033
――数分前――
男子トイレで、僕は彼にあった。
神影刑事……今は上原と名乗っていた。
そんな彼と僕の話が、男子トイレで行われていた。
僕と彼の会話を、誰かが覗いていた。
覗いていた人間は。わからない。
それでも、神影は一つの推測をした。
「バーコイの可能性が、あるだろうな。
おそらく彼女たちの通信障害も、一時的に解除された。
そして、おそらく君が取引相手だと知った」
「まさか、僕に接触を?」
「あそこで動かなかったのは、まだ何か決め手がないのかもしれない。
それと、どうして鵤を殺したかもわからない」
バーコイが殺したのだとすれば、ボルシュニクにとって鵤が何かを絡んでいる可能性があるのだ。
「鵤は、英語が読めるし外国でも仕事をしているビジネスマンだ。
英語の経済新聞も、気になっているようだ。
彼女の仕事は貿易だったから、経済情勢が気になるのだろう。
英字新聞の経済新聞を読んでいる僕に、興味を示した」
「どんな人だった?」
「気さくな人ですよ。人当たりは悪くない。
だけど……少し芯の強い悪く言えば頑固な人でした。
それと、あのカフェに絵がかけられているのですけど」
「絵?」
「あの絵は……成沢が描いてカフェに置いた絵だそうです」
その話は、初めて聞いた。
「あのカフェ店員砂川と、成沢は同じ芸実大学の先輩後輩だそうです。
成沢の方が先輩で、砂川は芸術家を引退しています」
「少し、聞き込みしたのか?」
「一応、取引相手を探さないとね。砂川に聞いた」
「それは、俺も少し調べた」
それとなく、俺も砂川から聞いていた。
カフェの中にある絵は、夜景の神戸だ。
ここの展望台から、外を見て書いたのだろう。
その絵は、かなりのクオリティだ。
「それより、君だ」
「やっぱり僕は、どうなります?」
「今、君をここで捕まえるのは簡単だ。
だが、君には少しってもらいたいことがある。
なぜなら、君の本部は君を見捨てた」
「確かに……」イヤホンの応答はない。
繋がっても、逆探知をされたことを警戒してすぐに連絡を切っていた。
「僕は、どうなる?」
「取引って、警察は僕に何をさせるつもりですか?」
「君の命は、俺たち警察が保証する。
その代わり、君は取引相手の情報をつかむこと。
おそらく、すでに向こうは君の情報を得ている。
取引は成功するが、そのあとは処分する可能性もある。
敵であったカシチェイを、やはり信じるのか?」
僕は、神影に試されていた。
僕らの軍と戦い、国に味方した戦争屋。
だけど僕らに対し、生物兵器を渡して協力を要請した戦争屋。
彼は、おそらく金で動く人間だ。
戦争という金を稼ぐツールを使い、大量の金を生み出す。
(僕らは、それに踊らされているのだろうか?)
だけど、その質問を返すにも本部に連絡は繋がらない。
複雑な関係と、異国での出来事が僕を迷わせていた。
「時間はない、ここで結論を出してくれ」
「わかった、一旦は協力をしよう」
僕は、結局最後は自分の身を守るために警察と手を結ぶことにした。




