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そのタイトルを禁句にします。  作者: 葉方萌生
第三章 調査を一時中断します

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◾️美月からのDM

-----------------------------------------------


萌生さん


こんばんは。突然連絡してごめんなさい。

どうしても、萌生さんに伝えないといけないことがあって……。


実は昨日、私の作品にも例のおかしな感想コメントがつきました。送り主は「69,」って人です。確か、萌生さんや他の方の作品にコメントを残した方と一緒ですよね?


しかもその内容が……公では言いづらいもので。

萌生さんにだけは伝えておかないといけないと思ってDMしました。

お仕事で忙しい時に本当にごめんなさい。


DMの内容なんですけど……


【はかためいとえんをきれ。そうしないとおまえもどうざい】


って……。


いたずらだって分かってはいるんだけど、どうしても気味が悪くて……。

こんなこと言われても、困りますよね><


念の為私の方からも、編集部には問い合わせを入れてみました。感想コメント自体は削除してもらえると思うのですが、こういうメッセージが来たこと自体、怖くなってしまって。

萌生さんの名前がはっきり書いてあったから、萌生さんのお知り合いの誰かが、コメントを残したんじゃないかって疑っています。

もちろん、知り合いじゃない可能性も十分にあると思います。

小説投稿サイトは誰でも見れるものだし、ネット上で萌生さんの名前を知っている誰かが、いたずらをしたのかもしれません。


どちらにせよ、個人名を挙げてこんなコメントを残してくるのは許せないです。

萌生さん、十分気をつけてください。

この感想コメントの通りに、萌生さんと関係を切ろうとは思わないから、そこは安心して欲しいです。


というか、本当に誰がこんなことを……。

編集部の人たちも、結構な数の問い合わせが来ているみたいで、今対応に追われているそうです。

早く問題が解決することを祈るしかないけど、本当に不快ですね……。

萌生さんの方も、また何かおかしな点に気づいたら、教えてください。お互いに情報交換はしていった方がいいかと思います。


長くなってしまってごめんなさい。

それでは、くれぐれもお気をつけて。


-----------------------------------------------




 7月29日月曜日。週明けの憂鬱な仕事が終わり、帰り道でXを開くと、珍しくDMの通知が届いていた。

 誰だろうと訝しく思いながら通知を確認すると、いつも仲良くしてくれている美月からだった。

 メッセージを開くと、そこにはとんでもないことが書かれていて、一瞬我が目を疑った。


 え、嘘でしょ……?


 どうして美月の作品の感想コメントに、私の名前が出てくるの?

 真夏にも関わらず、カタカタと身体が震え出す。赤信号だった横断歩道の前で立ち止まっていたが、いつのまにか青になっていることにも気づかず。食い入るようにして彼女からのメッセージを見つめていた。


【はかためいとえんをきれ。そうしないとおまえもどうざい】


「私と縁を切れって……」


 はっきりと、自分に向けられた悪意の塊がそこに存在していた。以前私の作品に送られてきたコメントに、【おまえだけはゆるさない】というものがあったが、その時は適当にそれらしい脅し文句を書いているだけなんだと思っていた。他の人にも同じような不快なコメントが届いているようだし、自分だけがターゲットになっているなんて、考えもしなかった。


 だけど、美月の作品に届いた感想コメントは、直接私の名前を挙げている。これが私に対する嫌がらせではなくて、一体なんだというのか——。


 青信号が点滅し、再び赤信号へと変わった。

 待っている間、私は美月に返信を打った。



-----------------------------------------------


美月さん、こんばんは。


メッセージありがとうございます。

正直すごくびっくりして、どうしたらいいか、自分でもまだ考えられずにいます……。

ひとまず、私のせいで美月さんの作品を汚してしまうようなことになってごめんなさい。

早く編集部の方で削除してもらえることを祈ります。


コメントの内容自体、私にも心当たりがなくて……。

私がキラノベで小説を投稿していること自体、リアルで知ってるのは仲の良い友達だけなんですよね。だから、そんな友人たちが悪質なコメントを残すとは思えなくて。


そうなると、必然的に可能性は絞られてくるわけで……。美月さんもおっしゃってる通り、私の名前を知った見知らぬ誰かが、いたずらで書き込んだとしか思えません。ネット上では、誰のどんな恨みを買っているか分からないから、もしかしたら私が気づかないうちに、その人を不快な気分にさせてしまったのかも……。


