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(WAKAZSUGI‘S EYES)
私は、この神戸タワーに二人で来ていた。
先輩の伊丹は、二個上の先輩。
私のミスも正してくれる、いい先輩だ。
そんな先輩伊丹は、ベンチの方に来ていた。
伊丹に導かれるように、私も来ていた。
ベンチには、いろんな人間が集まっていた。
ベンチには、死体もあった。
女子トイレにあった死体が運ばれて、私も伊丹先輩も驚いていた。
「急死だそうです」
「心臓発作ですか」
私と伊丹は、警備員の印南から話を受けていた。
それが殺人事件か、それとも単なる病死かまだ分からない。
それと異国の生物兵器『エノシガイオス』が絡んでいると、物騒な噂もあった。
「だとしても、それは危険ですね」
「そうだね、こわいね」
一般人の反応は、それしかなかった。
だけど、エレベーターが今は停止していた。
もしこれが殺人の場合は、犯人はまだこの展望台にいることになる。
「犯人がいるのは、どうやら本当ですかね?」
「いるんでしょ、ほら」
伊丹がスマホで私に、ある画面を見せてきた。
それは神戸タワーにある、エレベーター封鎖のニュースだ。
「そういえば、インターネット繋がるんですか?」
「さっきまで一時通信障害があったけど、なんか今つながるわね」
リアルなネットニュースが、見えるようになっていた。
私もつないでみるけど、アンテナがあまり立たない。
回線がとにかく重くて、ページを開けなかった。
「うーん、ダメだね」
「そっか、ああー。またエラーが出た」
やはり展望タワーの通信は、安定しない。
このタワーには、電波塔ではないのだろうか。
「どうしてもつながらないと不安になるよね」
「ねー、困るよね」
殺人犯がこの展望室にいるより、通信障害の方が私たちは嫌だった。
「ねえ、あなたは繋がるの?」
そんな私は、一人ぼっちでたたずむ小さな女に声をかけた。
マッシュルームカットの女性、薬栗だ。
彼女は、ベンチでスマホを見ながら何かを書いていた。
「はい?」
「ネットやって、え?」
マッシュルームカットの少女のスマホの画面には、たくさんの英文が見えた。
「これって」
「プログラム言語です」
薬栗は淡々と、ベンチのそばでプログラムを書いていた。




