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海神  作者: 葉月 優奈
二話:回収人
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イチゴの匂い、ショートケーキの上のイチゴ。

甘酸っぱくてクリームの少しついた、におい。

イチゴは、切ると断面から甘酸っぱい匂いがしていた。

その匂いが、なぜか女子トイレでかすかに広まっていた。


「あの、さっき女子トイレで感じませんでしたか?」

「いや、だけどその匂いって…ニュースで見たんですけど」

茶色のスーツの男性が、スマホを操作していた。

間もなくして、私に対してあるニュース画面を見せていた。


「『イチゴ爆弾、エノシガイオス』これって」

「そう、エノシガイオスという未知の成分。

その匂いは、使用後から数秒間甘い匂いが広がってやがて死に至らしめる。

まさに悪魔のような生物兵器。

傷一つつけずに、人を殺す兵器」

「それって?」

「ニュースとは別に、国際的に非難された爆弾の話。

遠くの国で、ラビーネ病院を襲った生物兵器の話」

「その話は、僕も知っている」

「自分も」

印南と波多野も、同意した。

というより、世界的にニュースになって日本でも何度も放送されていた。

戦場からの中継も、ここ最近よくテレビを賑わしていた。


テレビ、ネット様々な媒体でこのニュースは放映されて知らない人はいない。

だがその爆弾は、イチゴの匂いがするというニュースは結構マニアックだ。


「ネット記事にはなっているけど、そんな兵器が遠く離れた日本にあるの?」

「あるらしい」印南が、はっきり肯定した。

なぜ、印南はここまで断定することができるのだろうか。

何か、彼の中に根拠があるのだろうか。


「問題は、その『エノシガイオス』があるのならこのタワーのどこかに爆弾があるということ?」

爆弾そのものは、殺傷能力はない。

だけど、そのガスをわずかでも吸っただけで死んでしまう。

ラビーネ病院では1200人が、亡くなったと報道された。

戦争とはいえ、それはあまりにも非人道的だと国際的に非難された。


「落ち着いてください。まだ、爆弾があると決まっておりません」

「確かに、ここは日本です」

印南の結論に、波多野も同意していた。


「だけど、あの匂いは絶対に変よ」

「トイレでイチゴの匂い、確かに変ですね」

私に同意したのは、上原さん。

そんな四人の会話を、鵤と関係性の強い男女のカップルが難しい顔を見せていた。

なにより、殺人になれば彼らは最優先の容疑がかかる。


「実際に鵤さんが、急死するような人ではないのですよね?」

「それは、ないと思う。でも俺たちは」

「いや、わからない。柚乃は何も」

ギャル風の少女は、悩んでいた。

柚乃も、どうやらぼさぼさ頭の男性である成沢を疑い始めていた。


「いいや、俺はやっていない。爆弾も何も知らない」

「嘘つかないでよ、天満が殺したんじゃないの?」

柚乃の疑惑は、全く晴れない。


「ねえ、なんか面白い話をしているんじゃない?」

そんな中で、一人の少女がカフェから近づいてきた。

ツインテールの少女が、危機感というよりわくわくした高揚感でこちらの話を聞いていた。



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