022
(JONSON‘S EYES)
展望台に閉じ込めたのは、日本の警察の仕業だとすぐにわかった。
だが、それでもこの取引をやめることはできない。
母国に帰る前に、どうしても手に入れないといけない。
『エノシガイオス』その効果は、どうしても手に入れないといけない。
(ボルシュニクのスパイ工作は、上手くいっているようだ)
電波妨害も徐々に、解除されて通信ができるようになった。
取引相手は、バーコイだ。
彼女の姿も、ようやくこちらから視認することができるようになった。
(だが、問題もある)
エレベーターを停止させた、日本の警察だ。
刑事の情報は、神影という。男性の刑事らしい。
でも、登場人物の中に神影という名字の人間はいない。
(唯一わからなかったのが、このキナという人物)
いやいや、ここにいるツインテールのキナは間違いなく女だ。
おそらく刑事は変装しているけど、女のような姿になることは困難だろう。
(なんにせよ、今は取引相手を探す必要がある。
どうやって接触するか。向こうに、刑事を任せるか)
今の自分には、武器は何も持っていない。
ここのエレベーターに乗る前に、手荷物検査が行われていた。
当然刃物の持ち込みは、できない仕組みがあった。
(向こうはさすがに、武器を持っている。
自分たちを探す刑事はわからないけど、男どもの動きを警戒するとするか)
そう思いながら展望台を見ていると、右耳から微かに声が聞こえた。
イヤホンだ。偽装されていてよく近づかないと、イヤホンだと気づかれない。
高性能イヤホンから聞こえた声で、自分はリアクションをした。
「すいません」手を挙げた。
「なんだ?」反応した人物がいる。警備員の印南だ。
「ちょっとトイレに行きたいのですが」
「ああ、いいよ」
「それなら、俺も」
だけど、そこで一緒に追従してくる人物がいた。
手を挙げたのは、茶色のスーツを着た男性上原だった。
「波多野さん。一緒に、行きましょう。
もしもここに展望室の中に犯人がいるのだとすれば、一人で行動するのは危ないですし」
「本当にいるんですか?犯人」
「いないといいですけど、念のためですよ」
「まあ、そういうことですね」
印南も、ここは彼に味方をしていた。
「そうですね、わかりました」
上原の申し出を、素直に受け取ることにした。
上原という男に、疑惑の目を向けながら。




