11 ヒールという魔法(と、バレた盗聴)
ちょいちょい加筆しました。
父の後をついてノテノテ歩く。
歩きながら、これからのことを考えてみる。
まず、王都に呼ばれるのは確実だろう。
そこで国王か、それに近しい立場の人達の前で “勇者の証” を示さなければならないが、そこらへんは『サラフィナ神』様が、うまいことやってくれるはずだ。
その後、ダンジョンと水車小屋実験か。
水車小屋は父と兄と専門職人がなんとかしてくれるだろう。
《 もんのすご~く気になるけどね。》
下手に口出して兄様にヘソ曲げられても困るし・・・
農地の選定と種芋の入手も、俺が口出すこともなさそうだ。
土地が弱ってたら肥料やら考えてみっかな?
それとも土魔法で元気になるかね?
とりあえず様子見か・・・
残るはダンジョンか・・・
三歳でダンジョンて、どうよ?
まだ木剣も握ったことないんだぜ?
魔法だけで踏破できるとでも?
無理ゲーじゃね?
♪ 魔法使い、魔力なければただの人~ (^^♪
魔力枯渇の三歳児なんて “おやつ” にもなんないか・・・
サラフィナ様のもとで 馬車馬のごとくこき使われる未来がソコにある。
《・・・いやすぎる・・・》
セバスに暗器を頼んじゃいるが、小ワザで何とかなる相手じゃないしな~
所詮、暗器はヒト相手の武器だし・・・
《 うん。やめとこ。》
《 まずは基礎からだ。》
《 ソリアン様に『いつまでに』とは言われてないかんな。》
ダンジョンさんは、しばらく放置!
冒険者のオッチャン等の小遣い稼ぎにでも活用してもらおう。
スタンピードが起きない程度に、頑張ってもらおうw
「父上。僕の修行相手は決まっているのですか?」
前を歩く父に尋ねてみた。
「昨夜の話は聞いている。セバスはスズネが妥当だと言っておったが?」
「スズネは剣も使える?」
振り返って後ろを歩くメイドに聞いてみた。
「王国騎士の流派でしたら、メイサに頼まれるのがよろしいかと・・・」
「スズネの剣技は特殊?」
「・・・恥ずかしながら・・・」
「じゃあ杖術は?」
「杖・・・それもご存じで」
「グレイ。杖術とは何だ?」
「魔法使いは杖を使いますからね。杖術は接近戦や魔力枯渇時の防衛手段の一つです。」
「・・・なるほど・・・」
「で?スズネ。大丈夫そう?」
「はい。問題ありません、」
「父上、剣の流派に拘ったほうがいいですか?」
「いや、我が家は下級貴族だからな。流派より実戦を重んじるほうだ。」
「兄上の剣の師匠は王国の流派ではなかったのですか?」
「アレは長男だからな。お前は気にしなくていい。」
「助かります。スズネ、そう言うワケだから剣技と杖術教えて? メイサにもお願いするけど王国流派の剣の基本だけでいいから。ダンジョンの知識と対策はオッズに頼みたいな。」
「畏まりました。伝えておきます。」
父は俺の言葉に苦笑した。
「メイドと庭師をこき使うのか・・・給与を検討をせねばなるまいな。」
「多少 “変なクセ” が着くかもしれませんが 生存競争”なので・・・」
「よい。思うようにせよ。」
「ありがとうございます。」
《 剣術と杖術・体術のメドは立ったとして、後は魔法だよな~》
どうしよ・・・
「来たかグレイ。」
「ご無沙汰しております。侯爵閣下。早速ですが魔導書下さい。」
ハロウィンの日に近所のオバちゃんに「trick or treat?」のノリで聞いてみた。
背後で父上の慌てふためく気配がするが、気にしない。
こーゆーのは勢いが大事なのだ。
のっけからトばす俺に目を丸くした侯爵は、不敵に笑った。
「ほう、いきなり御挨拶だな・・・魔導書か。持ってないのか?」
「初級魔導書は家にあります。兄の魔法学の師であられるサーマス先生に教えを乞うても良いのですが、僕の初級魔法の威力に問題があるようなので・・・」
「聞いておる。“ため池” を作ったそうだな・・・」
「はい。ですので魔力コントロールの訓練は続けているのですが、中級以上の魔法も身に付けておきたいなと・・・」
「・・・いま、お主の魔法が見れるか?」
「はい。人気のない場所でよければ・・・」
「よい。ホウレイ、頼めるか。」
「御意。」
・・・というワケで、やってきました “Deserted wilderness”
いやもとより “不毛の地“ と呼ばれる荒涼とした場所なんだがね?
