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――5日前――
(BACOI‘S EYES)
私が乗っているのは、日本向けの船だ。
乗っている船は、決して豪華な船ではない。だが小さな船でもない。
ボルシュニクが所有する船の客室に、私は乗っていた。
船の客室で、私はパソコンと向き合っていた。
私が解析しているのは、カシチェイからもらったUSB。
この中のプロテクトは、かなり厳重だ。
それでも私たちは、ボルシュニク。
ハッカー専門の人が、USBのパスワードを突破してくれた。
狭い船室で、私はUSBの中を調べていた。
この中に書かれているのは、難しい言葉だ。
医学用語や、化学の話。
何よりこれは、生物兵器『エノシガイオス』の生成方法が書かれているのだ。
これを作っているのは、国の組織。
カシチャイは、国の方にも顔が利く。
そもそも私たちの組織は、戦争屋だ。
カシチャイはもとより、様々なコネが国にあった。
そして、エノシガイオスを設置する国の重要任務の仕事を取ってきた。
ボルシュニクの下部組織、軍事教育機関で育った私たちが実行するのだ。
成功報酬で、ボルシュニクが潤う。それが私の役目だ。
(でも、この成分を爆弾クラスで生成するには難しい)
海神『エノシガイオス』は、普通の成分ではない。
しかも、生成には莫大な金と技術が必要だ。
高額な施設であり、大規模な設備で、実験したのがうかがえる。
つまりは、僅かな莫大の金がかかっていた。
一企業でも、これらの規模の実験は不可能。
資金力の豊富な国の財政ぐらいでしか、生成もできない。
(それでも、取引相手は相応の設備を持っているのだろうか)
そんな私の部屋を、ノックする音が聞こえた。
一回のノック、だけどそれでは私はドアを開けない。
二回目のノックはトントントンと、三回たたく音が聞こえた。
(間違いない)私はドアを開けると、カシチェイが姿を見せた。
ここにいるカシチャイは、白いスーツを着ていた。
金髪の白い肌の男性は、本来の彼だ。
ネゴシエーターとしても優秀な彼は、いくつもの顔を使い分けていた。
「カシチェイ様」座ったまま、敬礼する私。
「どうだ、研究は進んでいるか?」
「確かに規模は、とても大きいものですね」
「残念ながら、これを研究する装置はわしのところにはない」
「どこなのです?それは?」
「反乱軍」
カシチェイは、はっきりと言い放った。
それは私たちがずっと戦ってきた、敵という存在だった。
「どういうことですか?」
「彼らは、他国とのつながりがある。
この技術はたった一か所、調合できる研究所がある。
そのために、わしは反乱軍と手を組むことにした」
「正気ですか?」私は、単純に驚いていた。
私たちが戦っていた敵に、生物兵器の情報を渡す。
「『エノシガイオス』の生成は、国内機密。
だからこそ、この生成は国内ではできない。
だが、反乱軍を支援している国がある。それが日本だ」
「日本、ですか?」
「ああ、研究所は日本。だから、この兵器を日本に持ち込むことが必要だ。
そこで、取引を行う。バーコイ、日本語の勉強はできているのか?」
「はい、日本語の勉強はしています」
私は、もともと日本語の勉強をしていた。
それは、これから日本で暮らす自分にとっても必要なものになるのだ。
「そうか。だが、最初の任務を成功させないと君には日本での自由は約束されない。
君は、無事に取引を成功させるんだ。
そう、この名前を使って」
間もなくして、カシチェイの隣には一人の医者が姿を見せていた。
整形外科の男性医師は、白いマスクをして私に近づいてきた。
「大丈夫です、外見は責任をもって日本人に近づけますから」
整形外科の男性は、私に対して丁寧に頭を下げていた。




