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海神  作者: 葉月 優奈
三話:イチゴの香り
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(HATANO‘S EYES)

僕の名前は、波多野 蔵人。

だけどそれは、真っ赤な偽物だ。

本当の名前は、ジョンソン・ブリューワ。

そして僕の正体は、反乱軍から送られた人間。


僕らの国は、日本の支援を受けていた。

だからこそ、この場所での取引が行われていた。


(それでも、日本の政府をすべて懐柔するわけにはいかない)

祖国は、僕らを皆殺しにするだろう。


だとすれば、友好国の日本で生き残るしか道は残されていない。

そんな日本の警察が、僕を見破った。

見破った神影刑事、いや上原は近くにはいない。


展望室のラウンジに、僕は歩いていた。

鵤のいるベンチから少し離れて、夜景の見える窓に歩いてきた。

鵤のそばには、柚乃が残って悲しんでいた。


この神戸に僕は、取引相手を探していた。

取引場所として、ボルシュニクはこの場所を指定した。

窓から見える神戸の夜景は、徐々に減っていた。

それでも見える明かりは、とてもきれいだった。


「生物兵器?」波多野の後ろには、伊丹と成沢。

「ここに、生物兵器がある。

『エノシガイオス』という名前は、日本でも知っているだろう」

「多くの人間の命を奪った、生物兵器。匂いはイチゴの香り」

成沢は、難しい顔を見せていた。

国際的にも有名な兵器の名前を、僕は身近に知っていた。


「でも、俺はそんなものを持ってない」

「だが、持っている人間がいる。それは誰なのか?」

「本当に持っている奴がいるのか?」

「いるんだよ」

「でも、そいつが殺したのか?」

「それはあるかもね」

そこに一人の女が、乱入してきた。

緑ツインテールの、やかましい黄色シャツの女。


「ねえねえ、やっぱりあんたはかわっとん?」

そこに出てきたのが、動画配信者のキナ。

変わり者の少女は、僕をじーっと見ていた。


「君は、なんですか?」

「うちは、おもろいこと大好きやねん。

お兄さん、もしかして芸人だったりするん?」

「そんな筈、ないだろう」僕は速攻で否定した。


「ねえ、それより鵤 うねがトイレに行く前に……あなたは何か会話をして居らへん?

たしか、そこのカフェにいたやろ」

「それは、ただの世間話だ」

「本当に?」キナは、思わぬことを指摘していた。


「というか、顔見知りなん?」

「顔見知りではない。カフェで知り合っただけだ。

どうやら僕が読んでいる新聞に、興味があったのだろう」

「新聞?」

「経済新聞、あそこのカフェにある」

「へー、新聞ね」

「でも、日本語では書いていない。僕が読んでいたのは英語新聞。

しかも、経済新聞だよ」

「うーん、確かにあったわね」

砂川は、僕の質問に合わせて新聞を持ってきた。

それは確かに、英語の新聞。

英語の知識がないと、全く読むことができない。


「なんで、経済新聞を?」

「広告代理店としては、世界情勢は重要だろう」

「そうやね。でも、あの鵤さんは」

「うね婆ちゃんも、実は英語が読めるの。

海外で、仕事をしていたこともあったし」

「さすがは大企業の創設者」

柚乃の言葉に、キナはふんふんと頷いていた。


「だけどそれより、伊丹さん」

「なんですか?」

「あなたの親友は、どうしているんですか?」

「下のフロアで、ジュースを買いに行かせているわよ」

「一人ですか?」

「うん」伊丹の言葉に、僕は難しい顔を見せていた、


「その子は、どこにいますか?」

「だから下のフロアだって?薬栗さんも一緒に居ははずですけど」

「あまり一人になるのはまずい」

僕は険しい顔で、周囲を見回していた。



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