冒険者やら私兵やらの目から離れた所に馬車移動しただけw
「ここなら問題ないかと・・・」
「うむ。早速見せてくれ。」
「では行きます。」
呪文を唱える。
厠二病溢れる呪文はSUN値を削られる思いがするが、実戦ではないので丁寧に・・・
「火よ、大いなる炎となりて敵を打ち滅ぼせ。ファイヤーボール。」
ズドン!
《・・・うっわ~~~~》
《 エゲツないね~~~~》
俺の背丈の何倍もある火の玉が、大地を抉りながらあらぬ方向へと突き進み、彼方の大岩を削って消えた。
《 無詠唱より効果あんじゃね?》
《 SUN値がっちり持って行かれるけど・・・》
「・・・何だ、この威力は・・・」
その台詞、先日聞きました・・・ハイ。
「えっと・・・何か・・・スミマセン。」
授業中にスマホ弄ってたのが見つかった生徒の気分だ。
こういう時はとりあえず謝っとくに限る。
別に悪いことしたワケじゃないけどネ?
こう見えても『元、気弱な日本人』なのさ。
ホントだよ?
「聞きしに勝るとはこの事だな。全属性魔法が使えるということだが?」
・・・やっちゃいましたよ。
『詠唱付き水魔法ブッパ』で “超デカいため池” 作って、木魔法で池の周りをうにょうにょさせて、さらにその周りの土壌をもっこりと取り囲んで、簡易オアシス~~
《・・・って?》
《 あれ??》
《 水脈に当たってね??》
《 侯爵ぅ?》
《 口閉じとかないと喉乾きますよ?》
《 まだ見せてない『詠唱付き風魔法ブッパ』する?》
《 父、半笑い?》
《 肩震えてるよ?》
《 なんかツボッた?》
「・・・規格外だな。魔力は大丈夫か?」
侯爵再起動~ 本日2度目だね♪
「はい。少々疲れましたが、倒れるほどではありません。」
《 うそですスミマセン。》
《 ヨユウのヨっちゃんです。ハイ。》
《 デンジャラスな存在に見られたくないので・・・》
オイラの魔力どないなっとんねん・・・
「神聖魔法も使えるということだが・・・いや、その前に魔族を消しとばした魔法だが、アレは何だ?」
「あ~・・・あれは初級治癒魔法の “ヒール” です。」
《 侯爵~ 顎ハズレるよ~w》
《 風魔法の いいマトだね~》
「ヒール・・・“ヒール” で消しとばしたのか!?」
「え~と・・・侯爵閣下は見えませんでしたか? 魔族の身体を囲む “黒いモヤ” みたいなヤツが・・・」
「言われれば・・・あったような・・・それがどうした?」
《 詐欺師発動~》
「“サラフィナ神” 様によれば、アレは『瘴気』とか『邪気』と呼ばれるもので、『邪な念を持つ者』が放つオーラのような物らしいです。」
「『邪な念を持つ者』か・・・それは人族にもいるのか?」
「そのようです。人族、亜人族、魔族、魔物、例外なく現れます。特に魔族や魔物は生まれながら強い魔力を持っている場合が多いので顕著だとか。いわゆる “禍々しい雰囲気” とも表現される・・・とか?」
「うむ。それで?」
「本来、この世界の生物は “神” に愛され、祝福されるべき存在であり、“神”の意に反する『瘴気』は『心の怪我』と変わらないそうです。」
「それで “ヒール” か・・・」
「もっとも “サラフィナ神” 様の教えを実感したのは、先の魔族に頭を掴まれて痛かったので “ヒール” を唱えたらああなっただけで、止めは “エリア・ヒール”でした。」
なんてね。
前世のマンガネタが当たりました~
て、言えるワケね~べ (笑)
サラフィナ様には後で謝っとこ・・・
「なるほど、『神託』が『実践』に繋がったと・・・あい分かった!儂の蔵書にある中級魔導書を其方に下賜して進ぜよう。励むがよい!!」
「ありがたき幸せ。」
《 やったね父ちゃん!明日は〇ームランだ!!》
「ホウレイ。すまぬが儂はこのことを国王陛下に報告せねばならん。ダンジョン調査と進捗は任せてよいな?」
「は!問題なく。」
「グレイ。よくやった!更なる褒美を期待してもよい働きだ。ダンジョンには、すぐ潜るつもりか?」
「さすがにそれは無謀かと・・・まだ魔物のエサになるつもりはないので。」
「くくく・・・さもありなん。ホウレイ、大事にしろ。この子は未来の希望になるやもしれん。」
