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海神  作者: 葉月 優奈
プロローグ
2/56

002

カシチェイとは、私をスパイとして訓練している上官だ。

帝国銀人として所属していて、若い女性のスパイを操っていた。

老け顔で髭もじゃの男性は、本来ここにいるべき人間ではない。


なぜならば、彼は私の組織の司令官なのだから。

私の師匠であり、戦争の天才でもあるカシチェイ。

別名『戦争の魔術師』、彼はそう呼ばれるほどだ。


「なんで、カシチェイ様が?」

「嫌な予感がしてな、直接乗り込んだ。

それに、あの爆弾『エノシガイオス』の効果を間近で見たいんだ」

「国が長年にわたって研究した、最高兵器ですからね」

「その兵器を、僕らに頼んだ。戦争屋である僕らに」

走りながら、地上まで進んでいく。

だけどカシチャイも、物音ひとつ立てない。

さすがの隠密行動の腕を、堂々と見せるカシチェイ。

彼と一緒に行動出来て、私はそれだけで勉強になった。


「バーコイ、この任務が終わったらどうする?」

「どういう意味ですか?」

「君は、この後国に帰るつもりか?」

「はい、任務が終われば私は戻るつもりです」

「例えば若い君にもう一つの選択肢が、あるとしたら?」

今まで見たこともない穏やかな笑顔で、カシチェイは私に不思議なことを言ってきた。


「何を言っているのですか?私たちの自由はない。

あるとしたら、国と共に生きる運命。

国のために生きる、それだけしかない。

あの国に生まれたからには、それが正しい」

「だが、君はボルシュニクで研究者や医師として入ったのだろう」

そうだ、私はこの任務ではスパイとして教育されていた。


ボルシュニクという組織がある。

私の国の戦争を、代理に行う傭兵軍団だ。

戦場で戦う兵士はもちろん、スパイを育成するチョウルイベギマが各地に存在した。

私もチョウルイベギマに育成されて、ボルシュニクの一員として活動していた。

そのボルシュニクの主要幹部が、カシチェイ。


だけど組織に入った理由は、もともと研究者として入っていた。

医術の知識があることで、私はラビーネ病院の潜伏を任された。


そして、私はここに生物兵器の爆弾を仕掛けた。

設置された爆弾は、こうして移動している間も確実にカウントを刻むだろう。

それがゼロになったら、国が長年開発した生物兵器『エノシガイオス』が発動するのだ。

そのためだけに、私はここにスパイとして来ていた。


「ここに、秘密基地があれば…反乱軍の戦意は一気に下がるだろう。

これにより戦争の終息に、つながるかもしれない」

「確かに、戦争は終わるかもしれません」

「だが、君は他国での研究に興味はないかい?」

「え」私は今まで考えたこともないことが、カシチェイの口から出てきた。

私は少し驚きもあって、カシチェイをじっと見ていた。


「日本の研究機関、そこに私の知り合いがいて……君を紹介しようと思ったんだ。

バーコイよ、君は若くて頭もいい。

医学にもかなり精通しているし、英語も話せる。

それに君は、研究職がもともと希望だったよね?」

「したいですけど、わが国では制限された研究しかできません」

「実はね、研究してほしいものがあるんだよ。

国が秘密裏に研究した今回の爆弾で最強の生物兵器『エノシガイオス』。

だが、その研究課程も製造過程も完全なシークレットだ。

この最凶最悪の生物兵器を、君は研究したくないかね?」

「確かに、興味はあります。研究したいです」

私は、カシチェイの言葉に即決した。

その言葉を聞いて、老人医師のカシチャイは頷いた。


「よし、では僕に協力してくれないか?

ここあるUSBは、国の役人から、賄賂で買い取った『エノシガイオス』の成分が記されている。

その解析を、君に託そうと思う」

「いいのですか?」

「受け取ってくれ」

真剣な顔のカシチェイから、私はUSBを受け取っていた。


「この中身は?」

「君にはこれを解析して、生成できるようにしてほしいんだよ。

ぜひとも、この研究をお願いできるかい?」

カシチェイは、私に淡々と伝えてきた。


「わかりました」

私が返事をすると、間もなく外に出た。

病院の外は、とても薄暗い。


それと同時に、病院の地下にある爆弾のタイマーが00:00:00になって起爆していた。

これがのちに語られる、『ラビーネ病院の悲劇』として国際社会に駆け巡る。

そんな大きな事件になることを、一か月前の私はまだ知らなかった。


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