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(MIKAGE‘S EYES)
俺は絶対に、にがすわけにはいかない。
彼女は、ただの犯罪者ではない。
戦場を駆け抜けた、百戦錬磨の軍人だ。
だからこそ、俺は強引な突破を想定していた。
発煙筒でかく乱されても、煙の時は下に下がればいい。
下がった中で、エレベーターに逃げる彼女を見つけた。
追いかけて、匍匐前進で一気に走っていく。
(絶対に逃がさない)
俺の執念が、前に動かす。
海神『エノシガイオス』は、国際的な兵器だ。
非人道的で、危険な兵器を日本に持ち込ませてはいけない。
無論、使わせてもいけない。
その正義感だけが、俺を動かしていた。
エレベーターのドアが閉まっていく。
だけど、俺は体を飛ばして強引に乗り込む。
このエレベーターのドアは、普通のドアよりも分厚い。
だけど、俺は迷わなかった。
そして、飛び込んだ先には一人の女が立っていた。
薬栗 麗良の足元から俺は、はっきり見上げた。
エレベーターは、間もなくして動き出した。
薬栗が、そのままエレベーターを起動して静かにエレベーターが動き出した。
俺はゆっくりと、立ち上がろうとした。
体を起こすと、すでに薬栗は俺から離れていた。
「あなた、どこまでもしつこい」
体を半分起こした俺に対し、薬栗は堂々と立っていた。
背が低い黒髪マッシュルームの薬栗の冷たい目が、浴びせられていた。