「は!」
テントに戻ったサルムンド侯爵は、すぐさま残りの兵士に帰り支度を命じた。
「グレイ。近く王都に呼ばれるやもしれん。心しておくように。行くぞ!」
「お待ちください閣下! まだ準備がぁ!!」
兵士長らしき叫び声も空しく、侯爵を乗せた馬はダカダカと走り去った。
「・・・嵐のような御方でしたね・・・」
「そうだな・・・しかし、肝を冷やしたぞ? グレイ。」
「すみません父上。侯爵閣下のような熱血漢への希望や要望は簡単明瞭が良いかと思ったもので。」
「それが中級魔導書か・・・おまえ本当に三歳か?」
「・・・だと思います。母上には内緒で。」
「・・・クク・・・もう遅いわ。」
楽しそうだな父上。
「それはそうと父上。言いそびれていたのですが。」
「どうした?」
「さっきの水魔法。水脈に当たったようです。」
「!!・・・ぷう!!・・・はぁっはっはっはっは!そうか!当たったか!!」
《 お~~ 爆笑ネタだったか?》
《 何より何より(^^♪》
《 人生笑ってナンボだぜい!》
先遣隊が戻ったのは、夕飯を食べ終わった頃だった。
「全員無事か? 報告を聞こう、」
「はい。階層式のダンジョンで間違いないと思われます。一階層の最奥まで行ってみたのですがゴブリンとスライムしかいませんでした。一階層の構造はレンガの壁で、一定の間隔で光石が埋まっており、通路はそこそこ広く、戦闘に不自由は感じませんでした。罠はありませんでしたが、さらに潜れば出て来るかと・・・魔物部屋らしい場所は近付かないようにしました。」
「気配がしたか?」
「はい。およそ20程度の気配が・・・」
「宝箱はあったか。」
「二つ発見しましたが、一つはギミックでした。」
「ほう。中身は確認したか?」
「はい。ご覧になりますか?」
「いや、よい。冒険者のルールに則り、中身はお前達の物だ。取り上げる気はない。」
「助かります。」
「最奥にボス部屋はあったか?」
「はい。そこそこの気配がありました。」
「うむ。ご苦労。門の発見もお前たちか?」
「はい。」
「解った。報酬は合わせてギルドに預けてある。ギルド長に報告して受け取れ。」
「ありがとうございます。」
「それと、もう一つ、確認と報告をして欲しい。」
「?・・・何でしょうか」
「ここより南西に少し行ったところに『ため池』を作った。」
「は?・・・ため池ですか?」
「うむ。少し大きく作りすぎたがな、そのおかげで水脈に当たったようだ。確認してギルド長に合わせて報告して欲しい。」
「おお!“不毛の地”に水脈ですか!そりゃありがたい!必ずご報告します!」
「よろしく頼む。」
「普通のダンジョンっぽいですね。」
「うむ。助かる。いきなりサイクロプスとかだと普通の冒険者は二の足を踏むからな。それだと誰も近付かなくなる。」
「よかったです。“サラフィナ神”様と ”ソリアン様” に感謝しなければなりませんね。」
「そうだな。ところでソリアン様は 英霊”だったらしいな。」
「“英霊” ですか?」
「侯爵閣下が言うには、王都の大図書館に『勇者』と肩を並べる人物だったと書かれてあったようだ。」
「すごい人だったんですね。」
《 パツキンネーチャンがね~》
《 お?》
《 ちょっと揺れた?》
《 サラフィナ様~ちゃんと抑えといてくださいよ~》
《・・・って、聞いてたんかい!!》
「・・・やっていけそうか?」
「もちろんです。なんたって “夢” がありますから。」
フラグ立っちゃったかな?
レベル上げガンバロっと。
◆◆
朝早くに目が覚める。
軽く伸びをして “気配” を探ると、すでに誰か動いてるようだ。
『ワケありメイド団』かな?
朝早くからご苦労さんだ。
昨日、寝る前に【ステータスボード】を見たら。最高レベルが13になっていた。
一気に二桁?
おかしくね??
レベル上げに必要なのは、魔物を狩ること。
単純な理屈だ。
故に『レベルの低い初心者』の狩りは死亡率が高いし、ゴブリン一匹倒すにもチームを組むくらいの慎重さが必要だ。
昨日の魔族、そんなに強かったのか?
成長促進スキルの恩恵か?
