予知夢を見たら、聖女見習い改め代理聖女になりました――真・聖女様は浄化中
第一話はこれで完結です。
しかし次第に、『ただの事務員だから』という考え方が通じない事態になってきた。相変わらず欧米ヘビメタ系女装男子聖女様――真・聖女様――は見つからないのです。神官長様はかなりあせっているし、聖女塔への参拝者は増える一方。
わたしは単なる見習いなのに。治癒力は低いのに。
大けがをした人は聖女塔には来れないから騙せるのかもしれないけれど。
おねいさん、早く姿を見せて聖女業をしてよ。参拝に来る人たちをわたし一人に押し付けられるから辛いの。奇妙なお悩み相談もしなければならないし。
❖ ❖ ❖
聖女召喚から一か月ほどたった朝礼で。真・聖女様を捜索している聖騎士団から驚愕の知らせが届いた。
「アルギロス神官長様に報告です。三日ほど前、かの荒廃地が突然浄化されたとのことでございます!」
なんと、神官も聖騎士団も派遣していない、かねてから懸案されていた危険地帯がいきなり浄化されたというのだ。
(へぇ~、そういうこともあるんだねぇ~。自然の力って不思議)
とのんきに思っていたのだが、調査団の報告によると、何日か前金髪ロン毛のお姉さんが荒廃地に出現し、両手を上げながら走り回っていたという目撃情報があったとのこと。
想像するとかなりヘンテコな状況だわ。
「それは……真・聖女様が聖なる力をお使いになったのでしょうね」と、神官長様が遠い目をした。
「はぁ……真・聖女様、戻って来てくれないかなぁ……」と、聖騎士団長様。
「ミコ様が祈ってくだされば、あるいは……同郷の方なんでしょう?」
神官長様が期待を込めた目でわたしを見つめた。
「ええと……同郷ではないです(どこの誰なのか知りません)」
おねいさんはヒャッハーしたあと諸国漫遊の旅に出かけ、気ままに聖なる力を放出しているに違いない。元々不浄の土地は人が住んでいないけれど、有害な物質や生物が湧くから、放っておくと大変な事になるとのこと。
あんなに聖騎士団を捜索に駆り出しているのに、まだ捕まえられないなんて。おねいさん最強なのでは?
神官長様から聞かされたのだが、聖女召喚をしたとき二人やって来たのでスキルが二分されたとのこと。
おねいさんには聖女としての聖なる力――癒しと浄化の力――と隠蔽魔法を始めとした防御魔法。なるほど、だからおねいさんを確保できないのか。
わたしには言語スキルとおこぼれの聖なる力。
という訳なので、おねいさんはこの世界の言語を理解できないそうだ。
おねいさんの言語能力は本人の努力次第で何とかなるけれど、わたしの聖なる力は増えそうもない。一歩間違って力が増えたら余計な仕事を与えられそうだし、それは避けたい。これ以上仕事を増やしたくない。言われたことを淡々とこなす地味な事務職が自分には合っているのだ。
自分から積極的に何かをするということはない。
基本的に自分は他人任せなのだと思う。
今まで決まったレールの上で生きてきたから。山も谷もない人生だけど、それで満足していた。温泉旅行が生きがいだった。
「はぁ……おねいさん、早く戻って来てくれないかなぁ……」
❖ ❖ ❖
荒廃地浄化の報告以来、悪夢を見るようになった。震度6レベルの地震で山岳地帯の村が崩壊する夢。その夢がだんだんハッキリしてくる。
「嫌だな、毎日こんな夢を見るなんて……」
「ミコ様、大丈夫ですかぁ? うなされていたみたいですけどぉ」
「う~ん、ちょっと夢見が悪くて……」
「それなら神官長様か副神官長様にご相談した方がいいですよぉ」
「そうなの?」
毎日悪夢なんて異常では? まさか予知夢?