そうだとしたら、美月さんにも他のキラノベユーザーの方にも、ご迷惑をかけてしまい、本当に申し訳ないです。

私の方からも、もう一度編集部の方に問い合わせてみます。

解決しなければ、しばらくアカウントを停止するかも……。

どちらにせよ、早く問題が解決することを祈るばかりです。


あ、あと、私とこれからも関係を続けたいと言ってくれて嬉しいです。

私もそうしたいんだけど、もし美月さんにこれ以上被害が及ぶようなら、その時はまた考えさせてください。

いろいろと教えてくれてありがとうございました。


-----------------------------------------------




 文章を打ち終わると、ちょうど青信号に変わっていた。急いで渡ろうとしたら、左折車が飛び出してきて焦る。すんでのところで車の方が止まってくれた。ヘッドライトに照らされた視界が、しばらくチカチカと明滅して眩しい。急ぎ足で横断歩道を渡り終えると、なぜかどっと汗が吹き出してきた。


「ただいま……」


 げんなりとした気分で帰宅する。

 一人暮らしなので、もちろん「おかえりなさい」の声は響かない。こんな時、誰かがそばにいてくれたらいいのに——と思ってしまうものだ。


 家に着いて、昨日の残り物のシチューを冷蔵庫から取り出して温める。料理をする心の余裕がなかった。掻き込むようにしてシチューを食べて、気持ちが少し落ち着いたところで再びXを開いた。美月から、「返信ありがとうございます。迷惑だなんてとんでもないです」とメッセージが来ていて、胸が詰まる思いがした。


 続いてキラノベのサイトの方も確認する。

 ユーザーページを開くと、見たくもない赤文字が表示されている。まただ。「『潮に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい』に感想が書かれました」という、通知の文字。ちょっと前までは、この感想通知がすごく嬉しくて、赤文字を見るだけで興奮が止まらなくなったというのに。今では死刑宣告のように思えてしまう。


 見たくないな——そう思うのに、指は勝手に動いてしまう。もしまた悪質な感想コメントだったとしたら、放っておくわけにはいかない。すう、はあ、と深呼吸をして感想欄を開いた。



【なにをしてもむだ。なんどでもおくるからね】


 ひゅっと、自分の口から細い息が漏れる。

 嫌な予感は当たり、再び「69,」から来たコメントに背筋が凍りついた。反射的に後ろを振り返ってしまう。まるでずっと誰かに見られているかのような感覚に陥り、気分が悪かった。


「もう、一体誰なの……!」


 たまらなくなって、誰もいない空間にそう叫ぶ。思ったよりも、自分の声は低く掠れていた。ここのところ冷房で喉をやられてしまっていたからだろう。虚しく響き渡る私の悲鳴は、時計の針の音にかき消された。


 さすがに、今回ばかりは見過ごすわけにはいかない。

 美月からのDMにも書いてあったが、彼女も編集部に問い合わせると言っていた。しつこいと思われるかもしれないが、私の方からも編集部に問い合わせようと決意する。諸悪の根源が私ならば、私、葉方萌生のアカウント自体、一時停止をするべきかどうかの相談もしたいと思った。


「お世話になっております。拙作『潮に閉じ込めたきみの後悔を拭いたい』に、再び不審な感想コメントがつきました。以前、ご対応いただいたことには大変感謝しているのですが、再度削除の上、コメントの送り主『69,』のアカウント利用を停止していただけないでしょうか? お忙しい中何度もご相談してしまい、申し訳ございません。また、他のユーザーの方の作品に、私の名前を挙げて直接攻撃するようなコメントも見受けられたそうです。もし私が原因で他の方にも悪影響が及んでしまうとしたら、アカウントを一時停止することも検討しています。何かご助言いただけますと幸いです。何卒よろしくお願い申し上げます」

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