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(BACOI‘S EYES)
神戸市内の、神戸タワー。
あれから、私はここに来ていた。
今、私は私ではない誰かの格好でここに来ていた。
『本日夜21:55に、取引相手がこの神戸タワーに来る』
私は、このメッセージを見ていた。
見ていた場所は、女子トイレの個室。
このメッセージは、カシチャイからのものだ。
カシチャイは、私の上司。元々教育係で、全てを知る人物。
私は彼にとって、絶対服従だ。
薄暗い女子トイレで、私はスマホをじっと見ていた。
メッセージには続きがあった。
『だが、残念な報告もある。
前日に支部が警察に捕まった。
どうやら、組織の中に裏切り者…ないしは警察が絡んでいる可能性もある』
少し、周囲が穏やかではない。
どうやら、警察も私たちを調べているという噂が流れていた。
『そこで、バーコイよ。取引を絶対に成功させよ。
仮に警察が邪魔をするのならば、殺してしまって構わない。
お前には、試験用の『エノシガイオス』も使ってくれ。
それともう一つ、クライアント側の提案があって…』
私は、メールをずっと読んでいた。
私の服のポケットには海神と言われていた、最強の生物兵器『エノシガイオス』が入っているのだ。
取り出したのは、小さなスプレー。
見た目は、普通の制汗スプレーに見えた。
だけど中身は、全く違う。
(海神は、まだ完全に生成できない。でも今の成分でも人は殺せる)
僅かに空気を吸い込んでしまうと、そのままウィルスが体内に空気感染していく。
数ミリ程度吸い込んだだけで、呼吸困難になり死に至っていく。
(爆弾を仕掛けた病院でも、死者1200人を出した)
病因での死者は、ほとんどが窒息死。
『エノシガイオス』の強力なウィルスで、あっという間に死に至っていく。
人間の細胞を破壊し続け、胡弓を許さず、傷ひとつ残らずに殺してしまう究極の兵器。
(唯一耐えられるのは、抗体のワクチンを打つだけ)
国の医療機関で抗体を打たれた私は、エノシガイオスの効果を受けにくい。
激しい脱力感にさいなまれるも、死んだりはしない。
そのためのワクチンを打って、私は海神を所有してここにいた。
(これを小型化させたものがあれば、銃よりも強力だ)
私は小さなスプレーを、ポケットにしまった。
スマホを閉じた私は、ゆっくりと立ち上がった。
そして、私は個室のドアを開けた。
開けた瞬間に、一人の老婆が姿を見せた。
(見られたか?いやそれはどうでもいい。いいんだ)
老婆は、なぜか個室から出てきた私をじっと見ていた。
その顔は、何かを疑っているかのような顔。
だが、その老婆に私は見覚えがない。
(さて、どうする?)
私はすぐさま、さっきのメッセージを見ていた。
警察は、私たちの支部を発見した。
その中には、裏切り者もいると聞く。
(この老婆は、私の味方か?それとも敵か)
数秒間の沈黙が続いた後、老婆がゆっくり口を開いた。
そして、私はすぐさま行動に移していた。