不安な気持ちのまま、わたしはイマイチ性格がつかめない副神官長様に打ち明けた。
「ミコ様、わたしを頼ってくださり嬉しいです。それはもしかしたら夢のお告げかもしれません。つまり、予見の力です」
「予知能力みたいなものですか?」
「そうです。素晴らしい!」
ちょっと待って。
地震国なら『来週あたり地震が起きる』と言えば、何パーセントかは当たるんじゃない? この国には火山があるから地震もあるのでは。
「神聖国ではときおり地の神がお怒りになるので、各地に地の神を鎮める神殿があります。それなりに対策はしているのですが、たまに被害が出まして……夢はどのような場所でしたか?」
「ええと……」
わたしが説明すると、副神官長様が薄いザラ紙に羽ペンでサラサラと絵を描いていく。
「う~ん、何か所かあてはまりますね……神官長様に報告しましょう」
という訳でわたしの夢が大神殿CEOに報告され、王宮経由で当てはまる住民が首都に避難した。
火山国だもの、地震も多いのね。対応もできていそう。
地震が起きなかったらどうしよう……わたし嘘つきになるの?
いや、起きない方がいいのよ。
その結果……。
本当に山岳村で地震が起きた。住民全員無事。
その二日後、神官長様から告げられた。
「ミコ様、代理聖女になりませんか」
それは昇進ですか?
昇給アリですか?
待遇改善してもらえますか?
「ミコ様に予見の力が発現したのですから、見習いは卒業です」
「はぁ……(当たる確率数パーセントだったんだけど)」
「ということでミコ様、本格的に聖女業をしましょう」
ええ~。
❖ ❖ ❖
結局、真・聖女様を確保することができない大神殿は、わたしを聖女見習いから正式に『代理聖女』へ格上げした。
代理とはいえ本格的な聖女業をわたしに押し付けないでほしい。わたしの力は弱いのよ。一日が終わるころになると疲れちゃって、傷口がうまく塞がらなくなったり、お悩み相談も適当だったりするから……。
それに、予見の力だって怪しいものだし。
「ミコ様、これから巡礼へ行きましょう」と、神官長様。
「巡礼ですか?」
「国中の神殿巡りをしながら人々を癒すのです」
ということは、巡回ドクター兼カウンセラー?
それはつまり、予見の力は単なる方便で、わたしを代理聖女にして巡礼に引っ張り出したいだけじゃないの?
双子ちゃんに聞いた噂だと、聖女塔へのお布施はかなり高額らしいじゃない。聖女がいることによって神殿は儲かるということなのだ。聖女が巡礼をすればさらに儲かるということ。
腹黒神官長め、地震の予知夢なんて話すんじゃなかったわ!
でもそれで助かった人がいたのかもしれないし……。
荒廃地が突然浄化されて以来、ピンクスカートのおねいさん目撃情報がときどき寄せられる。おねいさんはマッチョな勇者と放浪の旅をしているとのこと。最近の神殿はおねいさんを連れ戻すことをすっかりあきらめたみたい。
ということで、土地の浄化はおねいさんの気まぐれに委ねられたのである。
ということは、浄化業はおねいさんで、ほかの聖女業はわたしが全て引き受けなければならないということでは?
ナンテコッタ!(ミコ心の声)
某渋谷で日々まじめに事務仕事をしていたように、文句を言わずお金になる聖女業をこなすわたしは、大神殿にとっては都合が良かったんだろう。それなりの待遇をしてもらっているので、文句はあまり言えない。強いて言えば娯楽がない。
わたしは一生大神殿に縛り付けられるの? 契約完了はないの?
「それではミコ様、巡礼出陣式として近いうちにお披露目パレードをしましょう」
や、ヤメテ~!!
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とある不浄の地。モンスター出現の報告を受け、今日も勇者は立ち向かう。
「あsdfghjkl;:! オマエハ!」
「また会ったな。その服、何とかなんないの? 目がまぶしいんだけど。ナマ足とか危険だよ。オレの服貸す?」
「あsdfghjkl;:! ジャマスンナ! ウォ〜〜〜!!」
シュワ~~!!
「おっ、今まで入れなかった不浄の土地が浄化された!? スゲーなオマエ。オレのパートナーにならないか? オレの名は……」
「ちょっとあなたたち、今何が起きたの? わたくしに説明しなさい!」
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※謎のキャラが増えてしまいました。頑張って回収します……m(_ _;)m
※第二話では新たな登場人物が現れ、ミコのミッションが増えます。過労で倒れるかも……。第二話開始はだいぶ先になりますm(_ _;)m
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