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傷がついていた、植え込み。
それは不自然で、新しかった。
俺はしゃがみながら、きれいに並ぶ植え込みをじっと見ていた。
(意外と軽いな)
土は、ほとんど入っていない。
植え込みされている植物は、軽土で育つ造木だ。
(動かすこともできるが、動いたともいえるか)
俺は、じっと見ていた。
植え込みは、自分で押しても片手で動かせた。
あまり重くもない、いやむしろかなり軽い。
そんな中で、俺は天井を見上げた。
天井は、あまり高くない。
そして、下からも少し隙間が見えた。
二階のフロアの光が、下にも漏れていた。
(あのスペースだと、人が入れる隙間があるな)
大きい人間は難しいけど、小柄な人間ならいけそうだ。
そして、相手はバーコイだ。
ボルシュニクで訓練を受けた、普通ではない女スパイ。
身体能力は、おそらく申し分ない女。
(だとしたら、何らかの方法でここを登って、上に上がった。
そして、上で若杉を殺した)
若杉を殺した理由は、まだわからない。
そんな俺は、あることを思い出した。
(このベンチにいたのは、あの女)
俺は、ずっと考えていた。
だが、ここを上がるにはかなり派手で目立つ。
そもそも、どうやって上がるんだ。
いろいろ疑惑がある中、階段から降りてくる足音がはっきりと聞こえた。
(そろそろ動きが、あるはずだ)
俺は、腕時計を見ていた。
時刻は、22:27を示していた。
足音の方をじっと見上げると、そこには一人の人間が姿を見せていた。




