表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海神  作者: 葉月 優奈
エピローグ
56/56

056

――1か月後――

俺は、完全に回復したのは3週間もかかった。

呼吸が全然できない俺は、体にいろんな変調をきたしていた。

呼吸ができないだけで、俺は体がおかしくなった。

あの毒ガス、海神『エノシガイオス』は後遺症も深刻だ。


そんな俺は、ある場所に来ていた。

それは神戸市内の外れにある刑務所。

いつも通りの灰色のスーツを着た俺は、面会室に通されていた。


(どうしても、気になる人間がいた)

俺『神影 原基』は、兵庫県警の刑事だ。

勤務歴8年で何人もの犯人を、逮捕してきた。

外国人の摘発も、何人もしてきた。

その中で、初めて彼女を見て確信した。


面会室には、すでに一人の女がいた。

二重のガラスを隔てて、俺の目の前にはバーコイ・シスチャニフが囚人服で姿を見せていた。

彼女の切った短い髪は、金髪だ。マッシュルームカットは、ぼさぼさになっていた。


「生きていたのね、神影刑事」

「おかげさまでな。本当に、死ぬかと思ったけど」

「日本の警察は、どこまでもしぶといのね」

「幼い時の経験が、俺を生かせてくれた。それだけだ」

「そう、びっくりしたわよ」

その割には、今のバーコイは落ち着いていた。


「君は本当のところ、いくつなんだ?

薬栗を演じていた時は。20代だったと思うけど。

今の君を見ていて、どうしてももっと年下に見えてしまう」

「多分19」

「多分?」

「生まれてしばらくして、チョウルイベギマに拾われたの。

私は、孤児だったから。誕生日も、年齢も私は知らない」

「そうか、生きるためにあの任務をしたと」

「本当は、医者になりたかった。医療研究者ね」

「でもやっていることは、違うな」

「この取引が終わったら、私は研究を約束されたのよ。

私の国では、戦争が絶えない。

絶えないからこそ、救える命もあると…」

「皮肉な話だな」

それでも、世間は彼女を許さないだろう。

ラビーネ病院の悲劇を起こした、最悪の女スパイ。


彼女は、一人で1200人の命を奪った。

日本でも、彼女は二人の命を奪っていた。

それでも、なんだかやるせない気持ちになってしまった。


「俺は、君を救うことはできない。

捕まった君に、同情しようとも思わない。

日本には死刑があり、裁判をうけたのちに君に極刑が下る可能性は高い」

「わかっている」

「それでも、君は生きた。俺は。そのことを覚えておく。

君のようなかわいそうな子供を産まないために、俺にできることは大したことじゃないけど」

「うん」バーコイは、何も言わずに目をつぶった。

そして、俺は立ち上がった。


「ありがとう、あなたに捕まってよかった」

最後に、バーコイは俺に向けて感謝を伝えていた。

その顔は、うっすら笑顔のようにも見えていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