052
俺と薬栗、このエレベーターは二人しかいない。
そして、薬栗 麗良はバーコイ・シスチャニフ。
ボルシュニクの中でも、特別優秀な女スパイだ。
こんなにも小さな少女が、ラビーネ病院の悲劇を起こした女スパイだから驚きだ。
「なんで、そんなことをする?」
「私は、あなたを殺す。このまま生かしておくことは、絶対にできない」
すぐさま、彼女は胸ポケットから小さなスプレーを取り出した。
「それが、エノシガイオスか?」
「そう、全ての人間の呼吸器官をあっという間に破壊する生物兵器」
やはり、エノシガイオスで彼女は二人の人間を殺していた。
「鵤と、若杉はなぜ殺した?」
「二人とも、私に近づきすぎたから。
鵤は、マスターの指示もある」
「随分とペラペラ自供するな」
「あなたは、ここで死ぬから関係ない」
冷たい目で、バーコイは言い放つ。
スプレーには、間違いなくエノシガイオスが入っていた。
手荷物検査も、あれならすり抜けてしまう。
見た目は完全に、制汗スプレーに見えてしまうのだから。
(さて、エレベーターは高速といえ、到着までに2分近くかかる)
バーコイから、何とかあのスプレーを奪えないか。
だけど俺は今、体勢が悪い。
立ち上がることも、させないだろう。
それを感じてバーコイは。スプレーに手をかけた。
無論俺に向けて、スプレーを押そうとしていた。
「そのスプレーは毒ガスだろ。押したらお前も」
「大丈夫、私には抗体があるから」
バーコイは、ためらうこともなくスプレーを押した。
押した瞬間、スプレーからイチゴの香りが漂ってきた。




