたり持参した台に置いておくと吸収されずに残るそうです。」

 「・・・なるほど、逞しいね~」



 「坊ちゃま。」

 「ん?」

 「強さを求めるなら、ダンジョンに(こだわ)ってはいけません。森の魔物とダンジョンの魔物とでは行動範囲も戦い方も違ってきます。」

 「そうなんだ。森の方が恐い?」

 「そうですね。()()()()()という(わく)に囚われていない分だけ脅威ですし、()()()()()()()しますので。」


 「あ~。狩ったり狩られたりが日常だもんね。賢くならなきゃ生きてけないか。」

 「おっしゃる通りです。ダンジョンはあくまで修行と捉えるのが良いかと・・・」

 「()()()だけどね。」




 夕飯までの時間は、自室で過ごす。

 瞑想(小周天)したり、本を読んだりだ。


 スズネを退室させ、イスに深く腰掛ける。

 座禅を組んでもいいがマーサに見つかると、行儀が悪いって怒られたんだよな。

 ま、姿勢を正してりゃ()()()()()()()()()()()()()()構わないんだが・・・


 目を閉じると条件反射的に、腹に魔力を感じるようになった。

 それをゆっくりと回す。

 丁寧に・・・丁寧に・・・






 「やっふぅ~!」

 「だわ~~~~~!!!なに!?なに!?」

 いつの間にか白い世界にいた。


 「い~い反応だね~ クセになりそうw」

 「サラフィナ様!?・・・え!?・・・何故に!?」

 「僕が呼んだんだよ。幽体離脱ってね。」

 「え!? なんで? 教会でもないのに?」

 「キミみたいにある程度 “チャクラ” が開いて回せるようになると呼べるみたいだね。教会の方が楽だけど?」

 

 「さいですか・・・脅かさないで下さいよ。幼児虐待ですよ?」

 「ごめんって。でも “祭壇” はあった方がいいかな~。情報交換しようよ。」


 「盗聴してるんじゃなかったですか? それにその気になれば、ドコでも覗けるのでは?」

 「ストーカーみたいな物言いやめてくれる? アレは、たまたま耳を傾けてみたら “爆笑ネタ” が転がってただけであって、四六時中聞いてるワケじゃないよ。ラジオと一緒さ。」


 「・・・解りました。祭壇はどのようなモノがお好みで? 教会丸ごとは無理ですが?」

 「形に(こだわ)らなくていいよ。アンプみたいなものだから、道端に転がってる小石でも構わないんだ。ホレ? なんてったっけ? “イワシの頭も信心から” ってやつ?」


 《 この神様、妙に詳しいな。》

 《 実はヒマなんじゃね?》


 「あ~・・・理解しました。サラフィナ様の光を祭壇で増幅させて情報を・・・って魂胆ですね?」

 「有体(ありてい)に言えばそういうこと。僕も開示できる情報が提供しやすくなるしね。考えといて? それと・・・この子あげる。」

 「・・・なんですか?黒い卵?」


 幼児の俺の片手に収まるサイズだ。

 真っ黒なウズラの卵?


 「僕の光の影響でこんなになってるけど、闇の神のペット。神獣の卵ってやつ。」

 「・・・ほう。」


 「闇魔法の使い手ってごく少数だし、ひねくれてるヤツが多くてね~」


 《 あ・・・察し・・・》


 「アノ子はすっごくイイ子なんだけどね~ 仕事柄、勘違いされやすくてね~」

 「あ~、ココに居ないのは『ヒッキーさん』だからですか?」

 「せめて『恥ずかしがり屋』って言ってあげれる?」


 「了解です。持ってればいいんですか。」

 「そう。君の魔力が栄養源だよ。結構役に立つと思うよ?」

 「ありがとうございます。闇の神様にも感謝を・・・ん?」


 《 なんかゾワっとしたぞ?》


 「アノ子が “気にするな” ってさ。それじゃ “祭壇” よろしくね~」






 ゆっくり目を開ける。

 手の中に ”神獣の黒い卵” が収まっていた。


 再び目を閉じる。


 《 うわ~~~》

 《 魔力吸収率ハンパね~~~》

 《 小周天阻害されてんじゃん。》


 《 ずっと持ってるの? コレ?》



 仕方ないので、胸ポケットに入れておく。

 魔力が吸収されてる感じはするが、枯渇するほどではなさそうだ。


 《・・・ってか、普通に会話してたな・・・》

 《 ()()()()()()()の会話じゃなかった・・・》

 《()()()()()でもあんのかね?》





 俺は部屋を出てロビーに降りた。

 「おや? グレイ坊ちゃま、どちらへお出かけで?」

 セバスが声をかけてきた。


 「ちょっと裏庭へ。すぐ戻るよ。」

 「お供いたします。」

 「ダイジョーブだよ?」

 「お供いたします。」

 「・・・は~い・・・」


 三歳児に自由はない・・・




 トテトテとセバスを連れて裏庭の薪の保管庫へ足を運んだ。


 「セバス、開けて?」

 「薪小屋ですな?一体何をなさるおつもりで?」

 「実験。危ないコトしないから、木目の綺麗そうな薪を一本ちょうだい?」

 「・・・(かしこ)まりました。」


  山と積まれた薪の中から、一本の薪をもらう。


 《 うん。綺麗な木目だ。》

 《 糸柾目(いとまさめ)って言うんだったか?》


 手に持った木材に魔力を通す。

 デザインはさっき会ったばかりの “サラフィナ神”

 うにょうにょと形を変えた木材が()()()()()()()の一神となった。



 「はて?これは?」

 セバスが覗き込む。


 《 やべ、フザケ過ぎた。》


 「あ、ハハハ失敗失敗。やり直し~~~」

 再度、魔力を注入。


 凛々しく合掌をする “サラフィナ神” の立像が現れた。


 「・・・ほう。神像ですかな?」

 「うん。“サラフィナ神”さま。部屋に置いておこうと思って。」


 「・・・うむ・・・差し支えなければ・・・」

 顎に手を当てたセバスが、俺を見る。

 「あと、三体ほど作れますかな?」


 「ん? 別にいいけど? どうして?」

 「旦那様の執務室、奥様のお部屋と、私達の休憩室にも置かせていただければと思いまして、いかがでしょう?」

 「いいよ? “サラフィナ神” さまも喜ぶだろうし。追加で何本か取ってもらえる?木目のいいやつね。」

 「(かしこ)まりました。」


 同じポーズだと面白みに欠けるので、ちょっとづつ変えてみた。



 一体目は、大地に剣を刺し、その柄頭(つかがしら)に両手を置き、雄々しく立つ “サラフィナ神“

 二体目は、両手に水晶を抱え、物憂げに微笑む “サラフィナ神”

 三体目は。右手に杖を持ち、左手を前に掲げ、きりりと前向く “サラフィナ神”



 「ほう・・・見事ですな。」

 「ありがと。これていい?」

 「十分でございます。旦那様もお喜びになられるでしょう。人を呼んできますので少々お待ちください。」



 ぽつねんと一人残された俺は、空に浮かぶ雲を眺めた。


 《 お?》

 《 サラフィナさま喜んでる?》

 《 さっきの香ばしいポージングでもいいんだよ?》

 《 だめ?》



 残念w



「祭壇なくても交信してんじゃん!」


というツッコミは聞こえませんw

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