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波多野は、これが生物兵器の可能性があるといった。
生物兵器のことは、キナはよくわからない。
だけど、普通の死に方ではない。
外傷もなく刃物で、殺されたわけでもない。
おまけに、ここに入るには厳しいチェック…手荷物検査を受けるのだ。
そんなキナは、ここにいる人間の中で一人だけ知り合いがいた。
しかも、そいつは普通の人間ではない。
そいつも、この展望室にいた。
「窓が開いている。匂いが、飛んでいるのか?」
「そう、ここでイチゴの匂いがしていたんじゃない?
犯人にとって、あの薬品の証拠になりうるのが匂い
「イチゴ爆弾だっけ?」
一時期、ニュースになっていた。
ラビーネ病院の悲劇で、聞かれた『イチゴ爆弾』。
海神『エノシガイオス』という爆弾は、イチゴの匂いがしていた。
匂いがイチゴの匂いがして、そのまま苦しくなって呼吸不全になって死ぬ。
エノシガイオスの成分は、どこかのワイドショーで解説していた。
キャッチ―な言葉と、爆弾というスリリングな言葉は視聴者を引き付けるインパクトがあった。
「確かに、今はイチゴの匂いがしない」
「においを消せる場所として、ここを狙った。
犯人にとって相手は、誰でもよかった」
「ではどうして、彼女は殺されたの?」
だとすると、当然疑惑が生まれた。
伊丹の疑惑に、キナは首を傾げた。
「わからんなぁ」
「彼女は、どうしてここに来たんだ?」
「はい、自販機でジュースを買いに。
この二階にしか、自販機はないし。カフェは、閉まってしまったので」
「それはすいません」
カフェ店員の砂川は、深々と頭を下げた。
でも、伊丹は砂川に恨まずに上原に話していく。
「あたしがいけなかったのよ。彼女を、一人で行かせたから」
「仕方ないです。それで印南さん」
「はい」
「ここに呼び出したことは、理由があるんですよね?」
「ああ、全員のアリバイを調べようと思う。
この五分以内に何をしたのか?どこにいたのかを」
印南は、目の前に出てきて仕切り始めた。
それと同時に、キナに一人の人間が近づいてきた。
「上原さん?」
「そういえば君」
茶色のスーツを着た男性、上原がいきなりうちのそばに近づいてきた。
その顔は、とても険しい顔でうちをみていた。
「俺たちの会話を、盗み聞きしていただろう」
上原が、うちに対して鋭く言い放っていた。




