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そのタイトルを禁句にします。  作者: 葉方萌生
第一章 『キラノベ』に現れる不可解なコメント

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◾️雪村萌香 書き込み



「あれ?」




 午後5時に仕事を終えて家に帰り着いたのは午後5時30分。職場から自宅までドア・トゥー・ドアで30分という比較的便利な場所に暮らしている私は、アフター5が何よりの日々の楽しみとなっていた。


 何をするのかというと、小説投稿サイト「キラノベ」で小説を書くのだ。


 キラノベには3年ぐらい前からアカウントを登録している。が、キラノベメインで活動を始めたのは1年前からだろうか。キラノベを運営しているコモレビ出版からのデビューを本気で目指し始めたのがきっかけだ。


 SNSでも積極的にキラノベユーザーと関わるようになり、今の私の生活は仕事が4割、キラノベでの活動が6割を占めるぐらい、大事な居場所となっている。


 


 今日もいつものようにキラノベを開き、最近投稿を始めた青春小説を更新しようと思っていた。ユーザーページを開いた時、目に飛び込んできた赤い文字。それは、「『(うしお)に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい』に感想が書かれました」という嬉しいお知らせだった。


 まだ執筆途中なのに感想が書かれるなんて、珍しい。普段から感想を書かれること自体、ほとんどないことなので、まさか更新途中の小説に感想をいただけるとは思っていなかった。


 逸る気持ちを抑えて感想欄を開いた私は、別の意味で、もう一度驚いてしまった。そこに書かれた一言を見て、ぎょっとする。




【おまえだけはゆるさない】




「どういうつもり?」




 タチの悪いいたずらだということはすぐに分かった。けれど、そのおどろおどろしい一文に、背筋がゾッと凍りついた。コメントを送ったユーザー名には「69,」とある。適当に考えたような名前に見える。試しに「69,」のユーザーページに飛んでみると、やはり一つも作品を投稿していなかった。キラノベには自ら作品は投稿せず、他の人の作品を読むことを専門とする、いわゆる「読み専」という人たちもいる。この人もその読み専の人なのだろうと察しはついたが、それにしても悪質なコメントを書くのはいただけない。


 それに、どういうわけか、【おまえだけはゆるさない】という一文から、不穏なオーラのようなものが滲み出ているような気がするのだ。


 こういう感想をもらったことがないから、被害妄想だろうとは思う。気にしないようにと思っても、実際はかなりショックを受けていた。作品に対する評価ではないと分かっているのに、だ。




 動揺した私は、感想一覧から当該コメントを「削除する」ことにした。


 感想はもらった作者が自由に削除することができる。温かいコメントをもらった際にはもちろん削除などしないが、こういった悪質ないたずら的な感想が送られてきた場合には作者側が自ら削除できるから便利だ。私の作品を読んでくれる、他のユーザーに見られるのも嫌だ。早いところ削除してしまおうと思った。




 先ほどの感想にチェックを入れ、「削除する」ボタンを押すと、簡単に感想は消えてくれた。ふう、と思わずため息が漏れる。これで私の作品から不可解なコメントは消えた訳だ。感想が来ていたのは16時ごろだったから、多分ほとんど誰の目にも触れていないだろう。




「こういう時の『削除』ボタンか」




 実際に感想を削除したのは初めてだったから、少しだけ緊張した。けれど、悪質なコメントを消しただけだし、私が罪悪感を覚える必要はないよね。


 気が付かないうちに額に汗が滲んでいて、ハンカチですっと汗を拭った。


 その後、しばらく小説の続きを書いて、今日書いた分を更新する。小説を更新したらすぐにXでも宣伝をするのがいつもの流れだ。




 学生も社会人も、WEB小説を読むのは大体通勤通学時間か、夜寝る前のことだろう。


 その日ものんびりと誰かが私の小説のページをめくってくれるのを待った。


 午後10時半、手慰みに開いたXに、通知が来ていることに気づく。通知は、先ほど私が投稿した小説の宣伝ポストに対するリプライだった。日頃Xで仲良くしている友人の「美月(みづき)」がコメントをくれていた。彼女もキラノベで投稿を続けていて、よく私の作品を読みに来てくれていた。


 美月のリプを見た私は、再び驚かずにはいられなかった。




「萌生さん、『潮に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい』におかしなコメントが来てます……><」

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