・・・わからん・・・
兎にも角にも。レベルが上がるに越したことはない。
“ボーナス”だと思って、ありがたく頂戴しておこう。
ベットから下りて『ストレッチ』をする。
三歳児の身体は柔らかい。
今のうちから身体各部の可動域を広げておけば、怪我や捻挫で戦闘に支障が出る可能性は低くなる。
一通り終わったところで、昨日の皮鎧を装着し、再度簡単に動いてみる。
新品なので硬さは残っているが、使っているうちに馴染むだろう。
腕のいい鍛冶職人がビギナーに皮鎧を勧めるのは、安いのみならず、レベルが上がって金属鎧の注文を受ける際に皮鎧に残るシワを見て、注文者の身体の可動域やクセを見るためだと。庭師のオッズが言っていた。
いきなり金属鎧を身に付けるのは、重い上に動きが阻害され危険だとも・・・
プロだね~
十分に身体が温まってきたころ、ドアがノックされた。
「失礼しま・・・準備はてきているようですね。」
「今日からヨロシクね、」
「畏まりました。では庭に出て走り込みから・・・」
「りょーかい。」
「・・・こちらをお使いっ下さい。」
スズネがら渡されたのは、一本の刀と苦無だった。
「えっと、忍者刀?」
「そういう呼び名は聞いたことがありませんが、私は“草刀”と呼んでいます。使い方はご存じですか?」
「“そり”のない片刃刀で、太刀より短いのは室内や障害物が多い場所でも使えるように?鍔が小さいのは逆手に持つことが多いんだっけ? 高い塀を上るときに足を引っ掛けたり・・・、長いひもは足に引っ掛けて塀の上から刀や荷物を引っ張り上げるとか? 鞘には空気穴が開けていて水遁や土遁に利用する?」
スズネの目が大きく見開いた。
「正解です。よくご存じで・・・」
「知識だけならね、使ったことないけど・・・」
「いえ、説明する手間が省けるのは大変助かります。後は実践あるのみですね。」
「お手柔らかに。でも“草刀”だっけ?よく用意できたね。」
「ソレは私が昔使っていた練習用です。刃は潰してあるので御安心を。杖術の修練にも使えますので。」
「打撃用に鉄心が仕込んであるのか、重いワケだ・・・」
「フフ、お辞めになりますか?」
「いや、やるよ。でも、いいの?思い出の刀でしょ?」
「構いません。道具は使うためにあるのです。道具が潰れても技術は残りますから・・・」
「期待には応えないとね。ところで“苦無”は一本だけ?」
「最悪、頼りになる道具が手元にない場合も想定した訓練もします。坊ちゃまには訓練中は魔法の使用を控えていただきます。」
「・・・お手柔らかに・・・」
「死なないための技術です。頑張りましょう。」
スズネさん、ウッキウキだな!!
訓練方法は単純明快だった。
♪ 裏の森での鬼ごっこ ♪
俺が調子ぶっこいて、森をうろついていたゴブリンを ”練習用の草刀” で瞬殺したのが原因だ。
レベルが既に二桁になっていたのがバレると、急遽 “鬼ごっこ” がスタートするようになった。
んまああああああ! 走る走る!!
一定の間隔で追い回され、疲れて立ち止まるとその場で模擬戦闘。
逃げれば追われる “鬼スズネ”
しかも“いい笑顔”付きだ。
どSかよ!
同情するなら休ませろ!!
幼児虐待っつー言葉知っらんのか!!!
と、俺は言いたい!!!!
「いい感じですね♡」
《 語尾にハートマークが見えるのは気のせいか?》
《 もう手足が動かないんだが?》
「坊ちゃまはご存じですか? 『森あるところに魔物あり』という諺ですが?」
「あるね~ この辺にはゴブリンやらスライム程度だけど。」
「明日も同様の訓練をします。魔物を見かけたら退治してください。スライムの退治方法は解りますか?
「核を潰すんだっけ? 近寄ると飲み込まれたり酸を掛けられたりするから、遠距離から射的か投擲が無難?」
「その通りです、投擲訓練のマトにしましょう。」
「・・・お手柔らかに・・・」
「手加減してますよ♡」
《 だ・か・ら!》
《 そのハートマークは何なんだよ!!》
♪ 鬼スズネ~ ステキな笑顔にだまされて~ 今日は地獄~ 明日も地獄~♪
膝枕は天国だったのにな~
は!
これがハニートラップという奴か!!
「今日はここまでにしましょう。そろそろ朝食のお時間です。」
《 花が咲くような笑顔で言われてもな~》
あ・・・
サラフィナ様笑ってんな?
いや、嗤い転げてんのか?
まあ、いいッスけどね・・・
水脈は ”怪我の功名” ?
ちなみに
盗聴は犯罪です。




